歯科診療所は6万5,624施設、7割強が個人開設
厚生労働省の「令和7(2025)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(2026年9月29日公表)によると、2025年10月1日時点の歯科診療所は全国で6万5,624施設でした。前年より754施設減っています。
同じ調査で、一般診療所は10万5,521施設と前年より314施設増えました。歯科診療所だけが減り続ける側にあることがわかります。
開設者別では、歯科診療所は「個人」が4万7,539施設で、歯科診療所全体の72.4%を占めます。前年と比べると、個人開設は1,128施設減り、医療法人は342施設増えました。
院長が診療をしながら、受付、会計、ホームページ、スタッフの採用まで見ている医院が多い業種です。事務の言葉の仕事を少しでも軽くできれば、患者さんと向き合う時間が戻ります。
AIが効く歯科医院の3場面
1つ目は定期健診のお知らせです。半年ごとの検診のはがき、メール、休診日の案内は、毎回少しずつ言い回しを変えたくなります。型を決めてAIに下書きさせれば、受付の手が空きます。
2つ目は口コミへの返信です。地図アプリの口コミに、お礼やおわびを返す医院が増えました。患者さんの名前や治療の中身を書かずに、ていねいな返信を作る手伝いをAIはできます。書き方の基本は口コミ返信の記事にまとめています。
3つ目は院内掲示と説明文です。「予約の変更は前日までに」「保険証の確認のお願い」といった掲示を、子どもや高齢の方にも伝わる言葉に言い換えます。外国語の案内を作るときの下書きにも使えます。
業務ごとの任せ方を表で比べる
同じ文章の仕事でも、間違えたときの重さは違います。歯科医院の主な事務を、AIに任せる部分と人が確かめる点に分けました。
| 業務 | AIに任せる部分 | 人が確かめる点 |
|---|---|---|
| 定期健診の案内 | はがき・メールの文案 | 日時と予約方法の正しさ |
| 口コミ返信 | お礼とおわびの文案 | 治療内容に触れていないか |
| 院内掲示 | やさしい言い換え | 決まりと料金の正しさ |
| ホームページの文 | 構成案と読みやすさ | 医療広告の決まりに合うか |
| 治療の説明資料 | 専門用語の言い換え案 | 歯科医師が内容を全部確認 |
下の行ほど、間違えたときに患者さんの判断や体に響きます。AIは患者さんの口の中を見ていません。治療に関わる文は、歯科医師が最後に読む決まりにしてください。
ホームページもSNSも医療広告の決まりの対象
歯科医院の発信には、医療法にもとづく広告の決まりがあります。厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」(2026年3月30日最終改正)は、医院のウェブサイトも、ほかの広告媒体と同じく規制の対象だと説明しています。
同ガイドラインが禁じる広告は5つです。比較優良広告、誇大広告、公序良俗に反する広告、患者の主観や伝聞にもとづく体験談、そして誤認させるおそれのある治療前後の写真です。
体験談について、同ガイドラインは「誤認を与えるおそれがあることを踏まえ、医療広告としては認められない」と明記しています。AIに「患者さんの声を入れて」と頼むと、それらしい体験談を作ってしまうことがあります。作られた体験談は載せません。
治療前後の写真も、写真だけを並べて説明が足りないものは認められない例に挙がっています。治療内容、費用、主なリスクや副作用の説明を添える必要があります。AIに写真の説明文を作らせたら、これらが抜けていないかを人が確かめます。
AIが書きがちな「キャンペーン文」に注意
AIは、読み手を動かす強い言葉を選びがちです。「痛くない」「必ず白くなる」「地域で一番」のような言い切りは、誇大広告や比較優良広告に当たるおそれがあります。
同ガイドラインは、品位を損ねる広告として費用を強調した広告も挙げ、例として「今なら○円でキャンペーン実施中!」を示しています。セールの告知に慣れたAIは、こうした文を自然に書いてしまいます。
そこでAIに文案を頼むときは、最初に条件を渡します。「効果を言い切らない」「ほかの医院と比べない」「体験談を作らない」「値引きを目立たせない」の4つです。出てきた文は、投稿前に院長か事務長が一語ずつ読みます。
迷ったら保健所に相談する
自由診療の料金や治療の詳しい説明は、条件を満たせば載せられる場合があります。判断がつかないときは、AIの答えで決めずに、地域の保健所や歯科医師会に確かめてください。値引きの表示全般の注意点は二重価格表示の記事も参考になります。
カルテと問診の情報は要配慮個人情報
個人情報保護委員会と厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(2026年4月一部改正)は、診療録に書かれた病歴や、診療の中で知った病状・治療の情報を、要配慮個人情報の例に挙げています。
同ガイダンスは、要配慮個人情報の取得や第三者への提供には「原則として本人同意が必要である」と明記しています。扱いに特に気をつける必要がある情報だということです。
ですから、カルテの記載、問診票、レントゲンの所見をそのままAIの入力欄に貼らないことが最初の決まりです。口コミ返信を作るときも、患者さんの名前や治療の中身は消し、「Aさん」「40代の方」と置き換えてから渡します。
医療情報を扱うシステムを入れる場合は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に沿うよう、同ガイダンスが求めています。AIに入れてはいけない情報の全体像はAIに入力してはいけない情報一覧で確認できます。
AIに任せない線
線引きの基準は1本です。言い回しはAIに下書きさせ、患者さんの口の中を見る判断と責任は歯科医師が持つ。診断、治療の方針、料金、予約を受けられるかどうかは、すべて後者です。
口コミで不満を書かれたときも、AIの文面をそのまま返しません。何があったかを院内で確かめ、治療の中身や患者さんが特定される情報を書いていないかを見てから、院長の言葉として返します。
始めるための4歩
手順1は、定期健診のお知らせを1通作らせることです。次の文をそのまま使えます。
手順2で、最近の口コミ3件に返信の下書きを作らせます。手順3で、広告に当たる言葉を見る人を院長か事務長に決めます。手順4で、院内掲示をやさしい言葉に言い換える仕事へ広げます。1か月続けたら、どの文にどれだけ時間が減ったかを受付で振り返ってください。
よくある質問(Q&A)
歯医者のホームページの文章をAIに書かせても大丈夫?
下書きに使うのは大丈夫です。ただし医院のウェブサイトは医療広告等ガイドラインの対象です。体験談や効果の言い切りが入っていないかを、公開前に院長が確かめてください。
カルテの内容をAIに要約させてもいい?
一般向けのAIにそのまま入れるのは避けてください。病歴や治療の情報は要配慮個人情報です。医療情報を扱うシステムは、厚生労働省の安全管理のガイドラインに沿うものを選ぶ必要があります。
小さな歯科医院で、AIは何から始めればいい?
定期健診のお知らせ文から始めるのがおすすめです。患者さんの情報を入れずに作れて、毎月使えます。慣れたら口コミ返信、院内掲示の順に広げてください。
まとめ
- 歯科診療所は6万5,624施設で、7割強が個人開設。少人数で事務まで回す医院が多い。
- AIに任せるのは健診の案内・口コミ返信・院内掲示の下書き。診断と治療の方針は歯科医師が担う。
- ホームページやSNSは医療広告等ガイドラインの対象。体験談や効果の言い切りは載せない。
- カルテと問診の情報は要配慮個人情報。そのままAIに入れず、置き換えてから使う。
来週送る定期健診のお知らせを1通、AIに下書きさせてみてください。できた文を受付の言葉に直す。その10分が、安全に使う習慣の第一歩です。