「わかりました」と言われたのに、伝わっていない

製造業の工場でも、スーパーのバックヤードでも、ホテルの客室清掃でも、同じ相談を聞きます。「ちゃんと説明したのに、そのとおりに動いてくれない」。指示を出した側は繰り返し伝えたつもりで、受け取った側は毎回「わかりました」と答えている。それなのに結果が食い違う。やがて双方が疲れ、教える人が固定され、その人が休んだ日に現場が止まります。

ここで起きているのは、能力の問題でも態度の問題でもありません。日本語の「わかりました」は、内容を理解したという意味と、あなたの話を受け止めたという意味の両方に使われます。相手が後者のつもりで言っているのに、こちらが前者だと受け取れば、そのままずれていきます。そしてこのずれは、指示の言葉があいまいなほど大きくなります。

この記事では、まず数字で状況を確認し、次に「伝わらない日本語」の正体をはっきりさせます。そのうえで、国が公開している書き換えの手順をAIに任せて、毎日の連絡文を数十秒で作り直す方法を紹介します。難しい設定は要りません。必要なのは、いつも使っているAIに一言足すことだけです。

外国人と働く職場は、もう特別ではない

厚生労働省は毎年、事業主から届け出られた「外国人雇用状況」を集計して公表しています。2026年1月30日に公表された最新のまとめ(2025年10月末時点)は、次のような内容でした。

数字で見る外国人雇用。1.257万人で外国人労働者は過去最多。2.63.1%で雇う事業所は30人未満が最多。3.プラス9.6%で30人未満の伸びが最大。4.76%が望む発信はやさしい日本語。
図1|数字で見る、外国人雇用の現在地

日本で働く外国人は2,571,037人となり、前年から268,450人(11.7%)増えました。外国人を雇っている事業所は371,215所で、こちらも前年から29,128所(8.5%)の増加です。どちらも、届出が義務づけられた2007年以降で過去最多を更新しました。国籍別ではベトナムが605,906人(全体の23.6%)で最も多く、中国が431,949人(16.8%)、フィリピンが260,869人(10.1%)と続きます。

中小企業にとって重要なのは、その次の数字です。外国人を雇っている事業所を規模別に見ると、「30人未満」の事業所が全体の63.1%を占めていました。しかも、前年比の増え方が最も大きかったのもこの30人未満の層で、9.6%増です。産業別に見ても、事業所数では「卸売業・小売業」が19.0%、「製造業」が15.7%、「宿泊業・飲食サービス業」が14.5%。町の店や小さな工場が中心だということが、はっきり表れています。

つまり、外国人と一緒に働くことは、専任の通訳や人事部門を置ける会社だけの話ではありません。むしろ、そういう体制を持たない小さな職場のほうが多数派です。だからこそ、お金も時間もかけずにできる伝え方の工夫が要ります。

「うちはまだ関係ない」と思っている会社ほど急に来る

人手不足の現場では、採用の相談から入社まで数か月ということが珍しくありません。受け入れが決まってから伝え方を考え始めると、最初の一か月で相手が辞めてしまいます。実際、離職理由として「何を求められているか分からなかった」が挙がるのは、能力よりも先に情報が届いていなかったことのサインです。技能実習制度に代わる新しい受け入れの仕組みへの移行も控えており、準備は早いほど楽になります。

伝わらない原因は、相手ではなく日本語にある

日本語には、相手を気づかうために生まれた表現がたくさんあります。それは日本語の良さでもあるのですが、同時に、学習者にとって最も難しい部分でもあります。よくある四つの型を見てみましょう。

あいまいな時間・量

「なるべく早めに」「午後いちで」「だいたい9時ごろ」。日本人同士なら文脈で読めますが、学習者には手がかりがありません。「早め」が10分後なのか翌日なのかは、日本語の中に書かれていないからです。

ひとつの言葉に複数の意味

代表例が「結構です」です。「もう十分なので要りません」という断りと、「それでよいです」という承諾の、正反対の意味を持ちます。「大丈夫です」も同じです。使う側は無意識ですが、受け取る側は毎回どちらか賭けることになります。

敬語のかたまり

「ご確認いただけますでしょうか」「お越しいただく必要はございません」。尊敬語と謙譲語が重なると、動詞の元の形が見えなくなります。何をするのか、するのは誰なのかが、文の表面から消えてしまうのです。

二重否定と受け身

「持ってこないわけではない」「在留カード以外は必要ありません」。日本語として自然でも、結局、何を持ってくればよいのかが書かれていません。「住民税は市町村で課税されます」のような受け身も、誰が何をするのかを隠します。

この四つは、どれも相手の日本語力とは関係のない問題です。もし同じ文を日本語ネイティブの新人アルバイトに渡しても、たぶん一度は聞き返されます。外国人スタッフは、日本語が分からないのではなく、あいまいな日本語を推測で埋める余裕がないだけだと考えると、直すべき場所がはっきりします。

翻訳AIに丸投げすると、何が起きるか

ここで多くの職場が最初に試すのが、翻訳AIです。スマートフォンに日本語を打ち込めば、ベトナム語でもインドネシア語でも数秒で返ってきます。実際、翻訳の精度はこの数年で大きく上がりました。使わない手はありません。

ただし、順番を間違えると効果が出ません。あいまいな日本語を翻訳すると、あいまいな外国語が出てくるだけだからです。「なるべく早めにお願いします」を翻訳しても、いつまでかは相変わらず書かれていません。それどころか、翻訳の過程で「早め」が「すぐに」寄りに訳されたり、逆に「都合のよいときに」寄りに訳されたりして、ずれが増幅されることさえあります。

敬語も苦手分野です。「ご確認いただけますでしょうか」のような文は、翻訳すると「確認できますか」という能力を尋ねる文になったり、遠回しすぎてお願いだと伝わらなかったりします。日本語では丁寧さの合図だったものが、別の言語では別の意味を持ってしまうのです。

興味深いことに、この点は国のガイドラインも先回りして注意しています。出入国在留管理庁と文化庁が2020年8月に公表した「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」には、機械翻訳にかけられる可能性を意識して、ふりがなを付けない版もあわせて用意するようにという趣旨の記述があります。ふりがなが混じった日本語は、機械翻訳がうまく扱えないからです。翻訳を前提にするなら、渡す日本語の側を整えておく必要がある——これは国の公式文書が10年近く前から言っていることなのです。

翻訳AIを使うなら「日本語+訳文」を並べて出す

訳文だけを渡すと、相手は日本語を覚える機会を失います。逆に日本語だけでは伝わりません。おすすめは、やさしい日本語に直した文と、母語に訳した文を上下に並べて渡すやり方です。相手は訳文で意味を取り、日本語のほうで言葉を覚えます。半年もすると、日本語だけで通じる範囲が目に見えて広がります。翻訳の使い方の基本はAIでビジネス翻訳を安全に行う方法にまとめました。

当の本人が望んでいたのは「やさしい日本語」だった

先ほどのガイドラインには、受け手である外国人自身に聞いた調査の結果も紹介されています。ここが、この記事でいちばん意外な部分かもしれません。

ひとつは、生活に関する調査です。「日常生活に困らない言語」として日本語を挙げた外国人が約63%にのぼり、英語と答えた44%を大きく上回りました。日本に住む外国人は多国籍化しており、英語が母語でも得意でもない人が多数派です。「外国人向け=英語」という思い込みは、実態と合っていません

もうひとつは、東京都国際交流委員会が2018年3月に実施した、在住外国人100人への聞き取り調査です。ガイドラインが紹介しているところによれば、希望する情報発信の言語として最も多く選ばれたのは「やさしい日本語」で76%。英語が68%、通常の日本語が22%と続き、「機械翻訳された母語」を選んだ人は12%にとどまりました。回答者100人の調査なので数字そのものは幅を持って読むべきですが、傾向は明確です。相手は、翻訳された文章よりも、分かりやすい日本語を望んでいる。

理由を想像するのは難しくありません。職場では、書かれた連絡文だけでなく、その場の会話も飛び交います。日本語で受け取れる範囲が広がったほうが、結局は働きやすい。そして翻訳された文章は、目の前の日本人と共有できません。やさしい日本語は、外国人だけでなく、日本人同士にも通じる共通の土台なのです。高齢の従業員や、入ったばかりのアルバイトにも同じ効果があります。

伝わらない指示と、伝わる指示

具体的に何を直すのか。よくある言い回しを、伝わる形に置き換えてみます。

伝わらない指示と伝わる指示の対比。なるべく早めには今日の17時まで。結構ですはしなくていいです。ご確認願いますは確認してください。9時ごろ来ますは9時30分に来ます。
図2|伝わらない指示と、伝わる指示

並べてみると、直している内容は三つに集約されます。第一に、あいまいな言葉を数字に置き換えること。「早めに」を「17時まで」に、「9時ごろ」を「9時30分」にします。第二に、敬語を丁寧語だけにすること。「ご確認願います」は「確認してください」で十分に丁寧です。第三に、何をするのかを動詞で書き切ること。「対応をお願いします」ではなく「箱を3階に運んでください」と書きます。

この置き換えは、冷たい命令に聞こえるのではないかと心配されることがあります。実際にはその逆です。あいまいな指示のほうが、失敗したときに相手を責めることになります。何時までかを言わずに「早めに」と伝え、翌日になってから怒るより、最初に「17時まで」と言うほうがずっと親切です。丁寧さは敬語の量ではなく、相手が困らないかどうかで測るものだと考えてください。

国のガイドラインが挙げる、書き換えの要点

「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」は、出入国在留管理庁と文化庁が2020年8月にまとめたもので、誰でも無料で読めます。国や自治体のお知らせ文を想定して作られていますが、企業で使われることも期待すると本文に明記されており、そのまま職場に持ち込めます。書き言葉に焦点を当てている点も、連絡文やマニュアルを作る現場と相性がよいところです。

ガイドラインは、書き換えを3つのステップに分けています。ステップ1は「日本人にわかりやすい文章にする」。ステップ2は「外国人にもわかりやすい文章にする」。ステップ3は「わかりやすさを確認する」です。ステップ1が先に来ているのが大事なところで、まず日本人が読んでも分かりにくい文を、日本語のまま整理するという順番になっています。

具体的な要点として、ガイドラインは次のような項目を挙げています。実際に手を動かすときの目安になります。

  • 一文は短くする。一文に言いたいことは一つだけにする
  • 三つ以上のことを言うときは、接続詞でつながず箇条書きにする
  • 外来語(カタカナ語)は、他に適切な日本語がない場合だけ使う
  • 「ごろ」「くらい」などのあいまいな表現、推測の表現は避ける
  • 二重否定、受け身、使役はできる限り使わない
  • 尊敬語・謙譲語は使わず、敬語は丁寧語だけにする
  • 元号ではなく西暦を使い、時間は「○時から○時まで」と書く
  • 漢字にはふりがなを付け、ローマ字表記は使わない
  • 言い換えが難しい重要な言葉は残し、あとに説明を付ける

最後の項目は現場で効きます。「棚卸」「有給」「三六協定」のような言葉は、無理にやさしく言い換えると、かえって本人が制度を理解できなくなります。重要な言葉はそのまま使い、直後にかっこ書きで説明を添える。これがガイドラインの推奨する扱いです。

AIで「やさしい日本語」をつくる4ステップ

ここまで読んで、「そんなに気をつけることが多いなら、毎回書くのは無理だ」と思われたかもしれません。そのとおりです。人が全部覚えて実行するのは現実的ではありません。だからこそAIの出番です。

AIで伝わる文にする4歩。1.いつもの文を貼る。2.やさしい日本語に直させる。3.日本語と訳文を並べる。4.本人に確かめる。
図3|AIで「やさしい日本語」をつくる4ステップ

第1歩:いつもどおりの日本語で書く

最初から気をつけて書こうとしないでください。敬語だらけでも、一文が長くてもかまいません。普段どおりに書いた文を、そのままAIに貼り付けるのが正解です。ここで時間をかけると続きません。

第2歩:AIにやさしい日本語へ直させる

次の章のプロンプトを貼り、続けて自分の文を貼ります。AIは一文を短く割り、敬語を丁寧語に落とし、あいまいな語を指摘します。数字が抜けている箇所は勝手に埋めさせず、「要確認」と出させるのがコツです。締切や時刻をAIが推測で書いてしまうと、あいまいな指示より危険になります。

第3歩:日本語と訳文を上下に並べる

やさしい日本語ができたら、同じAIに母語への翻訳も頼みます。整理済みの日本語からの翻訳なので、精度も安定します。掲示や連絡アプリには、やさしい日本語を上、訳文を下にして両方を載せます。急ぎの安全指示だけは訳文を先に置く、といった使い分けもできます。

第4歩:本人に確かめる

ガイドラインのステップ3にあたる部分です。「わかりましたか」と聞かず、「何をしますか」と聞いてください。相手が自分の言葉で説明できれば伝わっています。答えに詰まった箇所が、次に直すべき言葉です。この確認を数回繰り返すと、自社の現場でつまずきやすい言葉の一覧が自然にできあがります。

そのまま使えるプロンプト

以下をコピーして、AIのチャット画面に貼り付けてください。角かっこの部分だけを自社の状況に置き換えます。

あなたは、日本の職場で外国人スタッフに情報を伝える文章を整える専門家です。出入国在留管理庁・文化庁の「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」の考え方に沿って、次の日本語を書き直してください。手順:(1)まず伝えるべき情報を整理し、不要な部分を削る (2)一文を短くし、一文に言いたいことを一つだけにする (3)三つ以上の項目は箇条書きにする (4)尊敬語・謙譲語は使わず、丁寧語(です・ます)だけにする (5)二重否定・受け身・使役表現をやめ、誰が何をするかを動詞で書く (6)外来語(カタカナ語)は、他に適切な日本語がない場合を除いて言い換える (7)元号ではなく西暦を使い、時間は「○時から○時まで」と書く。出力の形式:【やさしい日本語】書き直した本文/【要確認】元の文にあいまいな点(時刻・期限・数量・担当者など)があれば、勝手に補わず箇条書きで質問する/【残した専門用語】言い換えずに残した言葉と、その短い説明。条件:事実を足したり変えたりしないでください。日付・時刻・数量・金額・氏名は、元の文に書かれていないかぎり推測で書かないでください。相手の日本語レベルは[日常会話は少しできる/ほとんど分からない]、母語は[ベトナム語/インドネシア語など]、伝える場面は[作業指示/シフト連絡/安全注意/就業規則の説明]です。 ―――ここから元の文――― [いつもどおりに書いた日本語をそのまま貼る]

訳文まで欲しいときは、返ってきた結果に続けて「上の【やさしい日本語】を[母語]に翻訳してください。日本語と訳文を交互に並べてください」と送ります。二段階に分けるのは、日本語を整える工程と翻訳する工程を混ぜないためです。一度に頼むと、AIは翻訳しやすさを優先して日本語のほうを勝手に省略することがあります。

現場の5場面での使い分け

同じやさしい日本語でも、場面によって力の入れどころが変わります。

作業指示・手順書

写真や図と組み合わせるのが最も効果的です。ガイドラインも、イラストや図解、表を使って視覚的に分かりやすくすることを勧めています。スマートフォンで撮った工程写真に、やさしい日本語の一文を添えるだけで、口頭の説明が半分になります。

シフト・勤怠の連絡

ここは数字がすべてです。「来週から早番でお願いします」ではなく、「2026年8月17日(月)から、8時30分に来てください」と書きます。日付は西暦、曜日も併記、時刻は分まで。この三点を守るだけで、勤怠の行き違いはほとんど消えます。

安全・衛生の注意

命に関わる内容なので、伝わらなかったときの損失が最も大きい場所です。ここだけは、やさしい日本語と母語訳の両方を必ず掲示してください。加えて、実物を指さして口頭でも伝えます。文書だけで済ませないことが原則です。

就業規則・社会保険などの説明

専門用語を残したうえで説明を添える方式が向いています。「有給休暇(=給料をもらいながら休める日)」のように書きます。用語を消してしまうと、本人が役所や病院で困ります。覚えてもらうべき言葉は残す、という判断が要ります。

日々の声かけ

文書ではありませんが、いちばん回数が多いのがここです。「お疲れさま、今日どうだった」と聞いても、たいていは「大丈夫です」で終わります。「今日、むずかしかったことは何ですか」と聞けば、具体的な答えが返ってきます。はい・いいえで終わらない聞き方に変えるだけで、拾える情報の量が変わります。慣れるまでは、朝の一言をAIに何案か出してもらってかまいません。

AIに任せてはいけない場面

便利な一方で、線を引いておくべきところがあります。

個人情報を入れないこと。在留カードの番号、パスポートの情報、住所、給与額、家族構成。これらをAIのチャット画面に貼り付けてはいけません。書き換えを頼むときは、氏名を「Aさん」に置き換え、金額や番号は伏せ字にします。入れてよい情報と悪い情報の線引きはAIに入力してはいけない情報にまとめています。

法律・在留資格の判断をさせないこと。「この作業をやらせてよいか」「この在留資格で残業できるか」といった質問にAIは流ちょうに答えますが、その答えを根拠に運用してはいけません。在留資格で認められた活動の範囲を超えると、本人にも会社にも重い結果が及びます。判断は必ず、行政書士・社会保険労務士や出入国在留管理庁の窓口に確認してください。

叱責や解雇の通知を任せきりにしないこと。AIが整えた文は、丁寧ですが体温がありません。相手の生活がかかる話は、やさしい日本語で下書きを作ったあと、必ず対面で、通訳や同僚を交えて伝えます。書面は理解のために、対面は納得のために使うと考えると分かりやすいはずです。

訳文をそのまま信じないこと。翻訳の誤りは、日本語側からは見えません。重要な掲示は、日本語が分かるスタッフに逆方向で確かめてもらうか、訳文をもう一度日本語に戻して読んでみます。この逆翻訳の手順は、翻訳を扱う記事でも基本として紹介されているやり方です。

やりがちな三つの失敗

失敗1:英語で書けばよいと考える。先に見たとおり、日本に住む外国人にとって英語は共通語ではありません。ベトナム語、中国語、フィリピノ語、インドネシア語、ネパール語と多岐にわたります。英語版だけを用意して安心してしまうのが、いちばん多い失敗です。

失敗2:子ども扱いになる。やさしい日本語は、幼児語ではありません。「ごはん、たべる?」のような崩し方は、相手の尊厳を損ないます。文は短くしても、丁寧語は保つ。「してください」で終える、ふつうの大人の日本語が正解です。

失敗3:一度作って終わりにする。手順もシフトも変わります。古い掲示が貼られたままだと、次からは誰も掲示を読まなくなります。更新しない掲示は、無いほうがましなこともあります。AIを使えば書き直しは数十秒なので、変わったらその日のうちに差し替える運用にしてください。

今日から確認する5項目

自社の状態を、次の5点で点検してみましょう。

  • 掲示や連絡文に「なるべく」「早めに」「ごろ」が残っていないか
  • 時刻・期限・数量が、すべて数字で書かれているか
  • 尊敬語・謙譲語をやめ、丁寧語だけにしてあるか
  • 安全に関わる内容は、やさしい日本語と母語訳の両方があるか
  • 「わかりましたか」ではなく「何をしますか」で確認しているか

まずは、いちばんよく使う掲示を1枚だけ選んでください。それをAIに直させて貼り替え、相手の反応を見る。うまくいったら次の1枚に進みます。全部を一度に直そうとすると、確実に途中で止まります

よくある質問(Q&A)

やさしい日本語に直すと、失礼になりませんか。

敬語を減らすことと、失礼になることは別です。丁寧語(です・ます)を保っていれば、日本語として十分に礼儀正しい文になります。むしろ、伝わらないまま相手に失敗させることのほうが、相手を大切にしない扱いです。国のガイドラインも、やさしい日本語は日本語の美しさや豊かさを軽視するものではないと明記しています。

翻訳アプリがあれば、やさしい日本語は要らないのでは。

翻訳は必要ですが、順番が逆だとうまくいきません。あいまいな日本語を訳しても、あいまいな訳文にしかならないからです。整えた日本語からの翻訳は精度も安定します。また、東京都国際交流委員会の調査では、希望する情報発信の言語として機械翻訳された母語を選んだ人は12%にとどまり、やさしい日本語の76%を大きく下回りました。両方を並べて出すのが、いちばん確実です。

日本人の従業員には、かえって回りくどく感じられませんか。

実際にはその逆の反応が多く返ってきます。時刻や数量が明記された指示は、日本人にとっても読みやすいからです。やさしい日本語は、新人・パート・高齢の従業員にもそのまま効きます。外国人スタッフのための特別対応ではなく、社内の連絡文全体の品質を上げる取り組みとして始めると、社内の理解も得やすくなります。

まとめ

  • 外国人を雇う事業所の63.1%は従業員30人未満。小さな職場こそ、伝え方の工夫が要る。
  • 翻訳AIの前に、元の日本語を直す。あいまいな日本語からは、あいまいな訳文しか出ない
  • 国のガイドラインの3ステップをAIで回し、やさしい日本語と訳文を並べて渡すのが最短。

外国人スタッフとのすれ違いは、たいてい「言葉の壁」と呼ばれます。しかし数字と国の資料をたどっていくと、壁の位置は少しずれたところにありました。壁は日本語と外国語の間ではなく、あいまいな日本語と、はっきりした日本語の間にあったのです。そして、そのはっきりした日本語を作る作業は、いまやAIが数十秒で肩代わりしてくれます。通訳を雇う前に、掲示を1枚書き直してみてください。変わるのは相手ではなく、こちらの伝え方のほうです。

無料資料:AI業務改善チェックリスト

AIの使いどころと、人が確認すべき場面を整理しましょう。

筆者コメント

ある食品工場で、掲示が一枚だけ書き替えられていました。元は「異物混入防止のため、作業前に必ず手指の消毒を実施してください」。書き替え後は「作業のまえに、手をアルコールで消毒してください」。たったこれだけの違いですが、掲示の前で立ち止まる人が増えたそうです。読める掲示は読まれる。読めない掲示は、貼ってあっても存在しないのと同じでした。

取材のなかで印象に残ったのは、その工場の担当者の一言です。書き替えを始めてから、日本人のパート従業員からも「前より分かりやすくなった」と言われた、と。誰か一人のために整えた言葉は、たいてい全員のためになります。AIは、その手間をほとんどゼロにしてくれる道具です。使う理由としては、それだけで十分だと思います。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

── AutoAIPlatform編集部

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。