はじめに:質問の準備が、面接の質を決める
採用面接で、「何を聞こうか」と当日になって悩む——中小企業では、よくある光景です。準備のない面接は、面接官によって聞くことがバラバラになり、評価が「なんとなくの印象」になりがちです。
これを防ぐのが、質問の準備。評価したい点を決め、観点ごとに質問を用意しておくだけで、面接の質はぐっと上がります。準備に何時間もかける必要はなく、AIを使えば短時間で観点のそろった質問がそろいます。AIは、この質問案づくりが得意。前回の求人票と同じく、採用は法律やルールが関わる領域なので、注意点もセットで押さえます。
質問を準備すると、評価がそろう
質問を準備する最大のメリットは、応募者どうしを公平に比べられることです。全員に同じ観点で質問すれば、「Aさんには技術を、Bさんには人柄を聞いた」というズレがなくなり、評価が客観的になります。
もう一つの利点は、当日に余裕が生まれること。質問が手元にあれば、面接官は次に何を聞くか考えずに済み、相手の話をじっくり聴くことに集中できます。準備された質問は、応募者にとっても「ちゃんと見てくれている」という安心につながり、会社の印象も良くなります。
中小企業では、面接官が専任ではなく、社長や現場の責任者が通常業務の合間に面接することも多いものです。だからこそ、準備された質問リストがあるかどうかで、面接の質に大きな差が出ます。経験の浅い面接官でも、観点のそろった質問があれば、ベテランに近い見極めができます。AIで質問を用意することは、面接官の「経験差」を埋める助けにもなるのです。
質問づくりの3ステップ
手順は、図1の3ステップです。
ポイントは、1番目の「評価点を先に決める」こと。質問から考えると、聞きたいことが散らかります。「この職種で、何ができれば活躍できるか」をまず具体的に決め、それを確かめる質問をAIに作らせる——この順番が大切です。質問は、評価点から逆算して作ると覚えてください。
見るべき4つの評価観点
質問は、図2の4つの観点で組み立てると、抜けがありません。
AIに「この職種で、4つの観点それぞれの質問を出して」と頼めば、バランスのよい質問リストができます。とくに中小企業では、4の「自社との相性」が大切。スキルが高くても、働き方やチームに合わなければ長続きしません。「どんな環境で力を発揮できますか」といった質問で、相性を確かめましょう。
4つの観点をそろえると、面接が「印象」ではなく「事実」で語れるようになります。たとえば「なんとなく良さそう」ではなく、「スキルは十分、経験も合致、価値観も近い、ただし相性は要確認」というように、観点ごとに整理して評価できるのです。複数の面接官がいる場合も、同じ4観点で評価すれば、話し合いがかみ合います。AIに質問を作らせるときに「各質問がどの観点を見るためのものか」も書いてもらうと、評価シートにそのまま使えて便利です。
聞いてはいけない質問
面接には、聞いてはいけない質問があります。これは「公正な採用選考」の考え方にもとづくもので、AIが知らずに含めることもあるため、人が必ず確認します(図3)。
これらは、本人の能力や適性とは関係がなく、本人の責任でもない事項です。本籍や家族、思想・信条、結婚・出産の予定などを尋ねると、就職差別につながりかねません。AIに質問案を頼むときは「公正な採用選考で不適切とされる質問は含めないで」と明示し、出てきた質問も人がチェックします。世間話のつもりでも、これらに触れる質問は避けるのが原則です。
公的な指針を確認する
聞いてよい・いけないの基準は、厚生労働省の「公正な採用選考」の考え方が参考になります。判断に迷う質問は、無理に使わず、公的な資料やハローワーク、専門家に確認してください。本記事は一般的な注意点の紹介です。
コピペで使えるプロンプト集
そのまま使えるプロンプトです。応募者個人の情報は入れず、職種や評価点を渡してください。
① 観点ごとに質問案を作る
② 評価点から質問を逆算する
③ 深掘り質問を用意する
深掘り質問で見極める
用意した質問をそのまま聞くだけでは、表面的な答えで終わりがちです。大切なのは、回答を深掘りすること。「具体的には?」「そのとき、どう考えましたか?」と一歩踏み込むと、その人の本当の力が見えてきます。
この深掘り質問も、AIにあらかじめ用意してもらえます。「この質問の答えを深掘りする追加質問を考えて」と頼んでおけば、面接中に慌てません。準備した質問で全体をそろえ、深掘りで個性を見る——この組み合わせが、よい面接の形です。
深掘りで効果的なのが、過去の具体的な行動を聞くことです。「リーダーシップはありますか?」と聞いても、たいてい「あります」と返ってくるだけ。代わりに「これまで、チームをまとめた経験を具体的に教えてください」「そのとき、どんな工夫をしましたか」と聞けば、その人の実際の行動が見えてきます。AIに「過去の具体的な行動を引き出す質問にして」と頼むと、こうした答えやすく、かつ見極めに役立つ質問を作ってくれます。
チェックリスト
- 評価したい点を先に決めた
- 4つの観点で質問を用意した
- 深掘り質問も準備した
- 聞いてはいけない質問が含まれていないか確認した
- 応募者の情報をAIに入力していない
- 各質問が「どの観点を見るか」を整理した
数字で見る:聞いてはいけないことがある
厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」は、採用選考で配慮すべき事項として本籍・出生地、家族に関すること(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産)、住宅状況、生活環境・家庭環境、宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合活動や社会運動に関することを挙げています。
厚生労働省「公正な採用選考の基本」が示す基準は「求人職種の職務遂行上必要な適性・能力をもっているか」の一点です。AIが出した質問案には、雑談のつもりでこの線を越えるものが混ざります。使う前に必ず1問ずつ照合してください(参考: 業務で生成AIを使う日本企業は55.2%/総務省「令和7年版 情報通信白書(企業におけるAI利用の現状)」)。
| 質問のカテゴリ | 例 | 聞いてよいか |
|---|---|---|
| 職務経験・実績 | 前職で担当した業務と成果 | 聞いてよい |
| 能力・適性 | 課題に直面したときの進め方 | 聞いてよい |
| 勤務条件 | 勤務可能な曜日・時間 | 聞いてよい |
| 家族・家庭環境 | 親の職業、家族構成 | 聞かない |
| 本籍・出生地 | 生まれた場所、実家の場所 | 聞かない |
| 思想・信条 | 支持政党、宗教、尊敬する人物 | 聞かない |
よくある質問(Q&A)
応募者の履歴書をAIに読ませてもいい?
おすすめしません。応募者の個人情報をAIに入力するのは避け、職種や評価点をもとに質問を作りましょう。履歴書の確認は、人が行います。
AIの質問をそのまま使っていい?
確認してから使います。とくに聞いてはいけない質問が紛れていないかを必ずチェック。自社の言葉に直すと、より自然な面接になります。
合否もAIに判断させていい?
いいえ。合否の判断は、人が責任を持って行います。AIは質問づくりや、観点の整理を助ける道具と考えてください。最後に人が向き合って決めるのが、採用の基本です。
まとめ
- 質問を準備すると、評価のばらつきが減り、公平に比べられる。
- スキル・経験・人柄・相性の4観点で、評価点から逆算して作る。
- 聞いてはいけない質問は人が必ず除き、合否は人が判断する。
次の面接から、質問をAIで用意してみてください。評価点を決めて頼むだけで、観点のそろった質問リストが、短時間で手に入ります。準備された質問と、人の見極め——この両輪が、よい採用につながります。質問の準備に時間を取られなくなる分、相手とじっくり向き合えるようになります。
面接でAIを使うと聞くと、「AIが人を選ぶの?」と不安に思う方もいます。でも、ここで紹介したのは、AIに「選ばせる」のではなく、人がよりよく見極めるための「質問を準備する」使い方です。主役はあくまで人。AIは、準備の手間を減らし、聞き忘れを防ぐ縁の下の力持ちです。
質問を準備することは、応募者への誠意でもあります。場当たり的な面接より、観点のそろった質問で向き合うほうが、お互いにとって有意義な時間になります。そして、聞いてはいけないことを聞かない——これは、応募者の尊厳を守る、企業の責任です。AIで効率化しつつ、この一線だけは人がしっかり守りましょう。
── AutoAIPlatform編集部