AIの答えを確かめている人は4割に届かない

総務省の令和8年版情報通信白書「リスク意識」は、AIを使うときに気を付けていることを4か国で尋ねています。日本で最も多かったのは「生成内容が正しいか、他の方法で確認している」で38.2%でした。

生成AIの利用者のうち、生成内容が正しいか他の方法で確認している人の割合(国別)。日本38.2%、米国35.6%、ドイツ35.6%、中国44.7%。総務省 令和8年版情報通信白書より。
図1|生成内容を他の方法で確認している人

米国とドイツは35.6%、中国は44.7%です。日本だけが特に低いわけではありません。気になるのは、気を付けていることが「特にない」と答えた日本の人が24.6%いた点です。米国は12.1%、中国は2.1%でした。

不安が無いわけではありません。同じ調査で、「AIの回答が事実ではない」ことをリスクと感じる日本の人は69.3%に上ります(「非常に」34.8%と「どちらかと言えば」34.5%の合計)。心配はしているのに、確かめる習慣が追いついていない状態です。

会社も「精度」を心配しているが、ルールは少ない

企業への調査も同じ傾向です。白書の「懸念されるリスク及びリスク対策のための取組状況」では、日本企業の懸念の1位は情報漏えいで46.4%でした。2位が「出力結果の精度に問題がある」で35.3%です。

一方で、対策の差は規模で開きます。全社的な指針やガイドラインを整えている会社は、大企業44.9%に対し中小企業29.1%でした。中小企業の24.1%は、特に施策を実施していないか把握していないと答えています。

小さな会社で資料を作るのは、たいてい1人です。別の人が数字を見直す工程がないので、AIの間違いがそのまま外に出やすくなります。だからこそ、作った本人が確かめる手順を持つことが大切です。ルール全体の作り方は社員向けAI利用ルールの作り方で扱っています。

AIの数字がずれる4つの型

AIの数字の間違いは、でたらめに起きるわけではありません。多いのは次の4つの型です。型を知っておくと、どこを疑えばよいかが分かります。

表1|AIの数字がずれる4つの型と確かめ方
型よくある例確かめる点
年次のずれ数年前の数字を「最新」と書く調査の実施年と公表日
範囲のずれ大企業を含む数字を中小企業の話に使う調査の対象と規模の区分
出典の取り違え民間調査の数字を国の調査と書く調べた機関の名前
存在しない数字もっともらしい割合を作ってしまう元の資料に同じ数字があるか

最も危ないのは4つ目です。AIは文章を自然につなげる仕組みなので、資料に無い数字でも、それらしく書いてしまうことがあります。元の資料で同じ数字が見つからなければ、使わないのが原則です。

2つ目の「範囲のずれ」も見落としやすい型です。同じ白書でも、個人への調査と企業への調査があります。企業の調査はさらに大企業と中小企業に分かれます。「日本企業の○%」と書かれた数字が、自社と同じ規模の数字とは限りません。

確かめる先は「国の統計」と「白書」

数字の確かめ先として最も頼れるのは、国がつくる統計です。統計法は第1条で、公的統計を「国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報」と定義しています。作り方や公表の仕方が法律で決まっているため、出典として安心して使えます。

中でも重要な統計は「基幹統計」と呼ばれます。総務省の基幹統計一覧では合計54の統計が並び、国勢調査、労働力調査、毎月勤労統計、法人企業統計などが含まれます。

探す入口は2つ覚えれば足ります。1つは政府統計の総合窓口(e-Stat)で、各省の統計がまとまっています。もう1つは各省の白書です。白書は統計を読み解いた文章と図があり、初めてでも読みやすいのが利点です。

総務省の情報通信白書は、図ごとに元の数値をExcelやCSVで公開しています。グラフの目盛りから読み取る必要はありません。小数点まで正確な数字を、表の形でそのまま確かめられます。

数字の確認、AIと人の分担

AIは確認の手間を減らす道具としても使えます。ただし、「この数字は正しいですか」とAIに聞き返すだけでは確認になりません。同じAIが同じ間違いを繰り返すことがあるからです。

出典のリンクを付けて答えるAIも増えました。それでも、リンク先に同じ数字が書かれているとは限りません。リンクが付いていることと、中身が合っていることは別の話です。リンク先を開いて、該当の文や表を自分の目で見つけるまでが確認です。

数字の確認の分担。AIに任せるのは、文中の数字を抜き出す、出典の候補を挙げる、探す言葉を考える、表の形に整える。人が担うのは、元の資料を開く、年と対象を確かめる、同じ数字か見比べる、使うかどうか決める。
図2|探すのはAI、見比べて決めるのは人

AIに任せるのは、文章から数字を抜き出して一覧にする作業です。人は、元の資料を自分で開き、同じ数字が同じ意味で書かれているかを見比べます。最後に使うかどうかを決めるのも人です。確認全般の考え方はAIの回答をそのまま使ってはいけない理由と確認手順も参考になります。

1つの数字を5分で裏取りする4手順

1つの数字を5分で裏取りする4手順。1.数字と出典を一覧にする。2.元の資料を開く。3.年と対象を確かめる。4.出典を資料に書く。
図3|1つの数字を裏取りする4歩

手順1で、AIに文中の数字と出典の候補を一覧にさせます。手順2では、候補の資料を自分で開きます。AIが示したリンクが開けないときは、資料名でe-Statや省庁のサイトを検索します。資料が見つからない数字は、この時点で外します。

手順3で、調査の年と対象を確かめます。たとえば白書の企業調査は、大企業と中小企業で数字が分かれています。手順4で、資料に出典を書き込みます。書いておけば、次に使う人が同じ確認をしなくて済みます。

例として、この記事の冒頭の数字を確かめてみます。資料名「令和8年版情報通信白書」で検索し、「リスク意識」のページを開きます。図のCSVを開くと、日本の行に同じ数字が書かれています。対象は生成AIを使ったことがある個人で、企業の数字ではないことも分かります。ここまで数分で済みます。

数字の一覧を作らせるプロンプト

AIが書いた文章を貼り付け、次の文を送ってください。社外秘の数字や顧客名が含まれる文章は、先に伏せてから貼ります。

あなたは中小企業の資料づくりを手伝う確認係です。次の文章に出てくる数字をすべて抜き出し、表にしてください。 表の列:数字/その数字が表す内容/出典として考えられる資料名/調査の年/対象(例:全企業、中小企業、個人) 条件1:出典が分からない数字は、推測で資料名を書かず「出典不明」と書いてください。 条件2:調査の年が分からない場合も「不明」と書いてください。 条件3:国の統計や白書で確かめられそうな数字には、探すときの検索語を添えてください。 文章:[ここに貼り付け]

条件1が最も大切です。この指示が無いと、AIは実在しそうな資料名を作ってしまうことがあります。「出典不明」と出た数字は、資料から外すか、自分で探し直します。

社内資料に「出典欄」を1行足す

手順を人の注意だけに頼ると、忙しい時期に抜けます。そこで、提案書や報告書のひな形に「出典」の欄を1行足すことをおすすめします。資料名、年、ページやURLを書く欄です。

欄があれば、書けない数字に作った本人が気づけます。上司が確認するときも、出典欄が空の数字だけを見ればよいので短時間で済みます。お客様に出す資料ほど、この1行が信用を守ります。

数字のほか、法律の条文や制度の開始日も同じ扱いにします。日付と金額は、AIの答えより元の資料を優先すると社内で決めておけば、判断に迷いません。

出典欄には、資料名と一緒に公表された年も書きます。統計は毎年のように新しい版が出るためです。年が書いてあれば、古くなった数字を後から見つけて差し替えられます。

よくある質問(Q&A)

AIが出した数字って、どこで確かめればいいの?

まずは政府統計の総合窓口(e-Stat)と、各省の白書です。資料名で検索し、元の資料に同じ数字があるか、何年の調査か、誰を対象にした調査かを確かめてください。

AIに「この数字は本当?」って聞き直すだけじゃダメ?

それだけでは不十分です。同じAIが同じ間違いを繰り返すことがあります。AIには数字と出典候補の一覧づくりを任せ、元の資料は必ず人が開いて見比べてください。

出典が見つからない数字は、使っちゃいけないの?

社外に出す資料では使わないのが安全です。どうしても必要なら「目安」と明記し、確かめられた数字に置き換えるまで仮の扱いにします。見つからない数字は、存在しない可能性もあります。

まとめ

  • 生成内容を他の方法で確認している日本の利用者は38.2%。「特にない」も24.6%いる。
  • AIの数字は年次・範囲・出典・存在の4つの型でずれる。e-Statと白書で確かめる。
  • AIには数字の一覧づくりを任せ、元の資料を開いて見比べるのは人が担う。

まずは、次に作る提案書の数字を1つだけ選び、元の資料まで戻ってみてください。確かめる手順は、一度やれば次から迷わなくなります。

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AIの使いどころと、人が確認すべき場面を整理しましょう。

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。