カタカナ語を「分かりにくい」と感じる人たち

文化庁は毎年、国語に関する世論調査を行っています。令和6年度の調査は全国の16歳以上が対象で、3,498人が回答しました。その中に、カタカナ語を交えて話したり書いたりすることの印象を聞く質問があります。

カタカナ語を交えて話したり書いたりすることの印象。別に何も感じない48.3%、どちらかと言うと好ましくない28.8%、どちらかと言うと好ましい21.8%。文化庁 令和6年度 国語に関する世論調査。
図1|カタカナ語を交えた話し方・書き方の印象

結果は「別に何も感じない」が48.3%、「どちらかと言うと好ましくない」が28.8%でした。好ましくない理由の1位が、冒頭の「分かりにくい」です。年代別では、60代以上で好ましくないと感じる人が多い傾向も出ています。

同じ調査では、自分の言葉遣いに気を使っている人が80.9%いました。そのうち57.3%が「年齢が離れた人に意味が通じるように発言する」と答えています。気を配っている人は多いのに、AIの文章はその目をすり抜けやすいのです。

AIの下書きにカタカナ語が増える理由

生成AIは、大量の文章から言葉の使い方を学んでいます。企画書や営業資料の文章には、カタカナ語が多く使われがちです。「提案書を書いて」と頼めば、提案書らしい言葉が並ぶのは自然なことです。

たとえば、お得意様への新サービスの案内をAIに頼んだとします。返ってきた下書きに「お客様の課題に最適なソリューションを、新しいスキームでご提供します」とあれば、要注意です。直すと「お困りごとを解決する新しい仕組みをご用意しました」になります。意味は同じで、読む人を選びません。

頼む側にも理由があります。社内でふだん「アジェンダ」「タスク」と言っていれば、AIの文章に出てきても違和感がありません。書き手が読み慣れた言葉ほど、見落とします。

国立国語研究所は約20年前、白書や新聞のカタカナ語を調べ、その使われ方を「書き手の使いやすさを優先している」ように見えると指摘しました。AIが書く文章でも、同じことが起きやすいと考えておくのが安全です。

国の研究所が示した言い換えの目安

その国立国語研究所がまとめたのが「外来語」言い換え提案です。2003年から2006年まで4回に分けて、176語の言い換え方を示しました。語ごとに、意味を理解している人の割合を4段階の星印で表しています。

いちばん低い段階は、理解している人が国民の4人に1人に満たない語です。ビジネス文書でよく見る言葉にも、この段階の語が並びます。

表1|AIの下書きに出やすい語と、言い換え例
カタカナ語当時の理解度言い換え例
ソリューション4人に1人未満問題解決
スキーム4人に1人未満計画
コンセンサス4人に1人未満合意
アジェンダ4人に1人未満検討課題、議題
タスク4人に1人未満作業課題
スキル2人に1人未満技能
ガイドライン4人に3人未満指針

理解度は当時の調査にもとづくもので、今は「スキル」のように定着が進んだ語もあります。それでも、読み手に通じるかを考えるときの目安としては十分に使えます。

言い換える・説明する・そのまま使う

国の文書の書き方をまとめた「公用文作成の考え方」は、2022年1月7日に文化審議会が建議したものです。分かりやすく書くための心得として、「専門用語や外来語をむやみに用いないようにし、読み手に通じる言葉を選ぶ」と明記しています。

カタカナ語の3つの扱い方。1.言い換える(議題・計画・合意など)。2.説明を添える(かっこで短く意味を足す)。3.そのまま使う(定着した語と商品名)。公用文作成の考え方の整理。
図2|カタカナ語の3つの扱い方

同じ資料は、外来語を性質で分けて扱うよう示しています。「ストレス」「ボランティア」のように定着した語は、そのまま使ってかまいません。「アジェンダ」は議題、「サプライヤー」は仕入先のように、日常の言葉へ言い換えられる語は言い換えます。

言い換えにくい語には、かっこで短い説明を添えます。全部を和語にする必要はなく、仕分けることが大切です。この3分類は、そのままAIへの指示にも使えます。

読み手の年代と関係で、直す量を変える

言い換え提案は、国民全体とは別に60歳以上の理解度も示しています。全体では定着している語でも、この年代では低い段階にとどまる語があるためです。「インパクト」「ケア」はその例として挙げられています。

社内の若手どうしのチャットなら、多少のカタカナ語は問題になりません。一方、お客様への案内、取引先への依頼、社外に出る文書は、直す量を増やします。高齢のお客様向けの文面は高齢のお客様に届く案内文の整え方も参考になります。

社内でも油断はできません。現場の職人さんやパートの方に向けた連絡に「タスクのプライオリティ」と書けば、「作業の優先順位」と書くより伝わるまでに時間がかかります。読み返してもらう手間は、そのまま作業の遅れになります。

迷ったら、相手が声に出して読み上げたときに意味が通るかで判断します。読み上げて伝わらない語は、紙でも伝わっていません。

送る前にAIと直す4手順

送る前にAIと直す4手順。1.読み手をAIに伝える(年代と関係を書き添える)。2.カタカナ語を抜き出す(一覧にして数を見る)。3.3つに仕分けて直す(言い換え・説明・そのまま)。4.人が読み直して送る(意味がずれていないか)。
図3|送る前にAIと直す4歩

手順1では、読み手が誰かをAIに伝えます。「70代の常連のお客様」「初めて取引する会社の担当者」のように、年代と関係を書き添えるだけで、選ぶ言葉が変わります。

手順2で、文中のカタカナ語を一覧にさせます。数が見えると、直す量の見当がつきます。手順3では、先の3分類で仕分けて直させます。手順4は人の仕事です。意味がずれていないか、相手の顔を思い浮かべて読み直します。

直した結果は、社内の「言い換え表」として残しておくと便利です。よく出る語と、自社で決めた言い換えを表にしておきます。次からは、その表をプロンプトと一緒にAIへ渡すだけで、誰が頼んでも同じ言葉にそろいます。担当者が変わっても、お客様に届く言葉がぶれません。

そのまま使える言い換えのプロンプト

AIで作った下書きを、次の文と一緒に貼り付けてください。角かっこの中は自社に合わせて書き換えます。

あなたは、分かりやすい日本語に詳しい編集者です。次の文章を、[読み手:例 70代の常連のお客様]に送ります。 1. 文中のカタカナ語をすべて抜き出し、表にしてください。 2. それぞれを「言い換える」「説明を添える」「そのまま使う」に分け、理由を1行で書いてください。 3. 分けたとおりに直した文章を示してください。 条件:商品名・会社名・法律の用語は変えない。意味が変わりそうな語は直さず「要確認」と書く。敬語の丁寧さは今のまま保つ。 文章:[ここに貼る]

表を先に出させるのが要点です。直した文だけを見ると、どこを変えたか分からなくなります。AIの答えを確かめる手順はAIで作った文章を人間が直すべき3つのポイントにまとめています。

言い換えで失敗しないための3つの注意

1つ目は、文脈で言い換え語が変わることです。言い換え提案でも「インセンティブ」は、場面により「意欲刺激」「奨励金」「優遇措置」と分けています。AIの言い換えは、一つの語に一つの訳を当てがちなので、手順4で確かめます。

たとえば社員向けの「インセンティブ制度」は、報酬の話なら「奨励金の制度」、やる気の話なら「意欲を高める仕組み」です。どちらの意味かは、書いた会社にしか分かりません。

2つ目は、やりすぎです。すべてを和語にすると、かえって回りくどくなります。「メール」「パソコン」まで直す必要はありません。3つ目は、固有の名前を変えないことです。商品名や制度の正式名は、そのまま残します。

よくある質問(Q&A)

ChatGPTの文章がカタカナ語だらけになるのは、どうすれば防げますか?

頼むときに読み手の年代と関係を書き添え、「カタカナ語は日常の言葉に言い換えて」と一言足すのが効きます。それでも残る語は、書き上がったあとに一覧で抜き出させて直します。

カタカナ語は全部、日本語に言い換えたほうがいいですか?

いいえ。「ストレス」のように定着した語や、商品名はそのまま使います。言い換える、説明を添える、そのまま使うの3つに分けるのが、公用文作成の考え方にも沿ったやり方です。

どのカタカナ語がお客様に通じないのか、どうやって見分けますか?

国立国語研究所の言い換え提案が目安になります。相手が声に出して読み上げて意味が通るかも、よい判断の基準です。高齢の方に送る文書は、とくに多めに直します。

まとめ

  • カタカナ語を好ましくないと感じる人の64.1%が、理由に「分かりにくい」を挙げた(文化庁 令和6年度調査)。
  • AIの下書きには書き手が読み慣れたカタカナ語が入りやすい。送る前に一覧で抜き出して確かめる。
  • 言い換える・説明を添える・そのまま使うの3つに仕分け、最後は人が読み直して送る。

次にAIで案内文を作ったら、送る前に1分だけ、カタカナ語に印を付けてみてください。その印の数が、読み手との距離です。

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著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。