はじめに:話し方より「流れ」
「人前で話すのが苦手」「説明がうまく伝わらない」——多くの人が抱える悩みです。でも、その原因は、話し方の技術ではないことがほとんど。本当の原因は、話の「流れ(骨子)」が整理されていないことです。
逆に言えば、骨子さえしっかりしていれば、多少話し方がぎこちなくても、ちゃんと伝わります。そして、この骨子づくりこそ、AIが得意とするところ。聞き手と目的を伝えれば、筋の通った話の流れを組み立ててくれます。伝える力シリーズの締めくくりに向けて、プレゼンや説明の準備にAIを活かす方法を、具体例とともに紹介します。
プレゼンは「骨子」で決まる
うまくいかないプレゼンには、共通点があります。話があちこち飛ぶ、結論が最後まで見えない、何が言いたいのか分からない——これらはすべて、骨子が定まっていないサインです。スライドの見た目を凝る前に、まず話の流れを整えることが大切です。
よくある失敗が、いきなりスライドを作り始めること。1枚目から作ると、全体の流れが見えないまま、枚数だけ増えていきます。正しい順番は、まず骨子(流れ)を固め、それからスライドに落とすこと。AIに骨子を組み立ててもらえば、この「流れを先に作る」が、ぐっと楽になります。
骨子を先に作るもう一つの利点は、作り直しが楽になることです。スライドを20枚作り込んだ後で「流れが違った」と気づくと、修正は大仕事。でも、骨子の段階なら、数行を入れ替えるだけで構成を直せます。AIとの対話で「この順番のほうが伝わるかも」と試しながら、納得いく流れを固める。土台が固まってからスライドに進むので、結果的に手戻りが減り、全体の時間も短くなります。急がば回れ、です。
骨子を作る3ステップ
手順は、図1の3ステップです。
ポイントは、1番目の「聞き手と目的」を最初に決めること。「誰に、何をしてほしいか」が決まると、話す内容が自然に絞られます。同じテーマでも、相手が社長か現場かで、話す中身は変わります。この出発点をAIに伝えることが、的確な骨子の鍵です。逆に、聞き手や目的があいまいなまま「プレゼンの構成を作って」と頼むと、当たりさわりのない一般論しか返ってきません。「新規取引先の担当者に、自社サービスを5分で紹介して、次回の打ち合わせにつなげたい」——このくらい具体的に伝えると、ぐっと使える骨子になります。
伝わる説明の骨組み
伝わる説明には、図2のような骨組みがあります。この流れに沿うと、聞き手が迷いません。
とくに大事なのが、2の「結論を先に」。社内通達と同じで、説明も結論から入ると伝わります。そして、その結論を「理由」と「具体例」で支えること。理由だけでは硬く、具体例だけでは浅い。両方そろうと、納得感が生まれます。AIに「結論を先に、具体例も入れて」と頼みましょう。
そして、忘れがちなのが5の「次の行動」です。プレゼンの目的は、聞いてもらうことではなく、聞き手に動いてもらうこと。「ご検討ください」で終わるのではなく、「では、来週までに〇〇を決めましょう」と、具体的な次の一歩で締めます。何をしてほしいのかが明確だと、プレゼンが「行動」につながります。AIにも「最後に、聞き手にしてほしい具体的な行動を入れて」と伝えると、締まりのある構成になります。
AIに渡す4つの情報
よい骨子を得るには、図3の4つの情報をAIに渡します。
とくに見落としがちなのが、3の「持ち時間」です。5分の説明と30分のプレゼンでは、入れられる内容がまったく違います。「5分で」と伝えれば、AIは要点を絞った骨子に、「30分で」と伝えれば、具体例や質疑を厚くした骨子にしてくれます。時間を伝えるだけで、ちょうどよい分量の骨子が手に入ります。「時間が足りない」「内容を詰め込みすぎ」という、よくある失敗も防げます。
コピペで使えるプロンプト集
そのまま使えるプロンプトです。数字や事例は、後で人が正しいものを入れます。
① 説明の骨子を作る
② スライドの構成に落とす
③ 想定質問を用意する
骨子のあとは、自分の言葉で
AIが作るのは、あくまで骨組み(たたき台)です。ここに、人が命を吹き込みます。とくに次を加えると、ぐっと伝わるプレゼンになります。
- 自社の具体例・実績:AIの一般論を、自社の本当の事例に差し替える。
- 聞き手との接点:「御社の〇〇の件で」など、相手に響く一言を入れる。
- 自分の言葉:原稿を丸暗記せず、要点を自分の言葉で話せるようにする。
骨子があると、当日は流れに沿って話すだけ。「次に何を言おう」と迷わなくなるので、聞き手の反応を見る余裕も生まれます。前回の文章の仕上げと同じで、最後の人の一手が、伝わるかどうかを決めます。
とくに大切なのが、自分の言葉で話せる状態にしておくことです。AIが作った骨子をそのまま読み上げても、棒読みになり、熱は伝わりません。骨子は「道しるべ」として手元に置き、各パートで何を伝えたいかを自分の言葉に置き換えておく。そうすれば、聞き手の表情を見ながら、その場に合わせて話せます。AIで準備の負担を減らした分、「自分はこれを伝えたい」という思いを整える時間にあてる——それが、心に届くプレゼンへの近道です。
チェックリスト
- 聞き手と目的を決めた
- 結論を先に置く骨子にした
- 具体例を入れた
- 持ち時間に合う分量にした
- 次の行動を明確にした
よくある質問(Q&A)
スライドもAIに作らせていい?
構成(見出しと要点)まではAIが得意です。デザインや、自社の数字・事例は人が仕上げましょう。骨子→構成→清書、の順で進めると、迷わずスムーズに作れます。
話すのが苦手でも大丈夫?
骨子があれば、流れに沿って話すだけ。丸暗記せず、要点を自分の言葉で話せば十分伝わります。想定質問を準備しておくと、さらに安心です。
AIの骨子が、ありきたりに感じます。
聞き手や目的を具体的に伝えると変わります。それでも一般的なら、自社の具体例を足すのが効果的。骨組みはAI、中身は自分です。「もっと身近な例で」「業界をこう想定して」と注文をつけると、どんどん自社向けに近づきます。
まとめ
- プレゼンは話し方より骨子(流れ)で決まる。スライドより先に流れを固める。
- つかみ・結論・理由・具体例・次の行動の骨組みで組み立てる。
- AIに聞き手・目的・持ち時間・要点を渡し、中身は自分の言葉で。
次にプレゼンや説明の準備をするときは、いきなりスライドを作らず、まずAIに骨子を相談してみてください。話の流れが見えると、準備も本番も、驚くほど楽になります。苦手だと思っていた説明やプレゼンが、少しずつ「得意」に変わっていくはずです。
プレゼンが苦手な人ほど、「話し方を直さなきゃ」と考えがちです。でも、私が見てきた限り、伝わらない原因の大半は、話の流れの問題です。話し方は、流れが整えば自然とよくなります。だからこそ、まず骨子を固めることに、時間を使ってほしいのです。
AIは、この「流れを作る」作業を、対話しながら手伝ってくれる、心強い相棒です。一人で頭を抱えるより、AIに「聞き手はこういう人で、これを伝えたい」と話すうちに、自分の考えも整理されていきます。骨子はAIと作り、本番は自分の言葉で語る——この役割分担で、苦手意識はずいぶん軽くなります。次回はいよいよ最終回、「AI活用を社員に教えるときの基本カリキュラム」をお届けします。
── AutoAIPlatform編集部