言えないまま、コストだけが積み上がる
鋼材が上がった。灯油が上がった。最低賃金も上がって、パートの時給を全員分引き上げた。それでも取引先に出している単価は三年前のままだ——こういう会社は、まったく珍しくありません。決算書を見れば利益が細っているのは分かるのに、「値上げをお願いします」の一行が書けない。書けないまま、また一つ期が終わる。
この記事は、その一行を書くための記事です。精神論ではありません。値上げの依頼は、根性ではなく文書の問題として扱ったほうが前に進みます。どんな材料をそろえ、どういう順番で書けば、相手の担当者が社内で通しやすくなるのか。その型がはっきりすれば、あとはAIに下書きさせて、数字だけ自分で入れ直せば済みます。
もう一つ、時期の話があります。中小企業庁は2021年9月から、毎年3月と9月を「価格交渉促進月間」と定めています。発注する側の企業に対して価格交渉に応じるよう広く呼びかけ、月間の終了後には受注側の中小企業に大規模なアンケートを実施して、状況の良くない発注者には所管大臣名で指導・助言を行う、という仕組みです。つまり、9月は取引先の側にも「今年はきちんと協議しなければ」という意識が働きやすい月です。今から準備すれば、間に合います。
数字で見る「転嫁できていない」現実
まず、自社だけの問題ではないことを数字で確認しておきます。公的な調査と民間の調査、二つを並べます。
中小企業庁が2026年6月26日に公表した「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査」では、価格転嫁率は54.2%で、前回調査から約1ポイントの増加でした。コストの種類別に見ると、原材料費が55.7%、労務費が50.0%、エネルギーコストが48.9%。人件費の上昇分がいちばん転嫁しにくいという構図が、数字にはっきり出ています。官公需における転嫁率は48.4%で、前回から約4ポイント下がりました。
一方、帝国データバンクが2026年3月19日に公表した「価格転嫁に関する実態調査(2026年2月)」では、全体の価格転嫁率は42.1%でした。全国23,568社を対象に、2026年2月13日から28日にかけて実施され、10,416社が回答しています。多少でも転嫁できている企業は76.9%、まったく転嫁できていない企業は10.9%。同社は、コストが100円上がったときに販売価格へ反映できているのは42.1円で、残りは企業側が負担している、と説明しています。
二つの数字が違うのは、調査の設計が違うから
54.2%と42.1%は、どちらかが間違っているわけではありません。調査対象の企業、質問の仕方、集計の時期がそれぞれ異なります。大事なのは小数点以下の差ではなく、どちらの調査でも「上がったコストの半分前後しか価格に乗せられていない」という共通の結論のほうです。取引先に示すときは、出典と調査時点をそえて引用してください。
もう一つ注目したいのは、中小企業庁の調査で「価格交渉が行われた」割合が90.7%に達していることです。話し合いの場そのものは、かなり広く持たれるようになりました。にもかかわらず転嫁率が5割前後で止まっているということは、問題が「交渉の席に着けるかどうか」から「席に着いたあと、何をどう示すか」へ移ってきたということです。だからこそ、文書の準備が効いてきます。
なぜ「値上げのお願い」は書けないのか
書けない理由を、経営者や営業担当の方から聞いていくと、だいたい三つに整理できます。どれも気持ちの問題に見えますが、実は準備で解ける部分が大きいものばかりです。
理由1:断られたときが怖い
いちばん多いのがこれです。値上げを申し出たせいで他社に切り替えられるのではないか、長年の関係が壊れるのではないか、という不安。ただ、この不安が強い会社ほど、そもそも一度も申し出ていないことが多いのも事実です。断られる確率を実際に測ったことがないまま、想像上の最悪の結果に基づいて判断してしまっています。まずは主要でない取引先から一社、試すという順番でも構いません。
理由2:どれだけ上げてよいか分からない
希望を言えばいくらでも上げたいが、根拠を示せる金額が分からない。この状態で書き始めると、文章が「諸般の事情により」から先に進みません。必要なのは値上げ幅の決断ではなく、コストがいくら上がったかの集計です。仕入先からの値上げ通知、燃料の請求書、時給の改定額。この三つを並べるだけで、根拠のある数字は作れます。
理由3:文章の型を知らない
実は、これがいちばん大きな障害です。値上げのお願いは、毎年書く文書ではありません。前回いつ書いたか思い出せない会社がほとんどでしょう。型を知らない文書を、断られるかもしれない相手に向けて書く——これでは筆が止まって当然です。逆に言えば、型さえ手元にあれば、心理的な負担は大きく下がります。AIがいちばん役に立つのがこの部分です。言いにくいことを伝える場面全般の考え方は言いにくいことを伝える文章をAIで整える方法もあわせてご覧ください。
2026年1月、下請法は「取適法」に変わった
文書の話に入る前に、いま自社が置かれている法律上の立場を確認しておきます。ここを知っているかどうかで、書ける文章の強さが変わります。
2026年1月1日、これまで「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」と呼ばれてきた法律が改正され、「中小受託取引適正化法(取適法)」という名前に変わりました。中小企業庁の解説によれば、名称だけでなく中身も変わっています。「親事業者」「下請事業者」という呼び方は「委託事業者」「中小受託事業者」に改められ、実務に効く禁止行為が新しく加わりました。
中小企業にとって重要なのは、次の二つです。第一に、受注側が価格の協議を求めているのに応じない、あるいは必要な説明をしないまま一方的に代金を決める行為が禁止されたこと。第二に、支払手段としての手形払いが禁止されたことです。電子記録債権やファクタリングであっても、支払期日までに現金化することが難しい場合は同様に扱われます。振込手数料を受注側に負担させることも禁じられています。
法律を武器のように書かない
ここで注意したいのは、依頼文に「取適法違反です」と書かないことです。最初の一通は交渉の申し入れであって、告発ではありません。法律の存在は、こちらが引かなくてよい理由として自分の側で持っておけば十分です。文面に必要なのは、協議をお願いしたいという姿勢と、根拠となる数字だけ。相手の担当者を追い詰める書き方をすると、社内で味方になってくれるはずの人まで敵に回してしまいます。
なお、自社が発注する側になる取引もあるはずです。材料の仕入れ、外注の加工、配送の委託。値上げをお願いする立場であると同時に、お願いされる立場でもあるのが中小企業の実際です。改正の内容は、両方の立場で確認しておいてください。
国の指針が受注側に求めていること
もう一つ、手元に置いておきたい公的文書があります。内閣官房と公正取引委員会が公表している「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」です。人件費の上昇分が価格に反映されにくいという問題に対して、発注する側と受注する側それぞれが採るべき行動を12にまとめたものです。2025年12月26日に改正が公表され、2026年1月1日施行の法改正に合わせた見直しが行われています。
この指針で見落とされがちなのが、受注する側にも「行動」が求められている点です。労務費が上がったなら価格転嫁を要請すること。交渉の場で説明を求められることを見越して、根拠となる資料を準備しておくこと。取引を切られることへの不安から要請自体を控えてしまわないこと。指針は、こうした受注側の現状を課題として明示的に挙げています。
言い換えれば、黙っていることは、相手にとって「値上げの必要がない」という合図になってしまうということです。発注側の担当者にも社内の予算があり、上司への説明責任があります。こちらから根拠のある依頼が届いて初めて、その担当者は社内で動けるようになります。文書を用意するのは、相手の担当者に社内で使ってもらう材料を渡す作業でもあるのです。
同じ値上げでも、伝わり方はまったく違う
ここから文書の話に入ります。同じ内容を伝えるにも、書き方によって相手の受け取り方は大きく変わります。
左側は、丁寧ではあるものの、受け取った担当者が社内で何も説明できない書き方です。「諸般の事情」では上司に持っていけません。「一律で値上げ」と書かれると、予算全体への影響が読めず、いったん保留にされます。「来月から」では、相手の側の手続きが間に合いません。断られたのではなく、判断できずに止まっているケースが、実はかなりの割合を占めます。
右側は、担当者がそのまま稟議に貼り付けられる書き方です。上昇率が数字で示され、対象が絞られ、自社でも努力した内容が先に書かれ、適用時期に余裕があり、最後に「協議をお願いしたい」と結ばれている。相手にとっては、社内を説得するための材料が届いた状態になります。
特に効くのが、自社の削減努力を先に書くことです。歩留まりの改善で何パーセント、配送ルートの見直しで何円、といった具体的な内容を短く一行入れるだけで、文書全体の説得力が変わります。「うちも努力したうえで、それでも吸収しきれない分だけをお願いしている」という構造が伝わるからです。
AIで下書きする4ステップ
材料と型がそろったら、実際に書いていきます。AIに任せる部分と、人がやる部分を最初にはっきり分けておくのがコツです。
第1歩:材料を箇条書きにする
文章を書き始める前に、メモ帳に事実だけを並べます。対象の商品やサービス、現在の単価、希望する単価、上がったコストの内訳と時期、自社が実施した削減策、希望する適用開始月。きれいな日本語にする必要はありません。「鋼材 前年比18%↑ 仕入先通知2026年4月」で十分です。この作業に30分かけるほうが、文章に3時間かけるより効果があります。
第2歩:3つの言い方を出させる
AIには一案ではなく、強め・標準・柔らかめの3案を一度に出させます。取引先との関係の深さや、これまでの経緯によって、ちょうどよい強さは変わります。3案を並べて読むと、自社にとっての「ちょうどよさ」がはっきりします。多くの場合、標準案をベースにして、強め案から一文だけ借りる、という形に落ち着きます。
第3歩:数字を人が入れ直す
ここが最重要です。AIが書いた数字は、たとえ正しく見えても全部消して、自分の資料から入れ直してください。AIは文脈に合いそうな数値を作ってしまうことがあります。上昇率、金額、日付、取引先の名称、商品名。この五つは必ず原本と照合します。事実確認の考え方はAIの答えが正しいか確かめる方法で詳しく扱っています。
第4歩:声に出して読む
最後に、できあがった文面を声に出して読みます。文書を送ったあと、たいてい電話がかかってきます。そのとき自分の口で言えない表現は、文書にも書かないほうがよいという判断基準です。読みながら詰まるところがあれば、その部分は自分の言葉に直します。ここを飛ばすと、いざ電話口で説明できずに、その場で値上げ幅を譲ってしまうことになります。
そのまま使えるプロンプト
第2歩で使うプロンプトの型です。角かっこの部分を自社の内容に置き換えて、そのまま貼り付けてください。取引先の実名や個人名は入れず、「A社」「先方のご担当者」で十分です。
このプロンプトの肝は条件3と条件5です。数字を作らせない指示を明示的に入れておくことで、確認の手間が大きく減ります。そして条件5の「聞かれそうな質問」は、そのまま電話対応の準備になります。プロンプトの書き方そのものに不安がある場合はAIへの指示(プロンプト)の基本の書き方から確認してください。
AIの下書きで、必ず人が直す4か所
AIが返してきた文面は、そのまま送れる状態には決してなっていません。次の4か所は、毎回必ず人が手を入れます。
1つ目は、すべての数字と日付。前述のとおりです。上昇率も、金額も、適用月も、原本と一字ずつ突き合わせます。一つでも間違った数字が入っていると、その文書全体の信用が失われます。値上げの依頼で信用を失うのは、致命的です。
2つ目は、謝りすぎている部分。AIは日本語のビジネス文書を学習しているため、「誠に恐縮ながら」「身勝手なお願いで申し訳なく」といった表現を多めに入れてきます。謝罪が多いほど、これは無理を言っているという前提が相手に伝わります。1通につき恐縮の表現は1回で十分です。
3つ目は、関係性に合わない敬語。20年の付き合いがある相手に、初対面のような硬い文面を送ると、かえって距離を感じさせます。逆に、担当者が代わったばかりの取引先に砕けた文面を送ると軽く見られます。相手の顔を思い浮かべながら、書き出しの2行だけは自分で書き直すのがおすすめです。
4つ目は、譲れる線と譲れない線。AIは交渉の落としどころを知りません。値上げ幅を何パーセントまで下げてよいか、適用時期を何か月まで延ばせるか。これは送る前に自分で決めて、文書とは別のメモに書いておきます。決めずに電話を受けると、その場の空気で譲ってしまいます。
AIに書かせてはいけない部分
逆に、AIにそもそも触らせないほうがよい領域もあります。三つ挙げます。
第一に、取引先の実名や担当者名、契約金額をAIに入力することです。文面の型を作るだけなら固有名詞は不要で、「A社」「主要取引先」で十分に機能します。無料版のAIサービスでは、入力した内容が学習に使われる設定になっている場合があります。入力してよい情報の線引きはAIに入力してはいけない情報一覧と安全な言い換え方にまとめました。
第二に、値上げ幅そのものをAIに決めさせることです。「適正な値上げ率を提案して」と聞けば、AIはもっともらしい数字を返します。しかしその数字には、自社の原価も、相手との力関係も、過去の経緯も反映されていません。値上げ幅は、自社の集計から決めるものです。
第三に、法的な判断をAIに求めることです。この取引が取適法の対象になるか、この対応は違反にあたるか——こうした判断は、資本金や従業員数、取引の類型によって細かく分かれます。AIの回答は当たっていることもありますが、外れていても同じ調子で書いてきます。判断が必要な場面では、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口、商工会議所、顧問の専門家に確認してください。
電話で「どうして」と聞かれたときの答え方
文書を送ってから数日以内に、先方から連絡が来ます。ここで慌てないために、答え方を先に用意しておきます。プロンプトの条件5でAIに挙げさせた「聞かれそうな質問」が、そのまま練習材料になります。
典型的な質問は三つです。「なぜ今なのか」「他社さんは上げていないが」「もう少し下げられないか」。一つ目には時期の根拠を、二つ目には自社のコスト構造を、三つ目には事前に決めた線をそれぞれ答えます。特に二つ目は動揺しやすい質問ですが、他社の事情は自社の原価とは関係ありません。「当社の場合は主材料の比率が高く、影響の出方が違います」と落ち着いて説明できれば十分です。
また、電話で即答を求められても、その場で最終回答をしないことです。「持ち帰って確認します」と言える余地を、最初から自分に許しておきます。文書は交渉の入口であって、結論ではありません。お客さまに事情を説明する場面全般の言い回しはAIをお客さまに説明するときの伝え方でも扱っています。
断られたあとの二通目をどう書くか
一通目で通ることは、むしろ少数です。大事なのは、断られたあとに関係を切らずに続けることです。二通目は、一通目の焼き直しにしないでください。断られた理由に合わせて、変える場所を一つ決めます。
予算の都合と言われたなら、適用時期を次期の予算編成に合わせてずらす案を出します。上げ幅が大きいと言われたなら、対象品目を絞る案や、二段階に分けて適用する案を示します。上司の決裁が下りないと言われたなら、担当者が稟議に添付できる形の資料——コスト上昇の内訳を一枚にまとめたもの——を追加で送ります。断りの言葉は、次に何を渡せばよいかのヒントだと考えてください。
AIには、断られた内容をそのまま伝えて「この理由に対応した二通目を3案」と頼めば、切り口の候補を出してくれます。ここでも数字は自分で入れ直します。そして、二通目を送ったら記録を残します。いつ、誰に、どの内容で申し入れ、どう回答されたか。この記録は、次の価格交渉促進月間のアンケートに答えるときにも、社内で経緯を共有するときにも使えます。
9月の価格交渉促進月間を逆算する
冒頭で触れたとおり、中小企業庁は毎年3月と9月を価格交渉促進月間としています。9月に向けて動くなら、逆算の目安は次のとおりです。
8月の残りで、コストの集計を終わらせます。仕入先からの値上げ通知、燃料や電気の請求書、時給の改定額。この三つを一枚の表にまとめるだけで、依頼文の骨格は完成します。最低賃金の改定は毎年10月ごろに発効するため、その影響額も見込んで入れておくと、依頼の説得力が増します。最低賃金と人件費の考え方は最低賃金引き上げとAI活用で詳しく扱いました。
8月末から9月初旬に、文書を送ります。9月中に協議の場を持てれば、多くの会社では下期や次期の見積に反映しやすくなります。9月は相手の側も価格交渉に応じる姿勢を示しやすい時期です。この追い風は、使えるうちに使ってください。
そして、取引先が一社ではない会社は、優先順位をつけます。取引額が大きい先から順に、ではなく、通りやすそうな先から一社試して、その反応を次の文面に反映する順番をおすすめします。最初の一通が通ると、二社目以降の文章は驚くほど書きやすくなります。
送る前に確認する5項目
できあがった文書を送る直前に、次の5点を点検してください。
- 数字・日付・商品名を、すべて原本と突き合わせたか
- コスト上昇の根拠を、自社の資料または公表統計で示せているか
- 自社が実施した削減努力を、一行でも書いたか
- 適用時期に、相手が社内手続きを取れるだけの余裕があるか
- 譲れる線と譲れない線を、送る前に自分で決めてあるか
五つ全部そろわなくても構いません。一つ目と二つ目だけは、必ず確認してください。数字が違っていた、根拠が示せなかった——この二つは、値上げが通らないだけでなく、次の交渉まで難しくしてしまいます。
よくある質問(Q&A)
値上げを申し出たせいで、取引を切られることはありませんか。
可能性はゼロではありません。ただし、2026年1月に施行された取適法では、価格の協議に応じずに一方的に代金を決める行為が禁止されました。協議を申し入れること自体は、法律が想定している正当な行動です。そのうえで実務的な備えとしては、主要取引先から始めず、比較的リスクの小さい先で一度試して感触をつかむ方法があります。また、申し入れの経緯を記録に残しておくと、後日相談窓口に持ち込むときの材料になります。
コストがいくら上がったか、正確に計算できていません。それでも書けますか。
主要な項目だけで十分です。全項目を精密に積み上げようとすると、たいてい着手前に力尽きます。原価に占める比率が高いものを3つだけ選び、その上昇分を仕入先の通知や請求書から拾ってください。「主材料18%、燃料12%、時給60円」と並ぶだけで、相手には十分に伝わります。細かい端数の正確さより、示した数字が資料と一致していることのほうが重要です。
AIが作った文章だと相手に分かってしまいませんか。
書き出しの2行と、自社の事情を書いた部分を自分の言葉に直せば、まず分かりません。AIらしさが出るのは、どの会社にも当てはまる一般論を長々と書いている箇所です。そこを削り、自社固有の事実に置き換えるだけで文章は自然になります。AIの文章を人が整える手順はAIが書いた文章を人が整える手順にまとめてあります。値上げの依頼文は、むしろ事実の分量が多いほど良い文書になります。
まとめ
- 価格転嫁率は54.2%(中小企業庁・2026年3月調査)と42.1%(帝国データバンク・2026年2月調査)。多くの会社が上昇分の半分前後を自社で抱えている。
- 2026年1月施行の取適法で、協議に応じない一方的な代金決定は禁止された。申し入れは正当な行動。
- AIに任せるのは文章の型と3案の出し分けまで。数字・日付・譲れる線は必ず人が決める。
価格転嫁の話は、どうしても交渉術や心構えの話になりがちです。しかし数字を見るかぎり、交渉の場自体はすでに9割で持たれています。足りていないのは、席に着いたときに差し出す一枚のほうです。コストがいくら上がり、自社で何を削り、それでも足りない分がいくらなのか。この三つが書いてある紙を用意することは、誰にでもできます。AIは、その紙を形にする時間を短くしてくれる道具です。
ある部品加工の会社で、社長が机の引き出しから紙を出してきたことがあります。三年前に書きかけた値上げのお願い文でした。二段落目の途中で止まっていて、そこから先が白いままでした。なぜ止まったのか聞くと、「何パーセントと書けばいいか分からなくなって」と言われました。文章が書けなかったのではなく、数字が用意できていなかったのです。その日は文章の話はやめて、仕入先からの値上げ通知を全部集めるところから始めました。集計が終わったのは翌週で、文書は一時間で書き上がりました。
値上げのお願いは、勇気の問題に見えて、実は準備の問題です。そして準備の大半は、集計と型の二つでできています。集計は自分にしかできませんが、型はAIが持っています。今日できることがあるとすれば、仕入先から届いた値上げ通知を一箇所に集めることかもしれません。それが積み上がれば、あとは相手に渡す形に整えるだけです。9月まで、まだ時間があります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
── AutoAIPlatform編集部