はじめに:白紙の提案書から解放される

提案書づくりで、いちばんつらいのは「白紙から書き始める瞬間」です。何をどの順番で書くか、構成を考えるだけで時間が過ぎてしまう——そんな経験は誰にでもあるはずです。

こここそ、AIの得意分野。課題や提案の要点を渡すだけで、提案書の構成と文章のたたき台を作ってくれます。文章が苦手な人でも、土台があれば手直しから始められるので、ぐっと取りかかりやすくなります。前回の商談前リサーチで相手の課題をつかんだら、その流れでそのまま提案書づくりに進めます。リサーチで整理した課題を、提案書の出発点にできるのです。人は、ゼロから書く負担から解放され、中身を磨くことに集中できます。

伝わる提案書の基本構成

よい提案書には、図1のような基本構成があります。この型に沿うだけで、ぐっと伝わりやすくなります。

伝わる提案書の基本構成。1.相手の課題(何に困っているか)、2.解決策(それをどう解決するか)、3.得られる効果(導入後に何がよくなるか)、4.費用・スケジュール(いくら・いつ・どう進めるか)、5.次のステップ(相手にしてほしい行動)。相手の課題から始めるのがコツ。
図1|伝わる提案書の基本構成 ── 相手の課題から始める

いちばん大切なのは、「相手の課題」から始めること。多くの提案書は、自社やサービスの説明から入ってしまいます。でも、相手が知りたいのは「自分の課題が、どう解決されるか」。課題 → 解決策 → 効果の順に並べるだけで、自分ごととして読んでもらえます。AIにも「相手の課題から始める構成で」と伝えましょう。

この5つの構成には、それぞれ役割があります。「課題」で相手の関心を引き、「解決策」でこちらの提案を示し、「効果」で導入後の姿を見せ、「費用・スケジュール」で現実味を持たせ、「次のステップ」で行動を促す——読み手の気持ちが、自然に「やってみよう」へ動く流れになっています。AIにたたき台を作らせると、この流れが整った状態でできあがるので、構成で悩む時間がまるごと省けます。あとは各項目の中身を、人が具体的にしていくだけです。

たたき台を作る3ステップ

手順は、図2の3ステップです。

提案書のたたき台を作る3ステップ。1.材料を渡す(課題・提案・効果のメモ)、2.AIで構成案(提案書の骨組みに整理してもらう)、3.人が肉付け(数字・強み・事実を確認)。
図2|たたき台を作る3ステップ ── 材料 → 構成案 → 人が肉付け

ポイントは、1番目の「材料を渡す」。完璧な文章でなくて構いません。「相手の課題はこれ」「うちの提案はこれ」「効果はこれくらい」という箇条書きのメモで十分です。それをAIが構成案に整え、3番目で人が数字や自社の強みを肉付けします。骨組みはAI、中身は人という分担です。

材料が少ないと感じたら、いきなり提案書にせず、まずAIに「この提案で盛り込むべき項目を相談する」ところから始めてもかまいません。構成だけ先に固めてから、中身を埋めていくと、迷いが減ります。逆に、すでに頭の中に言いたいことがそろっているなら、箇条書きで一気に渡して、構成と文章を同時に作ってもらうのが速いです。自分の準備状況に合わせて、AIへの頼み方を変えるとよいでしょう。

AIに任せること・人がやること

提案書づくりでの分担を、図3にまとめました。

AIに任せることと人がやること。AIに任せる:構成案づくり、文章化・たたき台、表現を整える、長い情報の要約。人がやる:数字・実績の確定、自社の強みの選定、価格・条件の判断、最終確認と責任。
図3|AIに任せること/人がやること ── 骨組みはAI、判断は人

とくに右側の「数字・実績の確定」と「価格・条件の判断」は、絶対に人がやります。提案書の数字や価格をAIに作らせると、根拠のない数値が入り込みます。それを提出すれば、信頼を失うだけでなく、トラブルにもなりかねません。数字と価格は、人が責任を持って入れると覚えてください。

コピペで使えるプロンプト集

そのまま使えるプロンプトです。相手の機密情報は入れず、数字や価格は後から人が記入します。

① 提案書のたたき台を作る

あなたは提案書作成の編集者です。次の材料をもとに、提案書のたたき台を作ってください。 構成:(1)相手の課題 (2)解決策 (3)得られる効果 (4)費用・スケジュール (5)次のステップ。 数字や価格は私が後で入れるので「要記入」とする。誇張表現は避ける。 材料:[相手の課題/提案内容/想定する効果]

② 構成だけ先に相談する

次のテーマで提案書を作ります。盛り込むべき項目と、説得力が出る並び順を提案してください。 各項目に、何を書けばよいかの一言メモも付けてください。 テーマ:[提案の概要]

③ できた文章を分かりやすく整える

次の提案書の文章を、専門用語を減らし、相手に分かりやすい表現に整えてください。 意味は変えず、要点が伝わるように。1文を短くする。 文章:[自分が書いた下書きを貼る]

説得力を高める仕上げ

たたき台ができたら、人の手で「説得力」を加えます。AIの文章は整っていても、どこか無個性になりがち。そこに、自社ならではの要素を足します。

  • 具体例・実績:「同業のB社で〇〇の成果」など、信頼できる事例を加える。
  • 自社の強み:競合と違う、自社だけの価値を一言で示す。
  • 相手に合わせた一言:相手の状況に触れ、「自分たちのための提案だ」と感じてもらう。

これらは、AIには書けない部分です。たたき台で時間を節約した分、この「仕上げ」にこそ力を注ぎましょう。

とくに効くのが、「なぜ、ほかでもなく自社なのか」を一言で示すことです。同じような提案は、競合からも出ているかもしれません。そこで差がつくのは、価格や機能だけでなく「この会社に任せたい」と思える理由です。実績、対応の速さ、地域への理解——自社の本当の強みを、人が言葉にして加える。ここはAIに任せず、自分たちで考え抜く価値のある部分です。たたき台がある分、この一点にじっくり向き合えます。

数字と効果の扱いに注意

提案書で、もっとも注意すべきは「数字」と「効果」です。

効果の誇張は厳禁

AIに頼むと、つい「大幅に改善」「劇的なコスト削減」といった誇張表現が混じります。効果は、根拠とともに、控えめなくらいで示すのが信頼につながります。「最大で」「条件により」などの前提も、正直に書きましょう(参考:確認手順)。

また、提案書に載せる数字(価格、納期、実績など)は、必ず出どころのある正しい値を人が入れます。AIが出した数字を、確認せずに使ってはいけません。とくに提案書は、後々まで残り、契約の前提にもなる文書です。一度提出した数字や条件は、簡単には取り消せません。だからこそ、ここだけは時間をかけてでも、人が一つずつ確認します。AIで生まれた時間を、この確認に回すと考えれば、ちょうどよいバランスです。

チェックリスト

  • 相手の課題から始める構成にした
  • 材料(課題・提案・効果)をAIに渡した
  • 数字・価格を人が確定した
  • 自社の強みを具体的に加えた
  • 効果を誇張せず根拠を示した
  • 提出前に、価格・納期・条件をもう一度確認した

よくある質問(Q&A)

AIだけで完成させてもいい?

いいえ。たたき台までがAI、仕上げは人です。数字・価格・自社の強み・最終確認は、必ず人が行ってください。

スライド(パワポ)の提案書にも使える?

使えます。「各スライドの見出しと要点を箇条書きで」と頼めば、スライド構成のたたき台になります。あとは清書とデザインを人が行います。

毎回似た提案書になってしまう。

相手の課題を具体的に渡せば、内容は変わります。「この相手ならではの一言」を人が加えることで、オリジナリティが出ます。

過去の提案書を再利用したい。

うまくいった提案書を「型」として保存し、AIに「この構成を参考に、新しい相手向けに作り直して」と頼むと効率的です。自社の勝ちパターンを、AIで横展開できます。

まとめ

  • 提案書は相手の課題から始める構成にする。
  • たたき台はAI、数字・強み・判断は人が担う。
  • 効果は誇張せず、根拠と自社の言葉で仕上げる。

提案書づくりでAIを使う一番の価値は、「考える時間」を取り戻せること。構成と文章の手間を減らし、相手に響く提案を練ることに集中しましょう。まずは次の提案書から、材料を箇条書きにしてAIに渡してみてください。一度型ができれば、次回からはさらに速く、質の高い提案書が作れるようになります。

無料資料:AI業務改善チェックリスト

提案・企画まわりで「AIに任せる/人がやる」線引きを整理しましょう。

筆者コメント

提案書づくりは、多くの人が「構成で悩み、書き出しで止まる」業務です。AIにたたき台を任せると、この最初の壁がなくなります。すると不思議なもので、「直す」作業は、ゼロから書くよりずっと気楽。手が動き出し、結果的に質の高い提案書が、短い時間で仕上がります。

ただし、忘れてはいけないのは、提案書の「価値」は、AIが作る構成ではなく、人が入れる中身にあるということ。数字の裏付け、自社の強み、相手への理解——ここに、勝てる提案書かどうかが懸かっています。AIで土台を作り、人が勝負どころに集中する。この使い分けが、成果を生みます。次回は「求人票・募集要項をAIで魅力的に書き直す方法」をお届けします。

── AutoAIPlatform編集部

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。