償却資産の申告は「1月1日の持ち物」の報告
償却資産とは、事業に使う機械や備品のうち、土地と家屋を除いたものです。パソコン、複合機、レジ、厨房機器、看板などが当てはまります。これらにも、土地や建物と同じく固定資産税がかかります。
東京都主税局の固定資産税(償却資産)のページによると、基準日は1月1日です。その日に持っている償却資産を、1月31日までに申告します。税率は1.4%で、決算月に関係なく全員の期限が同じです。
次の申告は2027年1月です。2027年1月31日は日曜日に当たります。休日の扱いで期限が延びることがあるため、提出先の市区町村が送ってくる手引きで日付を確かめます。令和8年度の東京都の手引きでは、期限は2026年2月2日(月)でした。
令和9年度分から免税点が上がる
免税点とは、これより少なければ固定資産税がかからない金額の線です。償却資産では、同じ市区町村にある資産の課税標準額の合計で判断します。課税標準額は、取得した金額から年数に応じた目減りを引いた評価額が基本です。
この線が上がります。総務省の令和8年度地方税制改正に関する事務連絡(2026年1月21日)は、「償却資産に係る免税点を180万円(現行:150万円)にそれぞれ引き上げる」と明記しています。同じ文書は、改正を令和9年度以後の年度分の固定資産税に適用するとしています。
総務省の固定資産税の概要のページも、令和9年度以後の免税点として、償却資産と家屋の引き上げ後の金額を載せています。2027年1月に出す申告が、この新しい線で判定される最初の申告です。
数字で見る償却資産の納税義務者
総務省の令和7年度 固定資産の価格等の概要調書(償却資産 都道府県別表)によると、全国の納税義務者は505万3,713人です。このうち免税点以上で課税されたのは185万3,210人でした。
残りの320万503人、つまり約63%は免税点未満です。小さな店や事務所の多くは、申告しても税金がかからない側にいます。
同じ調書の段階別の表では、課税標準額が150万円以上180万円未満の人は12万1,964人でした。課税された人の約6.6%が、改正後は課税されなくなる層に当たります。仮に課税標準額が170万円なら、これまでの税額は年2万3,800円でした。
免税点未満でも申告は必要
ここで誤解しやすい点があります。免税点が上がっても、申告をしなくてよくなるわけではありません。申告の義務は地方税法第383条にあり、税金がかかるかどうかとは別の決まりです。
秋田市の固定資産税のよくある質問は、免税点未満と思われる場合について「申告が必要です」と明記しています。申告がないと、市区町村は合計が線の下かどうかを判断できないからです。
正当な理由なく申告しなかった場合は、過料を科されることがあると東京都主税局も案内しています。対象の資産を持っていない年も、「該当資産なし」と書いて出すのが基本です。
申告する資産・しない資産の見分け方
迷いやすいのは、買ったときの経理の処理によって、申告するかどうかが分かれる点です。東京都主税局のページと、国税庁のNo.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例をもとに整理します。
| 買ったときの処理 | 金額の目安 | 申告 | 例 |
|---|---|---|---|
| 一度に経費にした | 10万円未満 | しない | マウス・小型の棚 |
| 3年で均等に経費にした(一括償却) | 20万円未満 | しない | 事務用の椅子 |
| 少額減価償却資産の特例で経費にした | 40万円未満(2026年4月以後の取得) | する | ノートパソコン |
| 通常の減価償却をしている | 金額を問わない | する | 複合機・厨房機器 |
| ソフトウェア・特許など | 金額を問わない | しない | 購入した会計ソフト |
落とし穴は3行目です。国税庁によると、この特例の対象は2026年4月1日以後の取得分から40万円未満に広がりました(改正前は30万円未満)。経費で落としたパソコンでも、償却資産としては申告するので注意します。
AIへの投資は申告の対象になるか
AIの導入で買ったものは、形があるかどうかで分かれます。AI用のパソコンやサーバー、AIで不良品を見分けるカメラや検査装置は、形のある事業用の資産なので申告の対象です。
一方、生成AIの月額利用料は資産ではなく毎月の経費です。購入したソフトウェアも無形の資産なので、償却資産の申告には含めません。設備投資の税制との関係はAIの設備投資と税金の記事で整理しています。
台帳をAIで仕分ける4つの手順
まず、固定資産台帳や会計ソフトの資産一覧から、品名、取得年月、取得価額、経理の処理だけを表に写します。仕入先や担当者の名前は要りません。次に、表1をそのまま貼ったうえで、AIに1行ずつ仕分けさせます。
そのまま使えるプロンプト例
あなたは中小企業の経理を手伝う担当者です。下に当社の資産一覧(品名・取得年月・取得価額・経理の処理)を貼ります。次の基準で、1行ずつ「申告する」「申告しない」「人が確認」に分けて表にしてください。基準:[表1を貼る]。基準に当てはまらないものや、処理が書かれていないものは、推測せず「人が確認」にしてください。最後に、前年の申告から増えた資産と、手放した資産を別の表にまとめてください。資産一覧:[ここに貼る] 前年の申告:[ここに貼る]
前年の申告との差を出すのは、償却資産の申告が「増えた物・減った物」を中心に書く仕組みだからです。廃棄したパソコンを書き忘れると、持っていない物に税金がかかり続けます。AIの表は、会計ソフトの資産数と件数が合うかを必ず数えます。
提出は紙のほか、地方税の電子申告eLTAXでもできます。東京都主税局によると、eLTAXなら会社からインターネット経由で申告できます。初めての場合は電子証明書の取得と利用届出が要るので、12月中に準備を済ませると安心です。
AIに任せてはいけない3つの判断
1つ目は、免税点や期限の数字です。AIは学習した時期によって、免税点を改正前の金額のまま答えることがあります。数字は必ず総務省や市区町村の資料で確かめます。AIの答えを確かめる手順はAIの数字を公的統計で確かめる記事で紹介しています。
2つ目は、「人が確認」に分けられた資産の扱いです。建物と一体になった設備は、家屋として課税されるか償却資産になるかの境目にあります。判断は、市区町村の資産税の窓口か顧問税理士に聞きます。
3つ目は、申告書の最終確認です。AIは仕分けと集計の下書き役で、提出の責任は会社が持ちます。担当者以外の1人が、件数と合計額を表計算で検算してから出しましょう。
台帳をそのままAIに貼らない
固定資産台帳には、設置場所の住所やリース会社名が載っていることがあります。仕分けに要るのは品名・取得年月・金額・処理だけです。会社で契約した、入力が学習に使われない設定のAIを使うことが前提です。
よくある質問(Q&A)
免税点が上がるなら、うちみたいな小さい会社は償却資産の申告をしなくていいんですか?
いいえ、申告は必要です。免税点は税金がかかるかどうかの線で、申告の義務は別の決まりです。合計が線の下でも、持っている資産を毎年1月に申告します。
少額減価償却資産の特例で全額経費にしたパソコンも、償却資産の申告に書くんですか?
書きます。特例で経費にした資産は、償却資産の申告の対象です。申告しなくてよいのは、10万円未満で一度に経費にした物と、20万円未満で3年の一括償却にした物です。
ChatGPTの有料プランの料金は、償却資産として申告するんですか?
しません。月額の利用料は毎月の経費で、形のある資産ではないからです。ただし、AIを動かすために買ったパソコンやサーバーは申告の対象になります。
まとめ
- 償却資産の免税点は令和9年度分から150万円から180万円に上がる。最初の判定は2027年1月の申告。
- 免税点未満でも申告は必要。特例で経費にしたパソコンも申告の対象になる。
- AIは台帳の仕分けと前年との差の下書き役。数字の確認、境目の判断、提出の責任は人が持つ。
償却資産の申告は、年に1回しかないので手順を忘れがちです。毎年「去年はどうしたっけ」から始まる会社も多いと思います。
今年はAIで仕分けた表を、そのまま来年の下書きとして残してください。表を残す会社ほど、翌年の申告は早く終わります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
── AutoAIPlatform編集部