農業経営体は83万6千、法人は5年で10.1%増

農林水産省の「2025年農林業センサス結果の概要(確定値)」の公表について(2026年3月31日)によると、2025年2月1日時点の農業経営体は83万6千経営体でした。5年前より24万経営体、22.3%減っています。

一方で、農業経営体のうち法人経営体は3万4千経営体となり、5年前より3千経営体増えました。1経営体あたりの経営耕地面積は3.6ヘクタールで、0.5ヘクタール広がっています。

同省はこの結果について「農業経営体の減少が続く中で、法人化や規模拡大が進展しています。」と明記しています。経営耕地面積20ヘクタール以上の経営体が、面積で全体の約5割を占めるようになりました。

畑や田んぼは広がり、人は減っています。作業の記録、取引先とのやり取り、雇った人への説明といった書く仕事は増える側にあります。ここをAIで軽くするのが、この記事の目的です。

AIが効く農業の3場面

農業でAIが効く3つの場面。1.作業日誌・記帳(メモを表の形に整える)。2.直売所・ネット販売(商品説明とPOPの文案)。3.作業の手順書(やさしい日本語と翻訳)。
図1|農業でAIが効く3つの場面

1つ目は作業日誌と記帳です。スマートフォンのメモや手書きの記録を、日付・場所・作業・資材の表に整えます。

2つ目は直売所とネット販売の言葉です。商品説明、POP、お客さまへの季節のお知らせを、AIに下書きさせます。

3つ目は作業の手順書です。収穫の仕方や機械の片づけ方を、研修生やパートの方に伝わる言葉に言い換えます。どれも、畑の状態を見る判断ではなく、文章を作る仕事です。

業務ごとの任せ方を表で比べる

同じ文章の仕事でも、間違えたときの重さは違います。農業の主な事務を、AIに任せる部分と人が確かめる点に分けました。

表1|農業の業務ごとの、AIに任せる部分と人が確かめる点
業務AIに任せる部分人が確かめる点
作業日誌メモを表の形に清書日付と資材の数字が記録どおりか
直売所のPOP短い売り文句の案産地・品種・値段の正しさ
ネット販売の説明商品説明の構成と文案「無農薬」など表示の言葉
作業の手順書やさしい言い換えと翻訳安全の注意が抜けていないか
農薬の散布計画任せないラベルを見て人が決める

下の行ほど、間違えたときに作物、食べる人、働く人の体に響きます。AIは畑を見ていません。安全に関わる文は、経営者か現場の責任者が最後に読む決まりにしてください。

作業日誌と記帳はAIで「整える」

作業日誌は、農薬や肥料の使用を記録する大事な書類です。農林水産省の通知「農薬適正使用の指導に当たっての留意事項について」(2007年3月28日)も、農薬を使うときに的確に記帳するよう指導を求めています。

AIが手伝えるのは、記録の形を整えることです。「3日 東の畑 トマト 液肥 午前」のようなメモを渡し、日付・場所・作物・作業・資材の列に並べ直してもらいます。

ただし、資材の名前、量、倍率、回数は、AIに推測させません。メモに無い数字をAIが補って書くことがあるからです。数字はメモから人が書き写すと決め、表ができたら元のメモと1行ずつ照らします。

同じ通知は、作業の手順をチェックリストにして記録する取り組みを「極めて有効」としています。AIは、このチェックリストの下書きづくりにも使えます。

直売所とネット販売の商品説明を下書きする

直売所のPOPやネット販売の説明は、毎シーズン書き直す言葉の仕事です。品種の特徴、おすすめの食べ方、保存の仕方を箇条書きで渡せば、AIは読みやすい文案を作れます。書き方の基本はネット販売の商品説明の記事にまとめています。

気をつけたいのは、AIがそれらしい言葉を足すことです。「朝どれ」「完熟」「農薬不使用」「地域で一番甘い」といった言葉を、事実を確かめずに書いてしまうことがあります。

栽培の方法や産地を示す言葉は、食品表示や広告の決まりに関わります。AIに頼むときは「事実として渡したことだけを書く」「比べる言葉や言い切りを使わない」と最初に伝えてください。出てきた文は、出す前に生産した本人が読みます。

研修生やパートへの手順書をやさしい言葉に

人が減るなかで、繁忙期だけ来るパートの方や、外国から来た研修生に作業を教える場面が増えています。口で伝えた手順は、次の年には忘れられがちです。

そこで、ベテランが話した手順を書き起こし、AIで短い文の手順書に直します。「1文を短く」「むずかしい漢字にふりがな」「母語への翻訳も並べる」と頼めば、伝わりやすい形になります。外国の方への伝え方は外国人スタッフとのやり取りの記事も参考になります。

手順書でいちばん大事なのは、安全の注意です。刃物や機械の扱い、農薬を扱う日の服装、熱中症の目安は、AIの言い換えで抜けていないかを責任者が必ず確かめます。

農薬と病害虫の判断はAIに任せない

農薬の使い方には、法律にもとづく使用基準があります。前述の農林水産省の通知は、農薬を使うときに「ラベルに記載されている適用作物、使用時期、使用方法等を十分に確認する」よう指導を求めています。

同じ通知は、ラベルの確認が不十分なために、適用作物や使用時期を取り違える例があると指摘しています。AIは、そのラベルを見ていません。品目に使えるか、何倍に薄めるか、収穫の何日前まで使えるかは、AIの答えで決めてはいけません。

病害虫の写真をAIに見せて名前を聞くと、もっともらしい答えが返ってきます。けれど、見立てが外れれば、効かない農薬をまくことになります。AIの答えは「調べる手がかり」にとどめ、普及指導センターやJAの営農指導員、農薬のラベルで確かめてください。

AIに聞いてよいのは「どこを調べるか」まで

「この症状なら、ラベルのどこを見ればいい?」「普及指導センターに何を伝えればいい?」という聞き方なら、AIは役に立ちます。倍率や回数の答えをそのまま使うのはやめましょう。

AIに任せない線

AIに任せてよい仕事と人が決めること。AIに任せてよいのは日誌メモの清書、商品説明の文案、手順書の言い換え、申請書の下書き。人が決めるのは農薬の種類と量、病害虫の見立て、収穫と出荷の時期、値段と取引の条件。
図2|AIに任せてよい仕事と、人が決めること

線引きの基準は1本です。言い回しはAIに下書きさせ、畑を見る判断と責任は人が持つ。農薬、病害虫、収穫の時期、値段と取引の条件は、すべて後者です。

農業に特化したAIの開発も進んでいます。農林水産省農林水産技術会議事務局の「2024年農業技術10大ニュース(TOPIC 4)」は、農業の専門知識を学ばせた国内初の生成AIを紹介しています。農研機構などが開発し、三重県でイチゴを対象に実証を始めたものです。

こうした専用のAIでも、まだ実証の段階です。一般向けのAIなら、なおさら判断の根拠には使わないのが安全です。

始めるための4歩

農業でAIを始める4歩。1.日誌メモを1日分整える(記録の数字は書き写す)。2.商品説明を1品で試す(産地と品種は自分で確認)。3.確認する人を決める(農薬と表示は人が見る)。4.手順書づくりへ広げる(研修生にも伝わる言葉に)。
図3|農業でAIを始めるための4歩

手順1は、1日分の作業メモを表に整えさせることです。次の文をそのまま使えます。

あなたは農業法人の事務担当です。下の作業メモを、表の形に整えてください。 列:日付/場所(畑の名前)/作物/作業/使った資材/量/作業した人 作業メモ:[ここに今日のメモを貼る] 条件1:メモに無い数字や資材の名前は書かず、空欄にして「[要確認]」と書く。 条件2:農薬の量や倍率を、あなたの知識で補わない。 条件3:お客さまや取引先の名前は入れない。

手順2で、直売所に出す1品の商品説明を作らせます。手順3で、農薬と表示の言葉を見る人を経営者か現場の責任者に決めます。手順4で、繁忙期の作業手順書づくりへ広げます。1か月続けたら、夜の事務がどれだけ減ったかを家族や社員と振り返ってください。

よくある質問(Q&A)

農家でもAIって使える?パソコンが苦手でも大丈夫?

使えます。スマートフォンのAIに、話した言葉や短いメモを渡すだけで始められます。最初は作業日誌の清書や、直売所のPOPの文案など、間違えても畑に影響しない仕事から試してください。

農薬の量や倍率をAIに聞いてもいい?

答えをそのまま使うのはやめてください。農薬は、ラベルに書かれた適用作物、使用時期、使用方法を確かめて使う決まりです。AIには「どこを調べればいいか」だけを聞き、判断はラベルと営農指導員の助言で行います。

直売所の商品説明をAIに書かせるときのコツは?

品種、産地、収穫の日、おすすめの食べ方を箇条書きで渡し、「渡した事実だけで書く」と頼むことです。AIが「完熟」「農薬不使用」などを足していないかを、出す前に生産した本人が読んで確かめます。

まとめ

  • 農業経営体は83万6千で5年前より22.3%減り、法人経営体は10.1%増えた。少ない人で広い農地を回す時代になっている。
  • AIに任せるのは作業日誌の清書・商品説明・手順書の下書き。農薬と病害虫の判断は人が担う。
  • 日誌の数字はメモから人が書き写し、AIに補わせない。
  • 農薬はラベルの適用作物・使用時期・使用方法で決める。AIの答えは調べる手がかりにとどめる。

今夜の作業メモを1日分、AIに表へ整えさせてみてください。できた表を元のメモと照らす。その10分が、安全に使う習慣の第一歩です。

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著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。