お客様の調べ方が、静かに変わった
会社の外で何が起きているかは、たいてい遅れて伝わってきます。ホームページを作ったときは検索で見つけてもらうことだけを考えていればよく、その後にスマートフォンが来て、地図アプリが来て、SNSが来ました。そのたびに「情報の置き場所」が増え、会社はひとつずつ対応してきたはずです。いま増えているのは、置き場所ではなく調べ方のほうです。
お客様は検索窓に単語を入れる代わりに、AIに話し言葉で尋ねるようになりました。「この辺で〇〇を頼めるところ、どこがいい?」「この会社って何をやってるの?」。返ってくるのは10件のリンクではなく、1つの短い説明文です。選ばれる前に、まず説明される。そこに書かれている内容が正しいかどうかを、会社は自分では選べません。
この変化は、感覚の話ではなく統計に出ています。まずは、その数字を確認するところから始めます。
数字で見る、AIで調べる人の増え方
総務省が2026年7月24日に公表した「令和8年版情報通信白書 個人における生成AIサービスの利用経験」によると、何らかの生成AIサービスを「使っている(過去に使ったことを含む)」と回答した人の割合は、2025年度調査で58.8%でした。前年の2024年度調査では26.7%です。1年で2倍以上に増えたことになります。
種類別に見ると、伸びを支えているのは文章を扱うAIです。テキスト生成AIサービスを使っていると答えた割合は、2024年度の24.0%から2025年度は55.0%になりました。画像・動画や音声のAIに比べると、この数字は突出しています。絵を描かせるためではなく、言葉でやりとりするためにAIが使われているという構図です。
使う頻度も上がっています。同じ白書の「利用頻度」の項目では、生成AIを使っていると答えた人のうち、日本で「ほぼ毎日」利用すると答えた割合が約3割となりました。米国・ドイツ・中国では4割を超えており、日本はこの3か国のなかで最も低い数字です。それでも、毎日開くアプリの1つになりつつある層が3割いる、という事実は変わりません。
AIの使い道の1位は「情報の理解」
では、人はAIを何に使っているのでしょうか。ここが今日の話の核心です。総務省の「令和8年版情報通信白書 利用目的(利用シーン)」は、AIの利用目的について「最も高かったのは、日本及び今回調査した他の3か国の全てにおいて、情報の理解だった」と明記しています。日本ではこれに文書作成や校正、翻訳が続きました。
つまりAIは、書く道具である前に、まず調べる道具として使われているということです。会社の側は「AIで文章を作る」話ばかり聞かされますが、世の中での使われ方の1位は、そちらではありません。
同じ白書の概要資料には、日本の回答者が生成AIをどんな存在と捉えているかの順位も載っています。1位が「機械・道具」で38.3%、2位が「辞書・百科事典」で28.9%、3位が「秘書・アシスタント」で21.4%でした。3人に1人近くが、AIを辞書のように使っている。辞書として引かれるなら、そこに載っている自社の項目が正しいかどうかは、放っておける問題ではなくなります。
検索がなくなるという話ではありません
同じ総務省の令和7年通信利用動向調査の結果では、インターネットの利用目的として「検索サービスの利用」を挙げた人は77.5%で、依然として上位です。検索がAIに置き換わったのではなく、調べる入口が2つになったと考えるのが正確です。やることは、片方を捨てることではなく、両方から読める形に情報を置くことです。
若い世代は、AIだけで済ませている
年齢による差は、想像よりはっきり出ています。生成AIの利用経験率は15〜19歳が91.7%、20〜29歳が78.2%、30〜39歳が56.3%、40〜49歳が49.0%、50〜59歳が44.2%、60〜69歳が33.5%でした。10代ではほぼ全員が触れており、60代でも3人に1人が使った経験を持っています。
さらに踏み込んだ数字があります。前掲の「利用目的(利用シーン)」の項目では、15〜19歳と20〜29歳において、日常の疑問を気軽に得ようとする場面や、心身や生活に関わる専門的な相談をする場面で「AIのみ」または「主にAI(他の方法は補助的)」を利用すると答えた割合が、2割から3割程度に及ぶとしています。
会社が向き合う相手を思い浮かべてください。採用の応募者、取引先の若手担当者、店に来る家族連れの子ども世代。その一部は、検索結果の一覧を見ることなく、AIの説明だけで判断を終えています。検索順位の話ではなく、説明の中身の話に変わったのは、このためです。
AIは、どこから自社の情報を拾うのか
仕組みを知っておくと、やるべきことが自然に決まります。AIが会社について答えるときの材料は、大きく2つに分かれます。
1つめ:学習した知識から答える
AIは大量の文章を学習しています。そこに自社の情報が含まれていれば、それをもとに答えます。ただしこの知識には作られた時点があり、古い情報が固定されたまま残るという弱点があります。移転前の住所、終了したサービス、旧社名。学習し直されるまで、会社の側から直接消す手立てはありません。
2つめ:その場でウェブを読みに行く
もう1つは、質問を受けた時点でウェブを検索し、見つけたページを読んで答える方法です。最近のAIはこちらを併用することが増えました。会社が手を打てるのは、圧倒的にこちらです。いま公開されているページの中身を直せば、答えも変わるからです。
ここで効いてくるのは、デザインの美しさでも、写真の枚数でもありません。事実が、文章として書かれているかどうかだけです。営業時間が画像の中に描かれていれば、AIはそれを読み取れません。PDFの奥にしか料金表が無ければ、たどり着かないこともあります。人間の目には見えていても、機械には存在しないのと同じ扱いになります。
整っている会社と、整っていない会社
情報が整っていない場合、AIは「わかりません」と黙るとは限りません。多くの場合、それらしく埋めて答えます。古い営業時間を答える、閉じた店舗を紹介する、似た社名の別会社の事業内容を混ぜる。悪意ではなく、材料が足りないときに近い情報で補うという仕組みの副作用です。
そもそも情報の置き場所が無い会社も、まだ少なくありません。総務省の令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)によれば、自社のホームページを開設している企業の割合は93.3%で、従業者100〜299人の企業では91.9%でした。産業別では情報通信業が100.0%、建設業が97.2%である一方、業種によって差があります。この調査の対象は常用雇用者100人以上の企業ですから、それより小さい会社ではさらに低いと考えるのが自然です。
言い換えると、規模の小さい会社ほど、AIが読みに行ける自社の一次情報が薄いということです。これは不利な条件のようでいて、実は先に手を打てば差がつきやすい領域でもあります。競合の多くも、まだ何もしていないからです。
何を書いておけばよいのか
書くべき項目は多くありません。次の表の9つを、1つのページに文章でまとめるだけで大きく変わります。凝った文章にする必要はなく、事実をそのまま並べれば十分です。
| 項目 | 書き方の目安 | やりがちな失敗 |
|---|---|---|
| 正式な会社名 | 登記どおりの表記を1回は書く | 屋号だけしか書いていない |
| 所在地 | 郵便番号から番地まで文章で | 地図画像の中にしか無い |
| 電話番号・連絡先 | 数字をそのまま本文に置く | 画像やフォームの中だけ |
| 営業時間・定休日 | 曜日と時刻を明記する | 「不定休」で終わっている |
| 対応エリア | 市区町村名を具体的に列挙 | 「近隣地域」とだけ書く |
| 商品・サービス | 名称と内容を1〜2文で説明 | 写真の羅列で説明が無い |
| 価格の目安 | 幅でよいので数字を書く | 「お問い合わせください」のみ |
| 対応できないこと | 断る条件を先に書いておく | 書かないので誤解が生まれる |
| 情報の更新日 | ページ内に日付を添える | いつの情報か分からない |
右端の列に注目してください。失敗の多くは、情報が無いことではなく、人にしか読めない形で置かれていることです。写真、地図画像、PDF、問い合わせフォームの内側。どれも人間には親切ですが、機械には届きません。同じ内容を、本文の文章としても書き添えるだけで解決します。
書き足してはいけないもの
AIに良く答えさせたいからといって、実際には無い実績、取得していない資格、根拠のない「地域No.1」といった表現を書き足してはいけません。景品表示法上の問題になるだけでなく、問い合わせが来てから食い違いが露見するため、商売としても割に合いません。書くのは事実だけです。
今週できる4つの手順
やることを4つに絞りました。どれも10分から30分程度で、専門知識も外注も要りません。
- 会社名・住所・営業時間・対応エリアを、自社サイトに文章で書いたか
- 価格の目安と、対応できない範囲まで書いたか
- 社名や屋号の表記を、サイト・地図・SNSですべてそろえたか
- robots.txt でAIのクローラを拒否していないか確認したか
- 実際にAIへ自社名を尋ねて、返ってきた説明を読んだか
順番にも意味があります。先に事実を紙に書き出すと、社内で認識がずれている項目が必ず出てきます。定休日の扱い、対応エリアの端、最低受注額。そこを決めるのが実は本体で、サイトに載せる作業はそのあとの清書にすぎません。
表記をそろえる、という地味な作業
AIは、同じ会社を指す言葉が揺れていると、別の存在として扱うことがあります。株式会社を前に付けるのか後ろに付けるのか。屋号と法人名のどちらを名乗るのか。住所の丁目をハイフンでつなぐのか漢数字で書くのか。英字表記を併記するのか。
確認する場所は、自社サイト、地図サービスの登録情報、SNSのプロフィール、名刺、請求書、看板です。ここを全部そろえるだけで、AIが自社を1つの存在として認識しやすくなります。費用はゼロで、かかるのは決めて統一する手間だけです。
やり方は単純です。正式表記を1つ決め、併記してよい別名を1つだけ許し、それ以外は使わないと決める。決めた内容を1枚のメモにして、社内で共有する。新しい媒体に登録するときは、そのメモを見ながら入力する。増やすのではなく、減らして固定する作業だと考えてください。
AIのアクセスを塞いでいないか
ここは見落とされやすい設定です。サイトの側でAIのクローラを拒否していると、そもそも読みに来てもらえません。確認する場所は、自社サイトのアドレスの末尾に /robots.txt を付けたページです。制作会社に任せている場合は、AI関連のクローラを拒否していないかを一度だけ聞いてください。
ここで区別が要ります。AIのクローラには、回答のためにその場で読みに来るものと、将来のモデルの学習のために集めるものの2種類があります。学習用を拒否するかどうかは、方針として分かれてよい判断です。しかし、回答のために読みに来るクローラを塞ぐと、そのAIの回答から自社が完全に消えます。塞ぐ・開けるは、この違いを理解したうえで決めるべき設定です。
また、サイトの前にセキュリティサービスを入れている場合、robots.txt の記述に関係なくそちら側で遮断されていることがあります。設定を触った覚えが無くても、導入時の初期値で止まっている例は珍しくありません。担当者に「AIのクローラは通っていますか」と一言確認しておくと確実です。
自分で確かめる方法
整えたら、必ず自分で試してください。手順は3つです。
1つめ、AIに自社名をそのまま尋ねます。「株式会社〇〇(△△市)はどんな会社ですか」と聞き、返ってきた説明を読みます。2つめ、お客様の言葉で尋ねます。「△△市で〇〇を頼めるところはありますか」。自社が出てくるか、出てきたときの説明が正しいかを見ます。3つめ、同じ質問を日を変えてもう一度試します。AIの答えは毎回同じではないため、1回で判断すると読み違えます。
誤りが見つかったときの直し方は、AIに訂正を求めることではありません。元になっている情報のほうを直すのが唯一の方法です。自社サイトの記述、地図サービスの登録、業界団体の名簿。古い情報がどこかに残っていれば、そこを更新します。訂正が反映されるまでには時間がかかるので、四半期に一度、確認する日を決めておくと運用が続きます。
ちなみに、AIが自社について何も答えられない場合、それは悪い結果ではありません。誤った説明を流されるよりは、情報が無いほうがまだ安全だからです。そこから事実を置いていけば、次に聞かれたときには正しく答えられるようになります。
よくある3つの勘違い
勘違い1:SNSを更新していれば足りる
SNSの投稿は流れていく形式で、営業時間や対応エリアのような変わらない事実の置き場所には向きません。プロフィール欄の文字数も限られます。SNSは知ってもらう入口として続けつつ、事実の置き場所は自社サイトに1つ用意するのが基本形です。
勘違い2:キーワードをたくさん書けば有利になる
同じ言葉を繰り返し詰め込む手法は、AIに引用されやすくする効果が確認されていません。むしろ読みにくい文章になり、人間の側が離れます。効くのは具体的な数字と、出典のはっきりした事実です。「創業35年」「対応エリアは市内全域と隣接3市」のように、確かめられる形で書いてください。
勘違い3:うちは無関係な業種だから
前掲の白書によると、企業の側でも生成AIの利用は進んでいます。「令和8年版情報通信白書 生成AIの業務利用状況」では、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合は日本で86.4%でした。相手が法人であっても、担当者はAIで下調べをしています。取引先の与信、外注先の選定、初回訪問前の情報収集。業種は関係ありません。
そのまま使えるプロンプト
自社がAIからどう説明されているかを確かめるためのプロンプトです。角かっこの中を自社の情報に置き換えて、そのまま貼り付けてください。
最後の条件4が、この使い方の要です。AIが見つけられなかった項目のリストが、そのまま自社サイトに書き足すべき項目のリストになります。何を足せばよいかを自分で考える必要はありません。
よくある質問(Q&A)
AIに聞いたら、うちの会社の営業時間が間違って出てきました。どうやって直せばいいですか。
AIに直接訂正を頼んでも、次の人が聞いたときには元に戻ります。直すのは元になっている情報のほうです。まず自社サイトに正しい営業時間を文章で書き、更新日を添えます。次に地図サービスの登録情報、SNSのプロフィール、掲載されている業界団体の名簿を順に確認し、古い記載を直します。反映には数週間かかることがあるので、直したらカレンダーに「1か月後に再確認」と書いておいてください。
ホームページを持っていない小さな会社でも、何かできることはありますか。
あります。まずは地図サービスの事業者登録を、正式な社名・住所・営業時間・対応エリアまで埋めてください。それだけでもAIが読める一次情報になります。総務省の令和7年通信利用動向調査では、常用雇用者100人以上の企業のホームページ開設率が93.3%でしたが、規模が小さいほどこの割合は下がると考えられます。1ページだけの簡素なサイトでも、無いよりは大きく違います。凝ったデザインは要りません。
AI向けに文章を書き直したほうがいいのでしょうか。不自然な日本語になりませんか。
書き直す必要はありません。AIは言い回しの違いを理解するので、AI向けの特殊な語彙に置き換える意味はほとんどありません。効くのは構成をはっきりさせることです。見出しを付ける、1つの段落に1つの内容だけ書く、数字と日付を具体的に書く、表にできるものは表にする。どれも人間にとっても読みやすくなる直し方で、不自然な日本語にはなりません。
まとめ
- 個人の生成AI利用経験率は1年で26.7%から58.8%へ。総務省の令和8年版情報通信白書は、利用目的の1位が「情報の理解」だったと記している。
- AIが自社をどう説明するかは、ネット上に事実が文章で置かれているかで決まる。画像やPDFの中身は届かない。
- やることは3つ。事実を文章で書く・表記をそろえる・AIのアクセスを塞がない。費用はかからず、必要なのは決める手間だけ。
大がかりな話に聞こえたかもしれませんが、実際にやるのは、営業時間と対応エリアを正しく書いて、社名の表記をそろえるだけです。新しいことを始めるのではなく、放置していたことを片づける作業——今回の内容は、突き詰めるとそういう性格のものでした。
白書を読んでいて手が止まったのは、利用目的の1位が「情報の理解」だったという一文でした。AIの話題はどうしても「作る」側に寄りがちで、文章を作る、画像を作る、資料を作る、という文脈で語られます。ところが実際に人が毎日やっているのは、知らないことを聞くという、ずっと素朴な行為だったわけです。
そう考えると、会社がやるべきことも素朴になります。聞かれたときに答えられる材料を、読める場所に置いておく。営業時間を画像から本文に移す。対応エリアを「近隣」ではなく市区町村名で書く。10分で終わる作業が、そのまま効くのは、この分野の面白いところだと思います。
今日のところは、自社の名前でAIに一度聞いてみてください。返ってきた説明を読んで、違っているところに赤を入れる。それだけで、次にやるべきことの一覧ができあがります。会社の説明を他人任せにしない、という意味では、看板を掛け替えるのと変わらない仕事です。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
── AutoAIPlatform編集部