「段取り八分」を、AIが助ける

昔から、仕事は「段取り八分、仕事二分」と言われます。始める前の段取りで、仕事の出来の大半が決まる、という意味です。ただ、段取りは人によって上手・下手の差が大きく、初めての仕事では何をどの順でやればいいか、見当もつかないことがあります。

ここで、AIが頼りになります。「このゴールを、この期限までに達成したい」と伝えるだけで、必要な作業を洗い出し、順番や時間の目安まで、一緒に組み立ててくれるのです。現場の実情に合わせた調整は人の仕事、という前提で使い方を見ていきましょう。

なぜ、いつも慌ててしまうのか

締切前にいつも慌ててしまう人には、共通点があります。それは、やるべきことを、頭の中だけで管理していることです。頭の中は、思いのほか、あてになりません。作業を一つ忘れる、順番を間違える、時間を甘く見積もる——こうした小さなつまずきが積み重なって、締切前の大慌てにつながります。

解決の第一歩は、頭の中にあることを、いったん全部、外に書き出すことです。書き出して目で見えるようにすれば、抜けにも気づけるし、順番も考えやすくなります。この「書き出し」の作業を、AIが強力に助けてくれます。ゴールを伝えれば、「こういう作業も必要では?」と、自分では思いつかなかった項目まで挙げてくれる。業務の洗い出しには業務棚卸しシートの記事の考え方も役立ちます。

段取りにAIを使う効果

段取りにAIを使うと、どんな良いことがあるのか。図1にまとめました。

段取りにAIを使う3つの効果。1.抜けを防ぐ(必要な作業を洗い出す)。2.順番が決まる(何から手をつけるか分かる)。3.時間が読める(各作業の見積りを出せる)。「何をいつやるか」を一緒に整理する。
図1|段取りにAIを使う効果

この3つのなかで、多くの人がいちばん助かるのが「抜けを防ぐ」です。段取りの失敗の大半は、必要な作業を一つ見落とすことから始まります。「会場は押さえたのに、備品の手配を忘れていた」といった具合です。AIに作業を洗い出してもらえば、こうした抜けをぐっと減らせます。さらに、洗い出した作業に「どれを先にやるか」「どれくらい時間がかかりそうか」の目安がつけば、全体像が一目で見渡せるようになります。

段取りを作る4ステップ

実際の段取りづくりは、図2の4ステップで進めます。

段取りを作る4ステップ。1.ゴールと期限を伝える(いつまでに何を終える)。2.作業を洗い出す(必要なステップを列挙)。3.順番と時間を割る(依存関係と見積りを付ける)。4.人が調整する(現場の都合で手直し)。
図2|段取りを作る4ステップ

最初に、ゴールと期限を、できるだけはっきり伝えます。「1か月後に、地域のイベントを成功させる」といった具合です。ゴールがあいまいだと、段取りもぼやけます。次に、AIに作業を洗い出してもらい、それぞれの順番と、おおよその所要時間を割り振ってもらう。ここで役立つのが、作業どうしの前後関係(依存関係)です。「チラシは、内容が決まってからでないと作れない」といった順序を整理してもらうと、計画がぐっと現実的になります。最後に、自社の都合に合わせて、人が手直しをします。

「抜けている作業はない?」と聞き返す

AIが段取りを出してくれたら、そこで終わりにせず、「他に、抜けている作業はありませんか?」と一度聞き返すのがコツです。この一言で、最初の回答では挙がらなかった、細かいけれど大事な作業が出てくることがよくあります。段取りの抜けは、あとで大きな痛手になります。念のための問い返しを、習慣にしましょう。

締切から逆算する

段取り上手な人が必ずやっているのが、締切から逆算して考えることです。「今日から何をやろうか」と前から積み上げるのではなく、「この日までに終わらせるには、いつ何を始めていなければならないか」と、ゴールから逆にたどるのです。

逆算は、頭の中だけでは意外とむずかしいものです。「この期限から逆算して、いつ何に着手すべきか、スケジュールを引いて」と頼めば、各作業の「遅くともいつまでに始めるべきか」という締切まで示してくれます。とくに、早めに動かないと間に合わない作業——会場予約や、外部への発注など——を先に教えてくれるので、「気づいたら手遅れ」を防げます。

段取りは、残業の上限を守る道具

段取りには、法律を守る役割もあります。厚生労働省の「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」によると、残業の上限は原則として月45時間・年360時間です。同資料は「臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります」と明記しています。中小企業への適用は2020年4月からです。

労使で特別条項を結んでも、残業は年720時間以内、休日労働を含めて月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内に収める必要があります。厚生労働省の建設業向けポータルサイトは、「業務の都合上必要なとき」のような理由は認められないとしています。建設業にも2024年4月から上限規制が適用されました。

締切前の残業で帳尻を合わせる計画は、もう前提にできません。AIに段取りを頼むときは、「1日の作業は8時間以内、残業は上限の範囲内」と条件に書き込みましょう。

場当たりと段取り上手

段取りのあるなしで、日々の仕事の進み方はまるで変わります。図3で見比べてみましょう。

場当たりと段取り上手の対比。思いつきで着手するより、全体を先に見渡す。締切直前で慌てるより、逆算して進める。抜け漏れが多いより、チェックリスト化。頭の中だけで管理するより、書き出して共有。
図3|場当たりと段取り上手
表1|場当たりと、段取り上手
場面場当たり段取り上手
着手思いつきで始める全体を先に見渡す
締切直前で慌てる逆算して進める
抜け漏れ多いチェックリスト化する
管理頭の中だけ書き出して共有する
繁忙期残業で乗り切る上限を前提に前倒しする

右側に共通するのは、「先に全体を見渡してから動く」という姿勢です。場当たり的に目の前の作業に飛びつくのではなく、まず全体を書き出し、順番を決め、逆算して進める。書き出した段取りは、チームで共有すれば、みんなが同じ地図を見ながら動けるようになります。日々の報告と組み合わせる方法は日報をAIで仕上げる記事も参考になります。

最後は人が調整する

大切な注意点があります。AIが出した段取りは、あくまでたたき台だということです。AIは、あなたの会社の細かい事情を知りません。「この時期は繁忙期で人手が足りない」「この取引先は返事が遅い」といった現場のリアルは、AIには見えないのです。

だから、AIの段取りをそのまま鵜呑みにしてはいけません。とくに、所要時間の見積りは、楽観的になりがちです。AIが「1日で終わる」と言っても、実際には確認や修正で数日かかることは珍しくありません。出てきた計画は自社の実情で見直し、余裕を持たせましょう。作って終わりにせず、進みながら見直すことも大切です。

見直しにもAIが使えます。月の半ばに、ここまでの作業実績と残業時間を貼り付け、「残りの日数で、残業が月45時間を超えない並べ替えを」と頼みます。遅れが小さいうちに手を打てるので、月末の大慌てを防げます。

そのまま使えるプロンプト

角かっこを自社の仕事に置き換えて使ってください。

あなたは、段取りづくりが得意なアシスタントです。次の仕事の計画を立ててください。ゴール:地域の小さなイベントを1か月後に開催する。やること例:会場予約、チラシ作成、SNS告知、当日の運営、備品準備。出力してほしいもの:(1)必要な作業を抜けなく洗い出す (2)着手すべき順番に並べる (3)各作業のおおよその所要日数 (4)特に早めに動くべきものの印。条件:1日の作業は8時間以内で組み、締切直前の残業を前提にしない。表形式で、そのまま使えるように整理してください。

よくある質問(Q&A)

毎日の細かいタスク管理にも使えますか?

使えます。「今日やることを、重要度と締切で並べ替えて」と頼めば、優先順位づけを手伝ってくれます。ただし、その日の状況は人がいちばん分かっています。AIの並びを参考に、自分で最終判断するのがよいでしょう。

見積り時間が、いつも実際とずれます。

AIの見積りは楽観的になりがちです。出た時間に、確認や修正のぶんを1.5倍ほど上乗せすると、現実に近づきます。何度か使って、自社の実際とのずれの傾向をつかめば、調整の勘どころが分かってきます。

計画どおりに進まないと、やる気をなくします。

計画は、守るためよりずれに早く気づくためにあります。予定と実際がずれたら、それは失敗ではなく、見直しの合図です。AIに「遅れを取り戻す並べ替えを」と頼めば、立て直しも手伝ってくれます。

まとめ

  • 段取りは経験頼りになりがちだが、AIが洗い出しを助ける。
  • ゴールと期限から、作業・順番・時間を一緒に整理する。
  • 見積りと順番は人が実情に合わせて調整するのが前提。

段取りが苦手なのは、才能がないからではありません。多くは、頭の中だけで抱えてしまい、書き出せていないだけです。ゴールと期限をAIに伝え、作業を洗い出し、順番と時間を整理してもらう。たったこれだけで、目の前の霧が晴れ、「何から手をつけるべきか」が見えてきます。まずは今、少し気が重いと感じている仕事を一つ思い浮かべ、そのゴールと期限をAIに伝えて、段取りを一緒に組んでみてください。段取りが決まれば、仕事は八分方、終わったも同然です。

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段取りづくりを含め、どの業務からAIを取り入れるかを整理しましょう。

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。