偽警告の相談は9か月で2倍を超えた
IPA(情報処理推進機構)は「情報セキュリティ安心相談窓口の相談状況[2026年第2四半期(4月~6月)]」を公表しています。この3か月の相談は3,832件で、そのうち「ウイルス検出の偽警告」が1,428件でした。前の四半期から約23.7%の増加です。相談全体も約8.5%増えており、偽警告はその増加分の大半を占めています。
2025年7〜9月は647件でした。わずか9か月で、2倍を超える水準まで戻っています。IPAは手口を、偽警告で不安をあおり、電話をかけさせてサポート契約に誘導するものと説明しています。
警告は、普通のニュースサイトの広告や検索結果からも出ます。怪しいサイトを見ていなくても、誰の画面にも出ると考えておくのが現実的です。
偽警告の3つの特徴
偽警告には決まった型があります。警告音や音声が鳴り、有名企業のロゴと「今すぐ電話を」という文言、そして電話番号が並びます。慌てさせて考える時間を奪うのが、この画面の狙いです。
IPAの「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ」は、画面が出ただけなら感染しておらず、閉じれば問題ないと説明しています。Escキーを長押しすると閉じるボタンが出る、と閉じ方も示しています。
件数は減ったのに、被害額は増えた
警察庁の「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」では、ウイルス除去のサポートを名目にした詐欺は1,048件でした。前年より31.2%減っています。
ところが、被害額は14.9億円で、前年より48.1%増えました。単純に割ると1件あたり約140万円です。件数は減っても、1回でだまし取られる額が大きくなっていることが分かります。
同じ資料では、架空料金請求詐欺でだますきっかけの21.2%がポップアップ表示でした。パソコンの画面が、電話やメールと並ぶ入口になっています。
AIで、だます側の手間が減っている
マイクロソフトは2025年4月の報告書「Cyber Signals Issue 9: AI-powered deception」で、AIが詐欺を行う側の技術的なハードルを下げ始めたと指摘しました。もっともらしい画面や文面を、安く速く作れるようになったという趣旨です。
同社は2024年4月〜2025年4月に、約40億ドルの詐欺の試みを防いだとしています。Windowsの遠隔サポート機能「クイックアシスト」では、不審な接続を1日平均4,415件止めています。画面がそれらしく見えるかどうかでは、もう見分けられないと考えてください。
同社は、社内のパソコンの手伝いには、組織の中だけでつながる遠隔支援の仕組みを使うよう勧めています。誰でもつなげる機能を、社内のサポートに使わないという考え方です。小さな会社でも、遠隔操作に使うツールを決めておけば「知らない相手からの接続」に気づきやすくなります。
会社のパソコンなら「漏えい」の問題になる
個人なら、被害はお金で済むこともあります。会社のパソコンでは事情が違います。IPAは「会社や組織のパソコンにセキュリティ警告が出たら、管理者に連絡!」で、警告が出たら「対処を自分一人で判断せず」管理者か上司に連絡するよう明記しています。
分かれ目は、遠隔操作をさせたかどうかです。させた場合、顧客名簿や取引データを見られた恐れが残ります。情報漏えいとして調べ、必要なら報告するところまで進む可能性があります(情報漏えいが起きたときの報告と通知)。
IPAは別の注意喚起で、遠隔操作中に送金額を書き換えられ、198万円を不正送金された事例も紹介しています。コンビニでプリペイドカードを買わせる手口では、100万円を超える被害の相談もあるとしています。経理のパソコンほど、狙われたときの損害が大きくなります。支払いの前に「上司に確認します」と一度電話を切る習慣が、最後の歯止めになります。
偽警告が出たときの4歩
どこまで進んでしまったかで、やることが変わります。途中まで進んでいても、そこで止めれば被害は小さくできます。IPAの「パソコンに偽のウイルス感染警告を表示させるサポート詐欺に注意」をもとに、段階ごとに整理しました。
| 段階 | 状態 | すぐやること | 連絡先 |
|---|---|---|---|
| 画面が出ただけ | 感染していない | Esc長押しかブラウザの強制終了で閉じる | 管理者に一報 |
| 電話をかけた | 相手に会社名や名前を伝えた恐れ | 電話を切り、指示に従わない | 管理者・上司 |
| 遠隔操作を許した | 中の情報を見られた恐れ | ネットを切り、端末はそのまま残す | 管理者(漏えいの調査) |
| 支払い・送金をした | 金銭被害 | カード会社・銀行に連絡する | 銀行・警察 |
会社のパソコンで遠隔操作を許したときは、自分で初期化しないのが大事です。IPAも、漏えいを調べる場合は調査が終わるまで端末を残すよう勧めています。送金させられた場合は、至急、振込先の銀行に連絡するよう求めています。お金のことは時間との勝負なので、管理者への報告と並行して動きます。
一人で判断しない会社にする
被害が広がる会社には共通点があります。警告を出してしまったことを、恥ずかしくて言えない空気です。報告が遅れるほど、遠隔操作の時間が長くなります。
決めておくことは3つです。1つ目は「遠隔操作は管理者の許可なく許さない」。2つ目は「パソコンの異常は、時刻と画面の写真を添えて誰に連絡するか」。3つ目は、社内のサポートに使う遠隔ツールを1つに決めることです。「報告してくれてありがとう」と返すのが、いちばんの対策になります(中小企業のAIセキュリティの基本)。
そのまま使えるプロンプト
社員に配る「偽警告が出たときの対応カード」を、AIに下書きさせます。角かっこを置き換えてください。
肝は条件5です。AIが連絡先をそれらしく作ってしまわないよう、空欄で残させます。完成したら管理者が読み直し、パソコンの近くに貼ってください。年に一度、IPAの体験ページで閉じ方を全員で試しておくと、いざというときに手が動きます(AIなりすまし詐欺への備え)。
よくある質問(Q&A)
「ウイルスに感染しました」って画面が出て閉じられないんだけど、どうすればいい?
表示された番号には電話しないでください。Escキーを長押しして閉じるボタンを出すか、Ctrl+Alt+Deleteでタスクマネージャーを開き、ブラウザを終了します。画面が出ただけなら感染していません。
もう電話して遠隔操作させちゃった。会社のパソコンなんだけど、まず何をする?
すぐにネットを切り、管理者か上司に連絡してください。自分で初期化はしないでください。中の情報を見られた恐れがあり、漏えいの調査に端末が必要になります。
偽警告かどうか分からないとき、相談できるところはある?
IPAの情報セキュリティ安心相談窓口が、電話やメールで相談を受け付けています。お金を払ってしまった場合は、カード会社や銀行と警察にも連絡します。
まとめ
- 偽のウイルス警告の相談は2026年4〜6月に1,428件(IPA)。誰の画面にも出る前提で備える。
- 出たら、電話しない・画面を閉じる・管理者に報告する。遠隔操作されたらネットを切り、端末を残す。
- 会社では「遠隔操作は管理者の許可なく許さない」を決め、報告した人を責めない。
偽警告に電話してしまった人の多くは、パソコンに詳しくない人ではありません。「会社のパソコンを壊したら迷惑をかける」と、責任感から急いで動いた人です。
だからこそ、急がせる画面ほど、手を止めて人に聞くと決めておくことが効きます。対応カードを1枚貼るところから始めてみてください。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
── AutoAIPlatform編集部