はじめに:Excelの「困った」を相談できる

Excelは便利ですが、「やりたいことはあるのに、やり方が分からない」場面の多いソフトです。関数の名前も、操作の手順も、覚えることが山ほどあります。これまでは、詳しい人に聞くか、ネットで検索するしかありませんでした。検索しても、自分のやりたいことにぴったりの答えが見つからず、時間だけが過ぎることもよくあります。

AIなら、「〇〇したいんだけど、どうすればいい?」と日本語で聞くだけ。最適な関数や手順を、初心者にも分かるように教えてくれます。業務別レッスンの最終回は、この「Excelの困ったを相談する」使い方です。ただし、大事な注意点があるので、そこを最初に押さえます。

AIは「計算機」ではなく「先生」

いちばん大事な注意点。それは、AIに数値を貼って、計算そのものをさせてはいけないことです。「この数字を合計して」とAIに頼むと、もっともらしい答えが返ってきますが、AIは正確な計算が苦手で、数を間違えることがあります。

では、どう使うか。AIに頼むのは、「どの関数を使えばいいか」「どう操作すればいいか」という、やり方です。やり方を教わったら、計算はExcelで実行します。つまり、AIは答えを出す「計算機」ではなく、やり方を教えてくれる「先生」。この役割を間違えないことが、安全に使う第一歩です。

なぜAIは計算が苦手なのか、簡単に説明します。AIは「もっともらしい文章」を作るのが得意な仕組みで、電卓のように厳密な計算をしているわけではありません。そのため、桁の多い数字や大量のデータでは、平気で間違えます。一方、Excelの関数は、計算のために作られた正確な道具です。だから、計算はExcelに任せ、AIには「どの道具をどう使うか」を教わる。それぞれの得意を組み合わせるのが、いちばん賢い使い方です。

AIに頼める3つのこと

具体的に、AIには図1の3つのことを頼めます。

Excelで AIに頼める3つのこと。1.関数・数式を教わる(合計を出す関数は?)、2.整形の手順を相談(重複を消すには?)、3.集計・分析を相談(どう集計すればいい?)。計算そのものよりやり方を教わるのがコツ。
図1|AIに頼める「3つのこと」 ── やり方を教わる

たとえば「商品ごとの売上を合計したい」なら、「商品ごとに金額を合計する関数を教えて」と聞きます。すると「SUMIF関数を使います」と、使い方やセルの例まで教えてくれます。あとは、自分のデータでExcelに入力するだけ。関数の名前を知らなくても、やりたいことを言葉で言えば、たどり着けるのです。これは、Excelが苦手な人にとって、大きな助けになります。これまでは「関数の名前が分からないから検索もできない」という、入口でのつまずきがありました。AIなら、やりたいことさえ言葉にできれば、適切な関数まで案内してくれます。「集計の仕方が分からず、手作業で電卓を叩いていた」という作業も、関数を教われば一瞬で終わるようになります。

安全に使う3つの原則

Excelでは扱うデータに注意が必要です。図2の3つの原則を守りましょう。

安全に使う3つの原則。1.実データは入れない(構造や例だけ渡す)、2.計算はExcelで(AIに計算させない)、3.結果は検算する(合っているか確かめる)。AIは計算機ではなくやり方を教える先生。
図2|安全に使う「3つの原則」 ── 実データを入れず、計算はExcelで、結果は検算

とくに大切なのが、1の「実データは入れない」。顧客名や売上などの実データを、そのままAIに貼ってはいけません(参考:入れてはいけない情報)。AIには、「A列に商品名、B列に金額がある」という"構造"や、架空の例を伝えれば十分。それだけで、正しい関数や手順を教えてくれます。やり方さえ分かれば、計算は手元のExcelで本物のデータに対して実行できます。「構造はAIに、計算は手元で」と分ければ、機密情報を一切外に出さずに、AIの助けを受けられます。

得意なこと・苦手なこと

AIの得意・苦手を、図3にまとめました。「やり方」は得意、「正確な計算」は苦手と覚えてください。

AIが得意なことと苦手なこと。得意:関数・数式の提案、エラーの直し方、操作手順の説明、グラフの選び方、数式の意味の解説。苦手:大量データの正確な計算、貼った数値の集計結果、最新の正しい数値、複雑な表の自動処理、計算結果をそのまま信じる。
図3|得意なこと/苦手なこと ── やり方はOK、正確な計算はNG

右側の中でも、とくに注意したいのが「貼った数値の集計結果」。AIは「合計は〇〇です」と自信たっぷりに答えますが、その数字は間違っていることがあります。計算結果は必ずExcelで出し、AIの数字は信じない。AIは「SUM関数で合計できますよ」と教える役、計算するのはExcel、と分けましょう。

コピペで使えるプロンプト集

そのまま使えるプロンプトです。実データは入れず、構造や架空の例で相談してください。

① やりたいことから関数を教わる

あなたはExcelの先生です。次のことをやりたいです。最適な関数や操作手順を、初心者にも分かるように手順で教えてください。 具体的なセルの例も示してください(実データではなく、例として)。 やりたいこと:[例:A列の商品ごとに、B列の売上を合計したい]

② データ整形の手順を聞く

Excelで、次の整理をしたいです。やり方を手順で教えてください。 やりたいこと:[例:重複している行を削除したい/日付の表記をそろえたい] ※私のデータは「A列に〇〇、B列に△△」という構造です(実データは載せません)。

③ 数式の意味を解説してもらう

次のExcelの数式が何をしているのか、初心者にも分かるように説明してください。 もし、もっと簡単な書き方があれば、それも教えてください。 数式:[セルに入っている数式を貼る]

エラーが出たときの相談のしかた

Excelでよく出る「#REF!」「#VALUE!」などのエラー。意味が分からず、手が止まってしまうことがあります。そんなときも、AIに聞けば解決の糸口が見つかります。

相談のコツは、「どんな操作をしたら、どのエラーが出たか」を具体的に伝えること。「SUM関数を入れたら #VALUE! と出た」のように伝えれば、原因と直し方を教えてくれます。エラーは怖がらず、そのままAIに見せるのがいちばんの近道です。ただし、エラーの周辺に実データがある場合は、その部分は伏せて相談しましょう。

「なぜ?」も聞いておく

直し方だけでなく、「なぜそのエラーが出たのか」も聞いておくと、次から自分で対処できるようになります。AIは、急ぎの問題解決だけでなく、Excelを学ぶ先生としても使えます。一度教わったことは、自分の力になります。

チェックリスト

  • 実データではなく構造・例で相談した
  • 教わった関数をExcelで実行した
  • 計算結果を検算した
  • 個人情報・売上などを入力していない
  • エラーは内容を伝えて直し方を聞いた

よくある質問(Q&A)

関数の名前を知らなくても大丈夫?

大丈夫です。「やりたいこと」を日本語で伝えれば、AIが適した関数を教えてくれます。名前を覚える必要はありません。

少しのデータなら貼ってもいい?

個人情報や売上などの機密でなければ、架空の例として少量なら問題ありません。ただし、本物の顧客データなどは避け、構造だけ伝えるのが安全です。

複雑な集計もできますか?

やり方の相談はできます。ただし複雑になるほど、結果の検算が大切。一度に全部やろうとせず、手順を分けて確認しながら進めましょう。

まとめ

  • AIは計算機ではなく、やり方を教える先生。計算はExcelで。
  • 実データは入れず、構造や例で相談し、結果は検算する。
  • 関数・手順・エラー対処を教わるのが、得意な使い方。

次に「Excelでどうやるんだろう」と困ったら、検索の前にAIに聞いてみてください。あなた専用の、Excelの先生が、いつでも、何度でも、手順を教えてくれます。これで、全15回の業務別レッスンは完結です。

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筆者コメント

Excelは、多くの人が「なんとなく使っているけれど、本当は苦手」というソフトです。これまでは、分からないことがあるたびに、詳しい人の手を止めて聞いていました。AIは、その「気軽に聞ける先生」になってくれます。何度同じことを聞いても、嫌な顔ひとつしません。Excelが苦手な人にこそ、使ってほしい使い方です。

ただし、最後にもう一度。AIに計算そのものを任せてはいけません。「やり方はAI、計算はExcel、確認は人」。この3つの役割分担さえ守れば、Excel作業は驚くほど楽になります。これで全15回の業務別レッスンが完結しました。メールから始まり、議事録、営業、採用、研修、報告、そしてExcelまで。あなたの仕事のどこかに、きっとAIで楽にできる部分があるはずです。次回からは最終章「AI時代の伝える力」をお届けします。ここまでありがとうございました。

── AutoAIPlatform編集部

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。