数字で見る、高齢のお客様の現在地

総務省統計局の「統計トピックスNo.146 統計からみた我が国の高齢者」によると、2025年9月15日時点の65歳以上人口は3,619万人です。総人口に占める割合は29.4%で過去最高でした。人口4,000万以上の38か国で比べても、日本の割合は最も高い水準です。

同じ資料は、この割合が2040年に34.8%まで上がると見込んでいます。お客様のおよそ3人に1人が高齢者という状態は、地域のお店や工務店、病院の近くの薬局では、もう日常の風景でしょう。

年代別のインターネット利用率。60代91.2%、70代71.9%、80歳以上37.1%。総務省の令和7年通信利用動向調査より。
図1|年代別のインターネット利用率(2025年8月末時点)

次にネットの利用状況です。総務省が2026年5月29日に公表した「令和7年通信利用動向調査の結果」では、インターネットを使う人の割合は60代で91.2%です。これが70代で71.9%、80歳以上では37.1%まで下がります。スマートフォンでネットを使う人は、70代で55.1%、その上の年代では21.7%でした。

伝わらない案内文に多い4つの型

数字が示すのは、ホームページやSNSだけの告知では、ネットを使わないお客様に届かないという事実です。最も高い年代では、利用しない人が6割を超えます。ただし、紙で配っても伝わらない案内文があります。原因は文面そのものにあり、よく見かける型は4つです。

1つ目はカタカナ語です。「エントリー」「キャンセルポリシー」は、言い換えれば「お申し込み」「取り消しの決まり」です。2つ目は画面が前提の手順です。「マイページから」「QRコードを読み取り」は、スマホを持たない人には入り口がありません。

3つ目は長い一文です。日時・場所・持ち物を1文に詰めると、読み返しても要点が拾えません。4つ目は、親切のつもりで書いた決めつけです。「ご高齢の方でも安心」という言葉が、かえって読む人を傷つけることがあります。

国の文章ルールから借りる3つの要点

手本になるのが、文化審議会が2022年1月7日に建議した「公用文作成の考え方」です。役所の文書向けですが、広く一般に向けた文章の書き方として、そのまま会社の案内に使えます。

要点の1つ目は、読み手の知識の水準です。同資料は、広く一般に向けた文書では「義務教育で学ぶ範囲の知識で理解できるように書くよう努める」としています。2つ目は文の長さで、50~60字ほどになったら読みにくくないか意識するよう勧めています。3つ目の要点は、三つ以上の情報を並べるときの箇条書きです。

「年配の方でも」は、ほめ言葉にならない

同資料の解説は、「年配の方でも簡単に申請できます。」という言い方には「高齢者は申請が苦手である」という考え方が隠れている、と明記しています。年齢を持ち出さず「手順は3つです」と事実だけを書くほうが、誰にとっても読みやすく、角も立ちません。

伝わらない案内と、伝わる案内

伝わらない案内と伝わる案内の対比。マイページから予約を、お電話でも受け付けますに。QRコードを読み取りを、紙の申込書もありますに。年配の方でも簡単を、手順は3つだけですに。なるべくお早めにを、10月31日(土)までに置き換える。
図2|伝わらない案内と、伝わる案内

直しているのは、入り口を1つ増やすこと、年齢に触れないこと、期限を日付で書くことの3点です。「お早めに」は、人によって明日にも来月にも読めます。曜日まで書けば、カレンダーと見比べて間違えにくくなります。

この書き換えは、高齢のお客様だけのためのものではありません。忙しい現役世代や外国人のお客様にも、同じように読みやすい文章になります。

届け方は1つに絞らない

「公用文作成の考え方」は、有効な手段・媒体を選び、読み手の利便性に配慮することも挙げています。案内文を整えたら、次はどの経路で届けるかを決めます。AIで作った1本の原稿を、媒体ごとに形を変えて配るのが効率的です。

表1|案内の届け方と、AIで整えること・人が確かめること
届け方届きやすい相手AIで整えること人が確かめること
ホームページ・SNS60代までの多く見出しと箇条書き日付・料金・リンク先
LINE・メール家族と連絡を取る高齢者200字以内の要約送る相手と配信の同意
はがき・チラシネットを使わない人大きな字の短い文面文字の大きさと電話番号
電話・店頭読むのが負担な人読み上げ用の台本聞き返されやすい言葉

LINEの行を入れたのには理由があります。前述の通信利用動向調査では、SNSを使う人の利用目的の最多は「従来からの知人とのコミュニケーション」で86.6%でした。家族とのやり取りに使っているアプリなら、高齢のお客様にも案内が届く見込みがあります。

AIで案内文を整える4手順

AIで案内文を整える4手順。1.いつもどおり書く。2.AIに言い換えさせる。3.届け方を2つ用意する。4.お客様役に読んでもらう。
図3|AIで案内文を整える4手順

手順1は、最初から気をつけて書こうとしないことです。いつもの文面で要件を出し切ります。手順2で次章のプロンプトを使い、AIに言い換えさせます。日付や金額が抜けていたら、AIに補わせず「要確認」と出させるのがコツです。

手順3では、同じ原稿から画面用と紙・電話用の2種類を作ります。手順4は、社内の年長の方やご家族に読んでもらう確認です。「わかりますか」ではなく、「この案内を読んで、何をしますか」と聞いてください。答えが食い違った箇所が、直すべき場所です。

社内に年長の読み手がいる会社は増えています。前述の統計局の資料では、2024年に働く高齢者は930万人で、21年連続の増加でした。就業者全体の13.7%にあたります。お客様向けに整えた文面は、社内の掲示や連絡にもそのまま効きます

そのまま使えるプロンプト

角かっこを自社の内容に置き換え、最後に元の案内文を貼り付けてください。

あなたは、わかりやすい日本語の専門家です。次の案内文を、70代・80代のお客様にも伝わる形に書き直してください。 お店・会社:[業種]/案内の目的:[予約の受付/営業時間の変更 など] 条件1:一文は50字以内にし、一文に言いたいことは一つだけにする。 条件2:カタカナ語は日本語に言い換える。言い換えにくい言葉は、かっこ書きで説明を付ける。 条件3:三つ以上の情報は箇条書きにする。日付は曜日も書く。 条件4:「ご高齢の方でも」など、年齢に触れる表現は使わない。 条件5:ホームページ以外の申し込み方法(電話・店頭・紙)を必ず書く。 条件6:私が書いていない日付・金額・電話番号は補わない。不足は「要確認」と書く。 条件7:最後に、電話で読み上げるための台本も作る。 元の案内文:

大事なのは条件6です。AIはもっともらしい日付や番号を作ることがあります。AIの文章を人が直すときの観点はAIで作った文章を人間が直すべき3つのポイントにまとめています。

AIに任せてはいけない3つのこと

1つ目は数字の最終確認です。料金・日付・電話番号の誤りは、高齢のお客様ほど電話で確かめにくく、そのまま来店や振り込みにつながります。印刷の前に、元の資料と1文字ずつ照らし合わせるのは人の仕事です。

2つ目は詐欺と間違われない配慮です。暗証番号やカード番号を電話やメールで尋ねないことを、案内の中に書いておくと安心です。なりすましへの備えはAIなりすまし詐欺から会社を守るで解説しています。

3つ目はお客様の個人情報の入力です。顧客名簿の氏名・住所・病歴などをAIに貼り付けるのはやめましょう。案内文の書き換えに、個人の情報は必要ありません

よくある質問(Q&A)

高齢のお客様向けに、案内文を別に作ったほうがいいですか?

基本は共通の案内文で足ります。誰にでも読みやすい文面を作り、届け方だけを分けるのがおすすめです。「高齢者向け」と別の案内を配ると、受け取った人が年齢で分けられたと感じることがあります。

やさしい言葉にすると、子どもっぽく見えませんか?

「です・ます」を保ち、言葉を短くするだけなら失礼にはなりません。国の資料も、対外的な文書は「です・ます」体を基本に簡潔に敬意を表すよう勧めています。敬語を重ねることより、読み間違えないことが大切です。

チラシの文字は何ポイントくらいにすればいいですか?

一律の決まりはありません。実際に刷ったものを、お客様と同じ年代の方に読んでもらうのが確実です。文字を大きくして入りきらないなら、AIに文面をさらに半分へ削らせましょう。

まとめ

  • 65歳以上は人口の29.4%。80歳以上のネット利用は37.1%で、画面だけの告知では届かない人が多い。
  • 「公用文作成の考え方」にならい、一文を短く、カタカナ語を減らし、年齢に触れない文面をAIで下書きする。
  • 同じ原稿を画面・紙・電話に形を変えて配り、数字の確認と届け方の判断は人が受け持つ。

案内文の書き換えは、AIが数十秒で手伝ってくれます。人が決めるのは、誰に、どの経路で届けるかです。まずは店頭の貼り紙を1枚選び、プロンプトに貼り付けてみてください。関連して、外国人のお客様やスタッフへの伝え方は外国人スタッフに伝わる指示の書き方が参考になります。

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著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。