宅建業者は13万3,727社、12年連続で増加

国土交通省の「令和7年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果」(2026年10月2日公表)によると、2026年3月末の宅地建物取引業者は13万3,727業者でした。前の年度より1,436業者増え、12年連続の増加です。

このうち都道府県知事の免許を持つ業者が13万489業者を占めます。宅地建物取引士の総登録者数は124万3,738人で、2025年度の新規登録は3万4,714人でした。業者が増えるほど、同じ地域でお客様を奪い合う場面は増えていきます。

監督の目も厳しくなっています。同じ調査で、監督処分は163件と前年度から16件増えました。文書による行政指導は768件で、前年度より29.7%増です。広告や書類を速く作れても、間違いが増えては逆効果です。AIは、速さと確認をセットで使う必要があります。

国は重説の補助ツールをどう見ているか

国土交通省は2026年3月31日、業界団体へ「重要事項説明に関する業務におけるデジタル・AI等の技術を用いた補助ツールの取扱いについて」を通知しました。買主や借主の利益が守られることを前提に、補助ツールで宅建士の負担軽減が期待されるという内容です。

ただし、責任の置き場所は変わっていません。通知は、重要事項説明について「宅地建物取引士がその責任において行うことが求められている」と明記しています。AIが書類を下書きしても、確認して説明するのは宅建士です。

国は効果の検証も進めています。「不動産分野におけるAI活用に関する実証事業」の協力依頼によると、対象は重要事項説明書や賃貸借契約書などの作成業務で、採択予定は約100社、期間は2026年9月末までの予定でした。「不動産分野におけるDXの推進」のページでは、業務ごとのサービス例も公開されています。

AIが効く不動産会社の3場面

不動産会社でAIが効く3つの場面。1.物件紹介文(確認済みの情報から文案を作る)。2.追客メール(問い合わせへの返信を下書き)。3.書類の下書き(重説の説明を読みやすく)。
図1|不動産会社でAIが効く3つの場面

1つ目は物件紹介文です。確認済みの物件情報を渡し、「子育て世帯向け」「単身者向け」のように読み手を変えた文案を作らせます。ポータルサイト、自社サイト、SNSで長さを変えるのも得意です。

2つ目は問い合わせ後の追客メールです。お礼、内見の日程調整、見送りになった方への連絡は、毎回似た内容になります。型をAIで作っておけば、夜に回していた返信を案内の合間に終えられます。返信の基本は問い合わせ対応の記事にまとめています。

3つ目は書類の下書きと説明の準備です。お客様に分かりにくい用語を、やさしい言葉に言い換えさせます。契約書を読むときの注意は契約書チェックの記事が参考になります。

業務ごとの任せ方を表で比べる

同じ文章の仕事でも、間違えたときの重さは業務ごとに違います。不動産会社の主な業務を表にまとめました。

表1|不動産会社の業務ごとの、AIに任せる部分と人が確かめる点
業務AIに任せる部分人が確かめる点
物件紹介文読み手別の文案づくり面積・賃料・徒歩分数・設備
追客メールお礼と日程調整の下書き空室状況と取引の可否
重要事項説明書用語の言い換え、抜けの指摘法令制限など記載内容の全部
賃料・価格の説明説明文の組み立て査定額と根拠にする事例
広告画像明るさ調整など軽い補正の案実物との違い、CGの明示

右の列は、間違えると処分やトラブルにつながる情報です。AIは現地も登記も見ていません。ネットの情報や推測で、もっともらしく数字を埋めることがあります。右の列だけは、資料と現地で人が確かめる決まりにしてください。

不動産広告には、業界の自主ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約」があります。たとえば施行規則は、徒歩の所要時間を道路距離80メートルにつき1分で計算し、端数は切り上げると定めています。AIが「駅近」と書いても、根拠の数字は別に確かめる必要があります。

違反の実例もあります。首都圏不動産公正取引協議会の2026年9月度の措置では、賃貸8物件の広告に違約金が課されました。「徒歩3分」の物件は実際には450メートル、徒歩6分でした。契約済みの物件を3か月以上載せ続けた例も含まれます。

規約は、注意を受けても直さない事業者に500万円以下の違約金を課せるとしています。AIは物件の空き状況を知りません。掲載前の確認に加えて、成約したらすぐ広告を下ろす担当を決めましょう。

AIで作った画像や加工写真の注意点

協議会が公開する規約本文に「AI」「人工知能」という言葉は見当たりません。ただし、写真やコンピュータグラフィックスのルールは、作り方を問わず関係すると考えるのが安全です。施行規則は、写真は取引する物件を表示し、CGや完成予想図はその旨を明示して使うと定めています。

注記があれば何でも許されるわけではありません。協議会の「不当表示の禁止」の相談事例は、写真から電柱や電線を消した案について「不当表示を免れることはできません」と明記しています。AIで電線や隣の建物を消す加工は、同じ問題になり得ます。

AIで家具を置いた写真は、掲載前に確かめる

空室に家具を置く加工は、加工の明示に加えて、部屋の広さや設備が違って見えないかを確かめます。判断に迷ったら、掲載前に地域の不動産公正取引協議会へ相談してください。ポータルサイト独自の決まりも確認が要ります。

AIに任せない線

AIに任せてよい仕事と人が決めること。AIに任せてよいのは紹介文の言い回し、追客メールの下書き、用語の言い換え、説明の話す順番。人が決めるのは面積・賃料・徒歩分数、空室と取引の可否、法令制限の記載、重要事項の説明。
図2|AIに任せてよい仕事と、人が決めること

線引きの基準は1本です。言い回しはAIに下書きさせ、物件の事実と説明は人が責任を持つ。面積、賃料、法令制限、取引の可否は後者です。重要事項説明書への記名と説明も、宅建士の仕事のままです。

もう1つの決まりは、お客様の情報をそのまま入れないことです。氏名、住所、年収、勤務先、家族構成は、仮の名前や「30代・2人世帯」のような形に置き換えます。個人情報保護委員会も「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表しています。入れてはいけない情報はAIに入力してはいけない情報一覧で確認できます。

始めるための4歩

不動産会社でAIを始める4歩。1.紹介文を1物件で試す(確認済みの情報だけ渡す)。2.追客メールの型を作る(お礼・日程・見送りの3通)。3.確認表を決める(数字と空室を人が見る)。4.書類の下書きへ広げる(宅建士が全文を確認)。
図3|不動産会社でAIを始めるための4歩

手順1は、確認済みの物件を1つ選び、紹介文を作らせることです。次の文をそのまま使えます。

あなたは不動産会社の広告担当者です。次の情報だけを使い、物件紹介文を200字で書いてください。 読み手:[例:駅まで歩いて通勤する単身者] 確認済みの情報:[面積・賃料・徒歩分数・築年・設備を貼る] 条件1:書かれていない事実を足さない。不明な点は「[要確認]」と書く。 条件2:「最高」「日本一」「格安」のように根拠のいる言葉を使わない。 条件3:お客様の個人情報は書かない。一文は40字以内にする。

手順2で、お礼、日程調整、見送りの3通を型にします。手順3で、掲載前に数字と空室状況を見る人を決めます。小さな会社なら、書いた人と別の人が見るのが理想です。手順4で書類の下書きへ広げ、宅建士が元の資料と全文を突き合わせます。

よくある質問(Q&A)

重要事項説明書をAIに作ってもらっても法律的に大丈夫?

下書きの補助に使うことは、国も負担軽減につながると見ています。ただし、内容の確認と説明の責任は宅建士にあります。AIの文章をそのまま渡さず、資料と全文を突き合わせてください。

AIで家具を置いた部屋の写真って広告に使っていいの?

加工したことを明示し、広さや設備が実物より良く見えないことが最低条件です。迷う場合は掲載前に地域の不動産公正取引協議会へ相談してください。電線や周囲の建物を消す加工は避けましょう。

社員3人の小さな不動産屋でもAIって役に立つ?

役に立ちます。まずは無料版や月数千円程度の有料プランで、物件紹介文と追客メールから試してください。確認済みの情報だけを渡す決まりにすれば、専任の担当者がいなくても始められます。

まとめ

  • 宅建業者は13万3,727業者で12年連続の増加。行政指導は768件に増えた。
  • 国は2026年3月の通知で補助ツールの活用に期待を示した。責任は宅建士のまま。
  • AIに任せるのは紹介文・追客メール・用語説明の下書き。物件の事実と重要事項の説明は人が担う。
  • 画像の加工と徒歩分数は表示規約を確認し、成約した物件はすぐ広告から下ろす。

今週掲載する物件を1つ選び、確認済みの情報だけで紹介文を作らせてみてください。できた文の数字を資料と見比べる。その10分が、安全に使う習慣の第一歩です。

無料資料:AI業務改善チェックリスト

AIの使いどころと、人が確認すべき場面を整理しましょう。

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。