「経営力向上計画」とは何か
経営力向上計画は、中小企業等経営強化法にもとづく国の認定制度です。中小企業庁は「経営力向上支援」のページで、この計画を「自社の経営力を向上するために実施する計画」と明記しています。人材育成やコスト管理、設備投資の計画を書き、認定を受けると支援が使えます。
制度は2016年7月1日に始まりました。中小企業庁の「経営力向上計画」の認定状況によると、2026年7月31日現在の認定は累計20万3,100件です。業種別では製造業が7万347件、建設業が5万5,758件、卸・小売業が1万8,717件でした。工場や現場だけの制度ではありません。情報通信業も4,648件あります。
認定で受けられる3つの支援
中小企業庁の「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」(令和8年4月1日版)は、支援を3つに分けています。税制措置、金融支援、法的支援です。
中小企業がAI投資で使いやすいのは、1つ目の税制です。金融支援は、政策金融機関の融資や信用保証などです。ただし金融支援は、計画を出す前に関係機関へ相談する必要があります。法的支援は、事業を引き継ぐときの許認可の扱いなどに関わるもので、今回は触れません。
税制の中身と、2つの類型
中心になるのは「中小企業経営強化税制」です。認定計画にもとづいて新しく取得した設備は、即時償却か、取得価額の10%の税額控除を選べます。資本金3,000万円超の法人は、税額控除が7%になります。税額控除は、その年の法人税額の20%が上限です。
対象設備の決め方は4つの類型に分かれます。AI投資で検討しやすいのは、次のA類型とB類型です。
| 項目 | A類型(生産性向上設備) | B類型(収益力強化設備) |
|---|---|---|
| 主な要件 | 旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上 | 投資利益率が年平均7%以上の投資計画 |
| 確認する人 | 設備メーカーを通じて工業会等が証明 | 税理士等の事前確認の後、経済産業局 |
| ソフトの条件 | 情報収集と分析・指示の機能、70万円以上、販売5年以内 | 70万円以上 |
| 向く投資 | メーカーの既製品を買う | 複数の設備を組み合わせる |
手引きによると、機械装置は160万円以上、器具備品は40万円以上が最低価額です。B類型の確認書は、経済産業局へ説明してからおおむね1か月以内に発行されます。
AI投資で対象になりやすいもの
この税制は、取得した減価償却資産が対象です。AIの画像検査装置や、AIを組み込んだ在庫・生産管理のソフトを買う場合は、検討の余地があります。一方、毎月の利用料だけを払うAIサービスは、取得した設備ではないため、この税制には乗りにくいと考えてください。
中小企業庁の「中小企業経営強化税制に関するQ&A集」は、細かな線引きも示しています。中古品は対象になりません。リースはファイナンス・リースなら対象ですが、オペレーティング・リースは対象外です。迷ったら、買う前に販売元と税理士に確認します。
見積もりの段階で、販売元に3つ聞いておくと話が早く進みます。工業会の証明書を出せるか、販売開始はいつか、本体とソフトの取得価額はいくらか、です。この3つが分かれば、A類型を使えるかの見当がつきます。
順番を間違えると使えない
いちばん多い失敗は、先に買ってしまうことです。同じQ&A集は「経営力向上設備等は、計画認定後に取得することが原則」と明記しています。工業会の証明書や経済産業局の確認書も、設備を取得する前に申請が必要です。
例外として、設備を先に取得した場合は、取得日から60日以内に計画の申請書が届けば対象になり得ます。それでも、その事業年度内に認定を受けなければ税制は使えません。認定までの目安は約30日で、電子申請かつ経済産業部局だけが宛先なら約14日です。決算月が近い会社ほど、早めに動きます。
計画書の下書きはAIに任せる
計画書は、自社の現状、目標、取り組みの内容を書く書類です。中小企業庁の「経営力向上計画策定の手引き」は、目標の指標に労働生産性を使う形を示しています。計算式は、営業利益・人件費・減価償却費の合計を、労働投入量で割ったものです。計画期間は3年、4年、5年から選びます。
ここはAIが得意です。手引きの読み込み、現状の課題の文章化、取り組みの書き分けを任せると、白紙から書くより早く進みます。補助金の計画書をAIで書くときの考え方は補助金の事業計画書とAIの記事でも解説しています。
そのまま使えるプロンプト例
あなたは中小企業の経営計画づくりを手伝う担当者です。下に、当社の事業の概要、いまの課題、導入を考えているAI設備の説明を貼ります。中小企業庁の経営力向上計画の項目(現状認識、目標、経営力向上の内容、実施時期)に沿って、文章の下書きを作ってください。ただし、売上や利益、労働生産性などの数字は書かず、「(決算書から記入)」と空欄にしてください。税制の対象になるかは断定せず、確認すべき点を最後に質問として並べてください。事業の概要:[ここに貼る] 課題:[ここに貼る] 設備:[ここに貼る]
数字と判断は人と専門家が持つ
AIに任せてはいけないのは、決算書の数字と税制の当てはめです。AIは、もっともらしい控除率や期限を書くことがあります。数字は決算書から人が写し、制度の条件は最新の手引きで確かめます。
B類型では、確認申請書を公認会計士か税理士に事前確認してもらう必要があります。A類型も、証明書は設備メーカーを通じて取り寄せます。税務申告では、証明書や認定書の写しを添付します。社外の専門家との段取りは、AIではなく人の仕事です。
AIの答えで「対象です」と決めない
税制の対象になるかは、設備の種類、取得価額、事業の内容、決算期で変わります。AIの答えは確認する項目の一覧として使い、最終判断は税理士や経済産業局に確認してください。
期限は2027年3月31日
手引きによると、この税制の指定期間は2017年4月1日から2027年3月31日までです。期限の延長は税制改正で決まるため、いまの時点では「来年3月まで」と考えて計画するのが安全です。
補助金との組み合わせもできます。Q&A集は、補助金を受けた設備も原則として対象と説明しています。ただし、圧縮記帳をした場合は補助金分を差し引いた額が基準です。省力化の補助金は中小企業省力化投資補助金の記事で整理しています。
逆算すると、3月決算の会社が年度内に設備を入れるなら、年内に販売元へ相談するのが目安です。証明書の取り寄せ、計画の下書き、認定の待ち時間を足すと、2か月ほどはかかると見ておきます。投資の効果をどう測るかはAIの費用対効果の記事も参考にしてください。
よくある質問(Q&A)
ChatGPTの有料プランの料金も、この税制で安くなりますか?
毎月の利用料は取得した設備ではないため、中小企業経営強化税制の対象にはなりにくいと考えてください。対象になり得るのは、買い取る設備やソフトです。迷ったら税理士に確認しましょう。
もうAIの検査装置を買っちゃったんですが、今から計画を出しても間に合いますか?
取得日から60日以内に計画の申請書が届けば、対象になり得ます。さらに、その事業年度内に認定を受ける必要があります。認定までは約30日かかるので、すぐに準備を始めてください。
経営力向上計画って、AIに全部書かせても大丈夫ですか?
文章の下書きはAIに任せられます。ただし、決算書の数字や税制の当てはめは人が確かめます。自社で本当に実行する取り組みだけを残してから申請してください。
まとめ
- 経営力向上計画の認定は累計20万3,100件。認定でAI設備の投資に即時償却か10%の税額控除を選べる場合がある。
- 対象は取得する設備やソフト。月額の利用料、中古品、オペレーティング・リースは乗りにくい。
- 原則は認定を受けてから取得。計画の下書きはAI、数字と判断は人と専門家。期限は2027年3月31日。
AIの投資は、効果の見通しが立てにくいぶん、決断が遅れがちです。税の負担が軽くなる制度を知っていれば、判断の材料が1つ増えます。
大事なのは順番です。買う前に計画、計画の前に相談。まずは導入したい設備の販売元に、証明書が出せるかを聞くところから始めてみてください。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
── AutoAIPlatform編集部