9月も310万人、消費額は前年を上回った

日本政府観光局(JNTO)は2026年10月21日に、9月の訪日外客数を公表しました。「訪日外客数(2026年9月推計値)」によると、9月は3,103,700人で、前年同月より5.0%減りました。航空券価格の上昇や台風による欠航が影響したと説明しています。それでも1〜9月の累計は3,000万人を超えました。

同じ日に、観光庁も「インバウンド消費動向調査」の7〜9月期の1次速報を出しました。旅行消費額は2兆2,076億円で、前年同期より3.2%増えています。1人当たりの旅行支出は23万3,677円で、6.1%の増加です。

使われたお金の内訳は、宿泊費が35.2%、買物代が27.7%、飲食費が22.9%でした。人数は伸び悩んでも、1人が使う金額は増えています。お客様一人ひとりへの対応の質が、売上に直結しやすい状況です。

困りごと2位は「スタッフとの会話」

観光庁は毎年、出国前の訪日客に旅行中の困りごとを尋ねています。2026年4月に公表した「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」は、成田・羽田・関西・福岡・新千歳の5空港で4,110件の回答を集めました。

数字で見る訪日客の困りごと。スタッフとの会話に困った15.4%で困りごと2位。会話に困った人のうち困った場所が飲食店だった38%。困った人の対応で最多の、翻訳ツールを使った68%。観光庁の受入環境アンケート(2026年4月公表)。
図1|数字で見る訪日客の困りごと(観光庁 令和7年度調査)

1位は「ごみ箱の少なさ」で17.2%でした。2位が「施設等のスタッフとのコミュニケーション(英語が通じない等)」で15.4%です。前回の15.2%から、ほぼ変わっていません。

ほかにも「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」が10.9%、「クレジット/デビットカードの利用」が10.7%でした。言葉と支払いの困りごとは、店の準備で減らせる項目です。一方で「困ったことはなかった」と答えた人は43.7%でした。半数以上が何かに困っている計算になります。

困った場所は飲食店が38%

同じ調査は、どこで困ったかも尋ねています。スタッフとの会話に困った634人のうち、困った場所の1位は「飲食店」で38%でした。2位は「鉄道駅、バスターミナル」の27%です。小売店や百貨店も20%前後で続きます。

飲食店は、都市部だけを訪れた人でも地方部だけを訪れた人でも1位でした。地方部の飲食店は、多言語表示のわかりにくさでも困った場所の1位に挙がっています。地方の小さな店ほど、注文の場面で言葉の壁に当たりやすいということです。

注文、量の確認、食材の質問、支払い。飲食店の会話は短いやりとりの連続です。聞かれる質問は、意外なほど決まっています。だから先に答えを用意しておけます。

困った人の多くは翻訳ツールで乗り切った

会話に困ったとき、訪日客はどうしたのでしょうか。観光庁の令和7年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」調査結果は、最も多かった対応(68%)を「スタッフ側又は旅行者自らが自動翻訳システムや翻訳アプリケーション等のICTツールを利用してコミュニケーションを行った」と明記しています。翻訳アプリが、すでに現場の会話を支えています。

一方で、31%は「コミュニケーションを諦めた」と答えています。自分で調べて済ませた人たちです。店の側から見れば、聞きたいことがあったのに聞いてもらえなかったお客様です。追加の注文やおすすめの提案が、そこで途切れています。

スマートフォンの翻訳アプリは、その場の会話の助けになります。ただし、話すたびに画面を見せ合うのは時間がかかります。よく聞かれる答えを、紙やWebで先に見せられる形にしておく。その準備にAIが向いています。

場面ごとにAIで準備するもの

多くの店で起こりやすい場面と、AIで準備できるものを表にまとめました。どれも一度作れば、繰り返し使えます。

表1|場面ごとにAIで準備するものと、人が確かめる点
場面AIで準備するもの人が確かめる点
注文・会計メニューの英語・中国語・韓国語の訳価格、税込表示、量の単位
食材の質問「何が入っていますか」への答えの一覧アレルゲンと原材料の正確さ
支払い使える決済方法の案内文実際に使えるカードと端末
予約・問い合わせメール返信の型と、よくある質問取消料・営業時間・定休日
店内の決まり指さし会話シートと注意書き失礼な言い回しになっていないか

言語は、来店の多い国・地域から選びます。7〜9月期の消費額は台湾が3,818億円、中国が3,583億円、韓国が2,938億円でした。韓国は前年同期より45.8%増えています。英語に加え、自店のお客様に多い言語を1つ足すのが現実的です。

AIに任せない3つの情報

AIの翻訳は自然な文になりますが、間違いがあっても自然な文のまま出てきます。外国語が読めない人には、誤りに気づく手がかりがありません。だから、間違えると困る情報を先に決めておきます。

AIで準備するものと、人が確かめるものの比べ方。メニューの英訳と、アレルゲンの表記。よくある質問の答えと、料金と支払い方法。指さし会話シートと、予約の取消の条件。案内メールの下書きと、緊急時の連絡先。
図2|AIで準備するもの、人が確かめるもの

1つ目はアレルゲンと原材料です。誤訳はお客様の健康に直結します。宗教上の理由で豚肉やアルコールを避ける人もいます。2つ目は料金と支払いです。税込か税抜か、席料はあるか。誤解はそのまま苦情になります。

3つ目は取消の条件と緊急時の連絡先です。お金と安全に関わる文は、原文の日本語を人が確定してから訳す。訳した文は、AIに日本語へ訳し戻させて意味がずれていないかを確かめます。外国語ができる知人や取引先に一度見てもらえれば、なお安心です。

外国語の案内を整える4歩

外国語の案内を整える4歩。1.質問を書き出す(現場で1週間メモする)。2.AIで多言語にする(やさしい日本語を先に作る)。3.人が数字を確かめる(価格・時間・アレルゲン)。4.店頭とWebに置く(指さしシートとQRで示す)。
図3|外国語の案内を整える4歩

手順1では、外国人のお客様に聞かれたことを、現場で1週間メモします。10個も集まれば、案内の中身はほぼ決まります。手順2で、答えをまず短い日本語にし、それをAIで訳します。元の日本語が短くはっきりしているほど、訳の誤りは減ります。

手順3では、価格・時間・アレルゲンなどの数字と固有名詞を、日本語の原文と1つずつ照らし合わせます。手順4で、レジ横の指さしシートと、店のWebページに置きます。QRコードで案内ページを開けるようにすれば、お客様が自分の言語で読めます。お客様向けメールの訳し方はAIでビジネス翻訳を安全に行う方法でも扱っています。

そのまま使える多言語化のプロンプト

手順2では、次のように頼めます。角かっこの中は書き換えます。

あなたは、日本の小さな飲食店や小売店の案内文を作る専門家です。外国人のお客様向けに、店の案内を多言語にします。 1. 下の「日本語の案内」を、意味を変えずに短い文へ整えてください。 2. 整えた文を、[英語・中国語(簡体字)・韓国語]に訳してください。 3. 価格・時間・数量・アレルゲンは、日本語の原文の数字と表記をそのまま使い、推測で補わないでください。 4. 最後に、各言語の訳を日本語に訳し戻した文を並べてください。 条件:原文にない情報は書き足さず[要確認]と書く。丁寧だが短い表現にする。 日本語の案内(お客様の個人情報は入れない):[ここに書く]

4の「訳し戻し」が要点です。外国語が読めなくても、意味のずれに日本語で気づけます。予約のお客様の名前やメールアドレスは貼り付けません。入力してはいけない情報はAIに入力してはいけない情報一覧にまとめています。宿泊業の対応は旅館・ホテルのAI活用で解説しています。

よくある質問(Q&A)

英語が話せるスタッフがいない小さな店でも、外国人のお客様に対応できますか?

できます。よく聞かれる質問の答えを、AIで多言語の指さしシートにしておくのが近道です。その場の会話はスマートフォンの翻訳アプリで補います。観光庁の調査でも、会話に困った人の多くは翻訳ツールなどを使って対応していました。

メニューの英訳をChatGPTに任せても大丈夫ですか?

下書きを作らせるのは問題ありません。価格・量・アレルゲンは、日本語の原文と1つずつ照らし合わせます。AIに日本語へ訳し戻させると、外国語が読めなくても意味のずれに気づけます。

英語以外に、何語を用意すればいいですか?

自店に来るお客様の多い言語から選びます。観光庁の2026年7〜9月期の調査では、消費額は台湾・中国・韓国・米国の順でした。英語に加えて、繁体字・簡体字・韓国語のどれか1つを足すのが現実的です。

まとめ

  • 訪日客の困りごと2位は「スタッフとの会話」で15.4%。困った場所は飲食店が最も多い(観光庁 令和7年度調査)。
  • 困った人の多くは翻訳ツールで対応し、31%は会話を諦めた。よく聞かれる答えを先に多言語で見せる準備が効く。
  • 訳はAIに作らせ、価格・アレルゲン・取消の条件は人が原文と照らし合わせる。訳し戻しで意味のずれを確かめる。

外国人のお客様の質問は、店ごとにおおよそ決まっています。今週は、聞かれたことを紙に書き留めるところから始めてください。来週には、AIで多言語の指さしシートが作れます。

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著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。