通販は26.1兆円、説明文が接客になった
経済産業省が2025年8月26日に公表した令和6年度電子商取引に関する市場調査によると、2024年の国内BtoC-EC市場は26.1兆円で、前年比5.1%増でした。物販分野のEC化率は9.8%、前年比0.4ポイント増です。
分野別では「食品、飲料、酒類」が3兆1,163億円で最も大きく、EC化率では「書籍、映像・音楽ソフト」が56.45%に達しています。身近な商品ほど、画面の中で選ばれている状況です。個人間取引のCtoC-ECも2兆5,269億円まで伸びました。
この市場で、お客様が手に取って確かめる代わりに読むのが商品説明文です。店員の説明を、文章が肩代わりしていると考えると、書く量の多さも納得できます。AIが役に立つのは、まさにこの量の部分です。
AIの下書きが持ち込む2つの危うさ
AIに商品説明文を書かせると、2種類の危うさが入り込みます。1つ目は誇張です。「最高品質」「業界初」「圧倒的な人気」といった言葉を、AIは何の迷いもなく差し込みます。販促文の型として学習しているからです。
2つ目は作り話です。渡していない情報をAIが補うと、素材の配合比、産地、受賞歴、満足度の数字までそれらしく埋まります。書いた本人が読むと、自社の資料に書いてあった気がしてしまうのが厄介なところです。
どちらも、公開前に人が読めば見つかります。問題は何を探せばよいかを決めずに読むことです。探す対象は「事実かどうかを自分で確かめられない言葉」に絞れます(AIの答えを確かめる手順)。
誤って書いた場合も、規制の対象になる
商品の内容を実際より良く見せる表示は、景品表示法第5条第1号の優良誤認表示にあたります。消費者庁は優良誤認とはで、「故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても、優良誤認表示に該当する場合は、景品表示法により規制される」と明記しています。
ここがAIを使うときの要点です。「AIが勝手に書いた」は、責任を軽くする事情になりません。表示をしたのは、そのページを公開した事業者だからです。
逆に言えば、身構えすぎる必要もありません。素材・寸法・産地・数量のような事実の説明は、仕入資料のとおりに書けば済みます。注意して見るのは、他社との優劣や効果をうたう部分だけです。
「満足度No.1」は調査の中身で決まる
消費者庁は2024年9月26日に「No.1表示に関する実態調査報告書」の公表についてを出しました。広告から368サンプルを集め、消費者1,000名への意識調査と15社へのヒアリングを行った調査です。
背景として報告書が挙げているのは、措置命令の増加です。令和5年度に措置命令を受けた44事業者のうち13事業者がNo.1表示に関するもので、いずれもイメージ調査を根拠に「顧客満足度No.1」などと表示していました。
お客様の受け取り方も調べられています。No.1表示が購入の意思決定に「かなり影響する」「やや影響する」と答えた人は約5割。4割を超える人が「実際の利用者に調査をしていると思う」と答えました。効くからこそ、根拠が問われます。
「1フレーズ10万円」の勧誘に注意
同報告書のヒアリングでは、調査会社などから勧誘を受けてNo.1表示を始めた例が多く、費用の安さ(1フレーズ10万円〜数十万円)に魅力を感じたという回答が目立ちました。安く買える表示は、根拠も薄いことがあります。
そのまま使える表現と、根拠が要る表現
公開前の確認は、表現の種類ごとに分けると速く終わります。全文を疑うのではなく、下の2行目以降だけを疑えば足ります。
| 表現の種類 | 例 | 公開前に必要なもの |
|---|---|---|
| 事実の説明 | 綿100%、幅30cm、〇〇県産 | 仕入資料・仕様書と突き合わせる |
| 比較・最上級 | 満足度No.1、業界初、最安値 | 客観的な調査結果と、その実施日 |
| 効果・性能 | 3日で変わる、よく落ちる | 試験・調査によって得られた結果 |
| 体験談・口コミ | お客様の声、〇%が満足 | 実際の投稿と、集めた方法の記録 |
| 価格・お得表示 | 通常価格の半額、期間限定 | 比較対象の価格で売っていた実績 |
この表を社内の確認手順にすると、担当者が変わっても同じ品質になります。AIへの指示にも、そのまま条件として書けます(プロンプトの基本の書き方)。
根拠は「書いた日」に保存する
効果や性能をうたった表示については、消費者庁が根拠資料の提出を求められます。不実証広告規制と呼ばれる仕組みで、求められた資料を期間内に出せない場合、その表示は不当表示とみなされます。
資料として認められる条件も示されています。消費者庁は同ページで、「提出資料が客観的に実証された内容のものであること」「表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること」の2つを満たす必要があると明記しています。
実務としてやることは1つです。説明文を書いた日に、根拠資料を同じフォルダへ入れる。調査名・実施者・実施日・対象・数値の5項目をメモに残せば十分です。後から探すと、たいてい見つかりません。
30分で説明文を作る4手順
1つ目は材料集めです。仕様書に書いてある事実だけをAIに渡します。ここで「人気の商品です」といった評価を混ぜると、AIはそれを前提に話を膨らませます。
2つ目が下書きです。長さと語調を指定して3案出させ、いちばん近いものを選びます。1案だけ作らせて直すより、選ぶほうが速く終わります。
3つ目が削る工程で、ここが本番です。No.1・最高・完全・絶対・業界初といった語を検索して、根拠資料が手元にないものは全部消します。消しても文章は成立します。
4つ目が保存です。残した表現の根拠を、商品ごとのフォルダにまとめます(小売店のAI活用)。
古いページも、同じ手順で点検できる
AIは点検にも使えます。既存の商品ページの文章を貼り付け、根拠が要る表現だけを一覧にしてと頼めば、確認すべき箇所が並びます。1日5商品ずつ進めれば、100商品でも1か月で終わります。
2024年10月、罰則が一段強くなった
令和5年に改正された景品表示法が、2024年10月1日に施行されました。消費者庁の【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要によると、優良誤認表示・有利誤認表示に対する直罰(100万円以下の罰金)が新設されました。
もう1つが加算の規定です。違反行為から遡って10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者には、課徴金の額が1.5倍に加算されます。繰り返しに重い扱いをする形です。
一方で、自主的に直す事業者への道も作られました。是正措置計画を申請して認定を受ければ、措置命令や課徴金納付命令の適用を受けない確約手続です。気づいた時点で直すほうが、結果として軽い制度設計になっています。
そのまま使えるプロンプト
事実だけを渡し、根拠が要る表現を使わせないプロンプトです。角かっこを置き換えてください。
条件2が効きます。足りない情報を「不明」と書かせると、AIが埋めてしまう部分が目に見える形で残ります。
よくある質問(Q&A)
AIが書いた文章でも、うちの責任になるんですか。
なります。表示をした事業者が責任を負う仕組みで、下書きを誰が作ったかは関係ありません。消費者庁は、誤って表示してしまった場合も規制の対象になると明記しています。だからこそ、公開前に人が読む工程を外さないでください。
「No.1」は、自分で調べたアンケートでも使えますか。
調査の中身によります。消費者庁の実態調査で問題視されたのは、商品を使っていない人に印象を聞くイメージ調査を根拠にした例でした。実際の利用者に、偏りが出ないやり方で聞いた結果かどうかが分かれ目です。判断に迷う調査なら、その表現は使わないほうが安全です。
昔書いた商品ページも、直さないといけませんか。
公開中の表示はすべて対象です。ただ、一度に全部を直す必要はありません。売れ筋の商品と、効果をうたっている商品から順に点検します。AIに一覧化させれば、1商品あたり数分で終わります。
まとめ
- 2024年のBtoC-EC市場は26.1兆円、物販のEC化率は9.8%。商品説明文が接客の代わりを果たしている。
- 消費者庁は、誤って表示した場合も優良誤認表示の対象になると明記している。AIが書いた、は理由にならない。
- 公開前に消すのは根拠のない優劣表現だけ。残した表現は、書いた日に根拠資料を保存する。
文章を書く速さは、AIで何倍にもなります。速くなった分を、確認に回すのがいちばん安全です。
ある雑貨店の商品ページを見せてもらったとき、「お客様満足度No.1」と大きく書かれていました。根拠を尋ねると、少し困った顔をされました。仕入先の資料に載っていたのを、そのまま写したそうです。
悪意はどこにもありません。写した人も、書いた人も、誰かが調べた結果だと思っていただけです。AIを使うと、この「誰かが調べたはず」が、もっと速く増えます。根拠を出せない言葉は、売り場に置かない。この一つを決めておくと、ページを増やすのが怖くなくなります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
── AutoAIPlatform編集部