求人を出しても、人が来ない

人手が足りないという話は、もう景気の波の話ではなくなりました。厚生労働省が2026年8月28日に公表した一般職業紹介状況(令和8年7月分)によれば、令和8年7月の有効求人倍率は季節調整値で1.18倍でした。正社員の有効求人倍率は1.00倍、新規求人倍率は2.10倍です。求職者1人に対して、1つ以上の仕事が空いている状態が続いています。

地域差はあります。同じ資料では、就業地別で最も高いのが福井県と山梨県の1.69倍、最も低いのが大阪府の0.95倍でした。産業別の新規求人を前年同月と比べると、製造業が6.8%増、サービス業が5.6%増、医療・福祉が1.3%増と伸びた一方、宿泊業・飲食サービス業は10.7%減、卸売業・小売業は7.3%減となっています。求人を出す側の勢いにも濃淡があるということです。

それでも、多くの中小企業にとって採用は買い手市場ではありません。だとすれば考える順番が変わります。人を採って埋める前提を、いったん外して考える。減らせる作業は減らし、それでも残る仕事に人を配る。この順番に切り替えるための道具として、国は補助金を用意しています。

2026年8月18日、第8回公募が始まった

中小企業省力化投資補助金の一般型は、第8回公募を2026年8月18日に開始しました。申請受付の開始は2026年9月中旬の予定、申請締切は2026年10月中旬の予定、採択発表は2027年2月上旬の予定です。前回の第7回は2026年6月5日に公募が始まり、7月31日17時に締め切られました。おおむね2か月おきに回ってくる制度だと考えておくと、社内の段取りが立てやすくなります。

省力化投資補助金 第8回の日程。1.公募開始は2026年8月18日火曜。2.申請受付開始は2026年9月中旬予定。3.申請締切は2026年10月中旬予定。4.採択発表は2027年2月上旬予定。5.前回の第7回は2026年7月31日で締切。中小企業省力化投資補助金(一般型)より。
図1|中小機構が公表する第8回公募のスケジュール

この制度が何のためにあるのかは、はっきり書かれています。中小企業省力化投資補助金の公式サイトは、事業の目的として「中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするために、人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化投資を支援します。」と明記しています。省力化それ自体がゴールではありません。空いた時間と増えた付加価値を、賃上げにつなげるところまでが制度の射程です。

ここは申請の実務にも効いてきます。「人が足りないので機械を買いたい」だけでは、制度の問いに答えたことになりません。何の作業が何分減り、その結果として生産性と給与がどう上がるのか。そこまで書けて、はじめて計画になります。

カタログ注文型と一般型は、別の制度と考える

省力化投資補助金には2つの型があります。名前は同じでも、選び方も手間もまったく違うので、別の制度として扱うほうが混乱しません。

カタログ注文型:選ぶだけ、その代わり汎用品

カタログ注文型は、事務局にあらかじめ登録された製品をカタログから選ぶ方式です。対象となるのは、IoTやロボットなど人手不足の解消に効果がある汎用製品とされています。配膳ロボット、自動券売機、検品や清掃の機器などが典型です。選ぶだけなので手続きは軽く、事業計画の作り込みも比較的あっさりしています。

裏返せば、自社向けの作り込みはできません。カタログにない機械は対象外です。「うちの現場に合わせて組みたい」という要望が出た時点で、この型では届かないと考えてください。

一般型:作り込める、その代わり計画が要る

一般型は、個別の現場の設備や事業内容に合わせて設備を導入したり、システムを構築したりする方式です。自由度が高く、補助額も大きくなります。その代わり、事業計画の作成と、原則として2者以上から同一条件で取る相見積もりが必要です。

どちらが上位ということはありません。減らしたい作業が汎用品で片づくかどうかという一点で選びます。迷ったら、まずカタログを開いて自社の作業に当たる製品があるかを見るのが早道です。

いくら出るのかは、従業員数で決まる

補助上限額は、業種でも売上でもなく従業員数で決まります。ここが最初に押さえるべき数字です。

表1|省力化投資補助金の補助上限額(かっこ内は賃上げ要件・大幅賃上げ特例の適用時)
従業員数一般型カタログ注文型
5人以下750万円(1,000万円)200万円(300万円)
6〜20人1,500万円(2,000万円)500万円(750万円)
21〜50人3,000万円(4,000万円)1,000万円(1,500万円)
51〜100人5,000万円(6,500万円)1,000万円(1,500万円)
101人以上8,000万円(1億円)1,000万円(1,500万円)

一般型の補助率は、中小企業が2分の1、小規模企業者・小規模事業者と再生事業者は3分の2です。最低賃金引き上げ特例が適用される場合、中小企業も3分の2になります。カタログ注文型の補助率は2分の1以下です。

カタログ注文型の金額は、2026年3月19日以降の申請分で見直されています。従業員21名以上の区分は据え置かれた一方、5名以下は500万円から200万円へ、6名から20名は750万円から500万円へと引き下げられました。小規模な事業者ほど、以前の記事や資料に載っている金額との差が大きくなっています。古い解説記事の数字をそのまま信じないでください。

上限額と実際にもらえる額は違う

表の金額は上限であって、その額が出るという意味ではありません。補助率をかけた額が上限を超えなければ、補助されるのは補助対象経費に補助率をかけた金額です。従業員6人の会社が一般型で600万円の設備を入れる場合、補助率2分の1なら補助額は300万円で、上限の1,500万円には届きません。上限額の大きさに引きずられて、必要以上の設備を検討しないようにしてください。

賃上げと生産性という「約束」

この補助金は、費用の一部を国が持つ代わりに、会社が数字で約束をする仕組みです。一般型の基本要件は2つあります。労働生産性の年平均成長率を4.0%以上、そして1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させることです。

表1のかっこ内の金額、つまり大幅賃上げ特例を使う場合は、約束がさらに重くなります。1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%にさらに2.5%以上を上乗せして合計6.0%以上とし、加えて事業所内最低賃金を事業実施都道府県の最低賃金より50円以上高い水準にする必要があります。

2026年度の最低賃金の引上げ目安を踏まえると、この50円という上乗せは決して小さくありません。賃上げの全体像は最低賃金は全国平均1,176円へで整理しています。補助上限が上がるのが先ではなく、払える給与が決まるのが先です。数字を置いてから金額を選ぶ順番を守ってください。

AIで減る仕事と、設備でしか減らない仕事

ここからが、この記事のいちばん伝えたいところです。同じ「人手不足」でも、打ち手は仕事の性質で変わります。

AIで減る仕事と、設備で減る仕事の対比。AIソフトが効くのは見積・請求の下書き、問合せメールの返信、議事録と日報の整理、マニュアルの作成。設備投資が要るのは商品を箱に詰める、棚から品物を運ぶ、床を掃除して回る、受付で来客に応対。同じ人手不足でも打ち手が違う。
図2|仕事の性質で、AIソフトと設備投資は使い分ける

情報処理推進機構(IPA)が2026年7月16日に公表した国内企業のDX動向・AI活用動向のポイントは、この違いを数字で示しています。AI導入による効果として「業務が効率化したり迅速化した」と答えた企業は91.6%に上りました。一方で「売上や利益が向上した」は3.9%、「顧客満足度が向上した」は4.5%、「対象となる顧客が拡大した」は2.7%にとどまります。

利用用途の内訳も同じ方向を向いています。文書・音声の要約や翻訳・校正が82.5%、文書・レポートの作成が80.5%、情報検索や分析が77.0%と文書の仕事が上位を占め、生産・物流・サービス提供の計画支援は6.0%、自社製品・サービスの高度化は10.9%にとどまりました。この調査は2026年4月17日から6月12日にかけて実施され、1,799社が回答しています。

読み取れることは単純です。AIは書類の仕事をよく減らしますが、物を運ぶ・詰める・拭くといった作業はそのまま残ります。見積書の下書きや問い合わせメールの返信は、いま使っているAIで今日から減らせます。けれど商品を箱に詰める作業は、どれだけ良いプロンプトを書いても1秒も短くなりません。ここが設備投資の出番です。

逆の失敗もあります。文書仕事を減らすためだけに大きな設備投資を検討してしまうケースです。作業の棚卸しの手順はAI化すべき業務を見つける『業務棚卸し』シートの使い方にまとめてあります。まず数え、次に仕分ける。この順番を飛ばすと、補助金の金額から逆算して要らない機械を買うことになります。

3つの制度の使い分け

国の支援制度は用途で分かれています。名前が似ていて紛らわしいので、表にして並べます。

表2|減らしたい作業から見た、3つの制度の使い分け
減らしたい作業向いている制度申請の重さ
見積書・メール・議事録などの書類仕事デジタル化・AI導入補助金軽い
配膳・検品・清掃など汎用機器で片づく作業省力化投資補助金(カタログ注文型)軽い
自社の現場に合わせた設備・システム省力化投資補助金(一般型)重い

一般型の補助対象経費は、機械装置・システム構築費が必須で、そのほかに技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費が含まれます。つまり一般型でもソフトウェアやクラウドの費用は対象になり得ますが、あくまで機械装置・システム構築費が中心にある前提です。ソフトだけを入れたいなら、この制度ではありません

ソフトウェアやクラウドが主役なら、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を見るほうが早道です。制度の中身はAI導入の費用を補助金でまかなうで解説しています。どの制度が合うか判断がつかないときは、国が全国のよろず支援拠点に置いた無料の相談窓口も使えます。使い方はAI導入の相談を「無料」でできる国の窓口にまとめました。

締切から逆算して、今週動く

申請受付の開始は9月中旬の予定です。いまは準備期間ですが、待っていてよい期間ではありません。

締切から逆算する4歩。1.減らす作業を決める、1日で何分かかるか数える。2.型を選ぶ、カタログか一般型かを判断。3.GビズIDを取る、取得に時間がかかるため先に。4.賃上げの数字を置く、給与総額の伸び率を決める。申請受付は2026年9月中旬から。
図3|申請受付までの準備期間にやっておく4歩

第1歩:減らす作業を決めて、時間を数える

減らしたい作業を書き出し、1日あたり何分かかっているかを実際に測ります。感覚ではなく分単位の数字にしてください。労働生産性の向上を説明する土台がここでできます。

第2歩:カタログか一般型かを決める

その作業が汎用製品で片づくならカタログ注文型、自社の現場に合わせる必要があるなら一般型です。迷ったら軽いほうから当たるのが失敗しにくい進め方です。

第3歩:GビズIDプライムを取る

申請は電子申請なので、GビズIDプライムアカウントが必要です。中小機構の申請の流れのページも、取得には一定の期間を要するため早めに手続きするよう促しています。ここが最初の関門で、締切直前に慌てて詰むのはたいていこの工程です。

第4歩:賃上げの数字を置く

1人当たり給与支給総額を年平均で何%伸ばせるか、経営者が決めます。大幅賃上げ特例を使うかどうかも、この段階で決めます。上限額から逆算して背伸びした数字を置かないでください。約束は5年つきあうことになります。

そのまま使えるプロンプト

角かっこを自社の内容に置き換えて貼り付けてください。作業の仕分けと、時間の数え方の設計まで一度に出てきます。補助金の可否そのものはAIに判定させません。

あなたは、中小企業の業務改善を支援する専門家です。次の条件で作業の仕分け表を作ってください。 ―――当社の状況――― 業種:[業種]/従業員数:[人数]人/いま人手が足りない部署:[部署]/減らしたい作業:[箇条書きで5つほど] ―――踏まえる前提(これ以外の事実・制度を足さない)――― ・文書の作成、要約、下書き、問い合わせへの返信はAIソフトで減らせる可能性が高い ・物を運ぶ、詰める、拭く、並べるといった物理的な作業はAIソフトでは減らない ・補助金の対象になるかどうかの判断はしない(公募要領と事務局への確認事項として書く) ―――作るもの――― 1つ目:作業の仕分け表。列は「作業名/1日の所要時間(私が測る欄・空欄)/AIソフトで減るか/設備で減るか/まず試すこと」。 2つ目:所要時間の測り方の手順を5行で。誰が、いつ、何日ぶん測るかを具体的に書く。 次の条件で作成してください。 条件1:補助金の対象可否・採択の見込みは書かない。判断が要る箇所は「要確認」と書く。 条件2:金額の見積もりや製品名の推薦はしない。 条件3:一文は60字以内。専門用語にはかっこ書きで説明を添える。 条件4:私が渡していない事実・数字・制度名は作らない。会社が決める箇所は文末に「決める必要がある点」として箇条書きで示す。

条件1と条件2が肝です。補助金の可否や製品の推薦をAIに言わせない。そこは公募要領と事務局、そして支援機関の仕事です。指示文の組み立て方そのものはAIへの指示(プロンプト)の基本の書き方から確認してください。

つまずきやすい3つの誤解

最後に、この制度で特に多い誤解を3つ挙げます。どれも資金繰りと段取りに直結します。

誤解1:補助金は先にもらえる

補助金は後払いです。交付決定を受けてから設備を導入し、実績報告を経て支払われます。交付決定の前に発注すると、補助の対象外になり得ます。手元資金や金融機関との調整を先に済ませてください。

誤解2:交付決定額は全額もらえる

中小機構の申請の流れのページは、補助金の交付について必ずしも交付決定を受けた補助額の全額が支払われるわけではないと説明しています。実績報告の内容によって減額されることがあります。上限額を前提に資金計画を組まないでください。

誤解3:買って終わり

補助事業が完了したあとも、5年間にわたって毎年の事業実施効果報告が求められます。生産性や給与の数字を毎年報告するということです。買って終わりではなく、5年つきあう制度だと理解しておくと、選ぶ設備の基準も変わります。

公募開始と申請受付開始は別の日

第8回は2026年8月18日に公募が始まりましたが、申請の受付開始は9月中旬の予定、締切は10月中旬の予定です。この1か月は、公募要領を読んで計画を作るために空いている時間です。受付開始を待ってから動き始めると、相見積もりとGビズIDの取得が間に合わなくなります。なお日程はいずれも予定であり、確定情報は必ず公式サイトで確認してください。

今日確認する5項目

  • 減らしたい作業を書き出し、1日あたり何分かかっているか数えたか
  • その作業が書類仕事か、物を動かす作業かを仕分けたか
  • カタログ注文型で足りるか、一般型が要るかを判断したか
  • GビズIDプライムアカウントの取得手続きを始めたか
  • 労働生産性と1人当たり給与支給総額の伸び率を、数字として置いたか

5つ全部そろっている必要はありません。まずは4つ目、GビズIDの取得から始めてください。ここは会社の意思決定を待たずに動かせて、しかも時間がかかる唯一の工程です。

よくある質問(Q&A)

うちは従業員4人の小さな会社なんですが、こんな補助金でも使えるんでしょうか。

使えます。むしろ補助率の面では有利です。一般型の補助率は中小企業が2分の1ですが、小規模企業者・小規模事業者は3分の2になります。補助上限額は従業員5人以下で一般型が750万円、カタログ注文型が200万円です。ただしカタログ注文型の5名以下の上限は、2026年3月19日以降の申請分で500万円から200万円に引き下げられています。少し前の解説記事を見ていると金額を読み違えるので、必ず公式サイトの最新の記載で確かめてください。小規模だからという理由で対象外になることはありません。

AIのソフトを入れたいだけなんですけど、この補助金でいけますか。

この補助金ではなく、デジタル化・AI導入補助金を見るほうが早いです。省力化投資補助金の一般型は、機械装置・システム構築費が必須の経費区分になっており、その周りに技術導入費やクラウドサービス利用費が付く構成です。ソフトウェアだけを入れたい場合は、制度の想定から外れます。逆に、現場の機械を入れたうえでそれを動かすシステムやクラウドを組む、という形なら一般型の射程に入ります。何を中心に据えるかで制度が決まると考えてください。

賃上げの約束が守れなかったら、補助金を返すことになるんですか。

取り扱いは公募要領に定めがあるため、必ず最新の公募要領と事務局への確認で判断してください。一般的な考え方として、この補助金は労働生産性の年平均成長率4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上を基本要件とし、補助事業の完了後も5年間の事業実施効果報告を求める仕組みです。達成できなかった場合の扱いが定められている以上、背伸びした数字を置かないことが最大の防御になります。特に大幅賃上げ特例は年平均6.0%以上に加えて事業所内最低賃金の上乗せも要ります。上限額の大きさに引かれて安易に選ばないでください。

まとめ

  • 中小企業省力化投資補助金の第8回公募は2026年8月18日に開始。申請受付は9月中旬、締切は10月中旬、採択発表は2027年2月上旬の予定。
  • 補助上限は従業員数で決まる。一般型は750万円から8,000万円、大幅賃上げ特例で最大1億円。カタログ注文型は200万円から1,000万円(同1,500万円)。
  • IPAの調査ではAI導入効果のうち業務効率化が91.6%、売上向上は3.9%。書類仕事はAIソフト、物を動かす作業は設備と、性質で打ち手を分ける。

補助金の記事はどうしても金額の話になります。けれど現場で決め手になるのは、いくらもらえるかではなく、どの作業を何分減らすと決めたかのほうです。その1行が書けていれば、事業計画は書けます。書けていなければ、上限額の大きい制度を選んでも申請書は埋まりません。今日できるのは、作業を1つ選んで時間を測ることです。

無料資料:AI業務改善チェックリスト

AIの使いどころと、人が確認すべき場面を整理しましょう。

筆者コメント

ある食品加工の会社で、社長が「うちもAIを入れたい」と言うので話を聞いたところ、いちばん人手を食っていたのはできあがった商品を箱に詰めて並べる作業でした。AIの出番はほとんどありません。必要だったのは機械でした。それでも、受注のメールを台帳に書き写す作業は毎日40分あり、そちらはその週のうちに半分になりました。

人手不足という言葉は大きすぎて、そのままでは打ち手に結びつきません。作業の名前まで小さくすると、AIか設備か、答えは自然に決まります。補助金は、その答えが「設備」だったときのための道具です。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

── AutoAIPlatform編集部

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。