はじめに:研修資料は「ゴール」から作る

「新人研修の資料を作らなきゃ」「でも時間がない」——中小企業では、研修資料づくりがいつも後回しになりがちです。担当者が片手間で作るため、内容が薄くなったり、毎年同じ古い資料を使い回したり、ということも起きます。けれども、研修の質は、社員の成長や定着に直結する大切なもの。手を抜けない仕事だからこそ、AIで効率化する価値があります。

ここでAIを使えば、研修の目的を伝えるだけで、章立てと説明文のたたき台が手に入ります。大切なのは、最初に「研修が終わったら、受講者が何をできるようになるか」というゴールを決めること。ゴールさえ決まれば、あとはAIが構成を整えてくれます。文章を書くのが苦手な人でも、土台があれば手直しから始められるので、安心して取りかかれます。

なぜ研修資料はAIに向くのか

研修資料は、「決まった型に、内容を整理して並べる」作業が中心です。目的、背景、手順、演習、まとめ——入れる要素が定まっているので、AIが構成を作りやすいのです。文章を分かりやすく整えるのも、AIの得意分野です。

さらに、研修資料は下書きから何度も直せるので、失敗のリスクも低め。前回の提案書づくりと同じく、「骨組みはAI、中身は人」の分担が効きます。ただし、自社のやり方や事実の正しさは、人が責任を持って確認します。

もう一つ、研修資料ならではの利点があります。それは、「教える内容を、AIに分かりやすく言い換えてもらえる」こと。専門用語が多くなりがちな研修も、「新人にも分かるように、たとえを使って説明して」と頼めば、ぐっとやさしい教材になります。教える側はつい「自分が知っていること」を前提にしてしまいますが、AIは初心者目線への翻訳が得意です。受講者のレベルを伝えれば、それに合わせた説明にしてくれます。

作成の4ステップ

手順は、図1の4ステップです。

研修資料のたたき台を作る4ステップ。1.目的を決める(誰が何をできるように)、2.章立てを作る(AIで構成案を)、3.中身を肉付け(自社の例・図を加える)、4.確認する(事実と分かりやすさ)。
図1|研修資料づくりの4ステップ ── 目的 → 章立て → 肉付け → 確認

ポイントは、1番目の「目的を決める」。「〇〇について教える」ではなく、「〇〇が一人でできるようになる」と、受講者の行動で書くのがコツです。ゴールが具体的だと、AIが作る章立ても的確になります。「研修後にできること」を一文で書いてから、AIに渡しましょう。

たとえば「電話応対について」では漠然としていますが、「よくある問い合わせに、一人で落ち着いて応対できるようになる」とすれば、何を教えるべきかが見えてきます。基本のあいさつ、よくある質問への答え方、困ったときの取り次ぎ方——ゴールから逆算して、必要な章が決まります。AIにこのゴールを渡せば、それに沿った章立てを提案してくれるので、構成で悩む時間がなくなります。最初のゴール設定にだけ、しっかり頭を使いましょう。

伝わる教材の5要素

研修資料には、図2の5つの要素を入れると、学びが定着します。

伝わる研修資料の5つの要素。1.研修のゴール(終わったら何ができるか)、2.なぜ必要か(学ぶ意味・背景)、3.具体的な手順・例(自社の事例で示す)、4.演習・チェック(やってみる・確認する)、5.まとめ・次の一歩(持ち帰ってほしいこと)。説明だけでなく演習を入れると身につく。
図2|伝わる教材の「5要素」 ── 演習を入れると定着する

欲ばって詰め込むより、この5要素に絞るほうが伝わります。とくに大事なのが、4の「演習・チェック」です。説明を聞くだけの研修は、すぐ忘れられます。簡単な演習や、理解度を確認する問いを入れると、ぐっと身につきます。AIに「この内容の理解を確認する演習問題を3つ作って」と頼めば、すぐに用意できます。

2の「なぜ必要か」も、見落とされがちですが重要です。手順だけを教えられても、受講者は「やらされている」と感じます。「この作業を正しくやらないと、お客様にどんな迷惑がかかるか」といった背景を伝えると、納得して取り組めます。AIに「この研修がなぜ必要かを、受講者が納得できるように説明して」と頼むと、動機づけの一文を作ってくれます。手順の暗記ではなく、意味の理解につながる研修になります。

AIと人の分担

研修資料づくりでの分担を、図3にまとめました。

AIに任せることと人がやること。AIに任せる:章立て・構成案、説明文のたたき台、演習問題の案、用語のやさしい言い換え。人がやる:自社の事例・ルール、事実・数字の確認、現場に合う調整、教える順番の最終判断。
図3|AIと人の分担 ── 骨組みと言い換えはAI、自社の中身は人

AIは一般的な内容づくりは得意ですが、「自社ならではのやり方」や「現場の実例」は知りません。ここを人が加えることで、研修資料が「どこかで見た一般論」から「自社で使える教材」に変わります。AIのたたき台に、自社の事例・写真・ルールを足していきましょう。

この分担を意識すると、研修資料づくりの負担配分が変わります。これまでは「構成を考える」「文章を書く」「事例を集める」のすべてを一人で抱えていました。これからは、構成と文章はAIに任せ、人は『自社の事例集め』と『確認』に集中できます。とくに事例は、研修の説得力を大きく左右する部分。「実際にうちで起きたこと」を1つ加えるだけで、受講者の理解度はぐっと上がります。AIで浮いた時間を、この事例集めに回すのが、質の高い研修への近道です。

コピペで使えるプロンプト集

そのまま使えるプロンプトです。受講者の個人情報は入れず、テーマと対象を渡してください。

① 研修資料のたたき台を作る

あなたは研修教材の編集者です。次のテーマの研修資料のたたき台を作ってください。 最初に研修のゴール(終了後にできること)を示し、章立て、各章の説明の要点、簡単な演習問題を含める。 専門用語はやさしく言い換える。 テーマ:[研修テーマ]/対象:[新人・管理職など]

② 章立てだけ先に相談する

「[研修テーマ]」について、[対象者]向けの研修の章立てを提案してください。 各章に、何を伝えるかの一言メモと、目安の時間配分も付けてください。

③ 理解度チェックの演習を作る

次の研修内容について、受講者の理解を確認する演習問題を3つ作ってください。 答えと、つまずきやすいポイントの解説も付けてください。 研修内容:[要点を貼る]

そのまま使えない部分に注意

AIのたたき台は便利ですが、研修資料は人を育てる大切なもの。そのまま使ってはいけない部分があり、ここは人が必ず手を入れます。

  • 自社のやり方・ルール:一般論ではなく、自社の手順に合わせる。
  • 事実・数字:制度や数値が古かったり、誤っていないか確認する。
  • 他社の著作物:既存の教材や書籍をそのまま流用しない。

「教える順番」は人が決める

AIは一般的な順番を提案しますが、自社の現場に合う順番は、教える人がいちばん分かっています。「これは先に教えたほうがいい」という現場感覚で、順番を調整しましょう。AIはたたき台、構成の最終判断は人です(参考:確認手順)。

チェックリスト

  • 研修のゴールを決めた
  • 章立てをAIで作った
  • 自社の事例・演習を加えた
  • 事実・数字を確認した
  • 受講者目線で分かりやすいか確認した
  • 演習・理解度チェックを入れた

よくある質問(Q&A)

スライド資料も作れますか?

作れます。「各スライドの見出しと箇条書き」を頼めば、スライドの構成案になります。清書とデザインは、人やスライド作成ツールで仕上げます。

専門的な研修でも使える?

構成や説明の土台づくりには使えます。ただし専門的な事実は必ず人が確認を。AIは一般論が得意でも、自社の専門領域の正確さは保証しません。

毎年の更新も楽になりますか?

はい。既存の資料を渡して「最新の形に整えて」と頼めば、更新の下書きができます。変わった点だけ人が確認すれば、毎年の作り直しが楽になります。

まとめ

  • 研修資料は「ゴール(できること)」から作る
  • 章立てと説明はAI、自社の事例と判断は人
  • 演習を入れると、学びが定着する。

次の研修から、まず「終わったらできること」を一文書いて、AIに章立てを頼んでみてください。資料づくりの時間が減った分、教え方を工夫する余裕が生まれます。受講者一人ひとりに目を向ける時間も増えるはずです。

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筆者コメント

研修資料づくりは、「重要だけど緊急ではない」ために、後回しにされがちな仕事の代表です。AIにたたき台を任せると、この「最初の一歩の重さ」がなくなり、ぐっと取りかかりやすくなります。白紙のスライドを前に固まる時間が消えるだけでも、大きな前進です。

そして、研修でいちばん価値があるのは、「自社ならではの事例」と「教える人の経験」です。AIで作れるのは、あくまで一般的な土台。そこに現場のリアルな話を足すからこそ、受講者の心に残る研修になります。AIで生まれた時間を、その「自社らしさ」を考えることに使ってください。それが、人が育つ研修と、AIの上手な付き合い方です。次回は「社内マニュアル・手順書をAIで読みやすく整える方法」をお届けします。

── AutoAIPlatform編集部

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。