取得率は過去最高、でも業種と規模で差がある

厚生労働省の令和7年就労条件総合調査の概況によると、2024年の1年間に会社が与えた有給は1人平均18.1日でした。そのうち実際に取った日数は12.1日、取得率は66.9%です。どちらも1984年以降で最も高い数字です。

会社の規模別に見ると差が出ます。1,000人以上の会社は69.0%ですが、30〜99人の会社は64.9%にとどまります。調査の対象は30人以上の会社なので、もっと小さな職場の実態はこの数字より厳しい可能性があります。

休日の数そのものにも差があります。同じ調査で、1年間の休日の平均は1,000人以上の会社が117.7日でした。調査で最も小さい区分の会社は111.2日で、約6日少ない計算です。休みが少ない職場ほど、有給を取る意味は大きくなります。

産業別の年次有給休暇取得率(2024年)。全体66.9%、建設業60.7%、卸売業・小売業59.9%、生活関連サービス業・娯楽業59.6%、宿泊業・飲食サービス業50.7%。厚生労働省 令和7年就労条件総合調査より。
図1|取得率が低い業種(2024年)

業種別では、宿泊業・飲食サービス業が50.7%で最も低くなりました。卸売業・小売業は59.9%、建設業は60.7%です。店や現場のように、決まった人がその場にいないと回らない仕事ほど低い傾向があります。

休めない理由は「気兼ね」と「代わりがいない」

国も休みにくさの理由を認めています。厚生労働省のパンフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」は、取得率が低い理由として「同僚への気兼ねや請求することへのためらい」があると明記しています。

小さな会社では、気兼ねの中身がはっきりしています。自分しか知らない段取りがあり、休むと同僚が困るという状況です。お客様ごとの約束事、請求の締め日、機械のくせ。どれも本人の頭の中にしかありません。

ここにAIの出番があります。AIは休暇の制度を変えられません。ただ、頭の中の段取りを聞き出し、読める文章に整える作業は得意です。代わりの人が迷わず動ければ、休む側の気兼ねは小さくなります。

受け持つ側にも利点があります。メモがあれば、本人に確認できない不安を抱えずに済みます。お互いの休みを支え合う形にすると、頼みにくさも減ります。

年5日の取得義務と、会社が選べる3つの方法

2019年4月から、年10日以上の有給がある人には、会社が年5日を必ず取らせる義務があります。パートや管理職も対象です。違反すると、労働基準法により1人につき30万円以下の罰金の対象になります。

会社は有給の管理簿を作り、3年間保存する必要もあります。管理簿は、システムで管理して必要なときに出力できる形でも構いません。取らせ方は3通りあり、組み合わせても構いません。

表1|有給を年5日取ってもらう3つの方法
方法日を決める人必要な手続き向いている職場
本人の請求社員本人特になし代わりの人がいる
会社の時季指定会社(本人の意見を聞く)就業規則への記載取らない人が多い
計画的付与労使で事前に決める労使協定一斉に休める

計画的付与の制度がある会社は40.8%です。どの方法でも、休む日に誰が仕事を受け持つかは決めておく必要があります。規則の整え方は就業規則はAIで作れるかで扱っています。

社員への案内文もAIで下書きできます。「今年度の取得予定を来月までに教えてください」といった依頼文です。日数の計算や対象者の判定は、AIに任せず管理簿で確かめます。

引き継ぎメモ、AIと人の分担

引き継ぎメモが書かれない一番の理由は、白紙から書くのが面倒だからです。休む前は仕事を片づけるのに忙しく、メモは後回しになります。AIは、この最初の一歩を肩代わりできます。

引き継ぎメモの分担。AIに任せるのは、質問を投げて聞き出す、話した内容を表に整える、抜けている項目を指摘、代わりの人向けに言い換え。人が担うのは、何を任せるかを決める、判断の基準を話す、連絡先と期限の確認、代わりの人と読み合わせ。
図2|書くのはAI、決めて確かめるのは人

AIに「引き継ぎメモを作るので、質問してください」と頼むと、確認すべき点を順に聞いてきます。答えを話すだけで、表の形にまとまります。スマホの音声入力を使えば、移動中でも進められます。

作ったメモは、共有フォルダなど決まった場所に置きます。休みのたびに作り直さず、同じファイルを直していく形にします。ただし、何を任せて何を休み明けに回すかは、本人と上司が決めます。判断の線引きは、AIに決めさせません。

引き継ぎメモに書く5つの項目

長いマニュアルは要りません。代わりの人が迷うのは、次の5点です。

1つ目は、休み中に起きる予定です。納品日、締め日、来客など、日付が決まっているものを並べます。2つ目は、決まった連絡先です。取引先の担当者と、社内で相談できる人を書きます。

3つ目は、判断の基準です。「1万円までの値引きは受けてよい」のように、数字で書ける基準は数字で書きます。4つ目は、やらなくてよいことです。休み明けに本人がやる仕事を明記すると、受け持つ側の負担が減ります。

5つ目は、困ったときの逃げ道です。「迷ったら返事を翌営業日まで待ってもらう」と書いておけば、休暇中の本人に電話をかける必要がなくなります。5点がそろえば、A4用紙1枚ほどに収まります。長くなったら、休み中に起きない仕事を削ります。手順書の整え方はAIで社内マニュアルを整理する方法も参考になります。

休む前の1週間でやる4手順

休む前の1週間でやる4手順。1.休む日を早めに共有。2.AIの質問に答える。3.代わりの人と読み合わせ。4.休み明けに直す。
図3|休む前の1週間でやる4歩

手順1で休む日を1週間以上前に共有し、手順2でAIの質問に答えてメモの下書きを作ります。手順3では、代わりの人と10分ほど読み合わせます。読んだ人が質問したところが、メモの足りない部分です。

手順4は休み明けです。困った場面を聞いて、メモに書き足します。一度作ったメモは、次の休暇でもそのまま使えます。回を重ねるほど、仕事が特定の人に偏らなくなります。長く残すノウハウはベテランのノウハウをAIの聞き取りで残す方法で扱っています。

引き継ぎメモを作るプロンプト

次の文の角かっこを置き換えて、AIに送ってください。お客様の氏名や電話番号は入れず、「A社の担当者」のように書き換えます。

あなたは中小企業の業務の引き継ぎを手伝う専門家です。私は[日付]から[日数]日間、有給休暇を取ります。代わりの人が迷わず仕事ができるように、引き継ぎメモを作りたいです。 私の仕事:[職種・担当している業務] 代わりの人:[経験年数・普段の担当] 条件1:まず、私に質問を1つずつしてください。全部で10問以内にしてください。 条件2:質問が終わったら、「休み中の予定」「連絡先」「判断の基準」「やらなくてよいこと」「困ったときの対応」の5つの見出しで表にまとめてください。 条件3:専門用語は、入社1年目でも分かる言葉に言い換えてください。 条件4:私の答えから分からない部分は推測で埋めず、「要確認」と書いてください。

条件4は必ず残してください。AIが空欄をもっともらしく埋めると、代わりの人が誤った判断をします。入れてはいけない情報はAIに入力してはいけない情報で確認できます。

AIに任せるときの3つの注意

1つ目は個人情報です。お客様の名前や社員の健康のことは、AIに入れません。休む理由も書く必要はありません。有給の理由を会社に説明する義務は、もともとありません。

2つ目はAIの書き間違いです。日付や金額は、必ず本人が元の資料と照らして確かめます。3つ目はメモを休暇中の連絡の口実にしないことです。「分からなければ電話して」と書くと、休みになりません。困ったときの対応は、メモの中で完結させます。

よくある質問(Q&A)

小さい会社で代わりの人がいないんだけど、有給ってどうやって取らせればいい?

休む日を早めに決め、引き継ぎメモで仕事の中身を共有するのが第一歩です。締め日や納品日を避けて日を選ぶだけでも、受け持つ側の負担は下がります。年に一度、全員で休む日を決める計画的付与も選べます。

有給の年5日の義務って、パートさんにも関係ある?

あります。年10日以上の有給がある人は、パートでも対象です。週の勤務日数が少ない人は、与えられる日数自体が少なく対象外のこともあります。本人ごとの付与日数を管理簿で確かめてください。

引き継ぎメモをAIに作らせても、ちゃんと使えるものになる?

下書きとしては十分使えます。ただし判断の基準と連絡先は、本人が話した内容だけで作ることが前提です。AIには質問役と清書役を任せ、最後は代わりの人と読み合わせて確かめてください。

まとめ

  • 有給の取得率は66.9%で過去最高。ただし30〜99人の会社は64.9%で、店や現場の業種ほど低い。
  • 休めない理由は「気兼ね」と「代わりがいない」。仕事の中身を引き継ぎメモに出すと軽くなる。
  • AIには質問役と清書役を任せ、判断の基準と確認は人が担う。

国は過労死等の防止のための対策に関する大綱で、「年次有給休暇の取得率を70%以上とする」目標を2028年までと掲げています。まずは次に休む人と一緒に、AIで引き継ぎメモを1枚作ってみてください。

無料資料:AI業務改善チェックリスト

AIの使いどころと、人が確認すべき場面を整理しましょう。

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。