6割が人手不足、その半分が「深刻」
日本商工会議所・東京商工会議所は2026年9月15日に「多様な人材の活躍等に関する調査」の集計結果を公表しました。全国47都道府県の会員企業2,654社が答えたもので、調査期間は2026年7月21日から8月21日です。
人手が不足していると答えた企業は60.0%。そのうち48.2%が、売上の機会損失など事業運営に具体的な支障が出ている、あるいは廃業の恐れがあると回答しています。業種で見ると建設業が77.4%、運輸業が72.2%、介護・看護業が70.5%と、現場を人が動かす仕事ほど比率が上がります。
規模別の数字は、直感と少しずれます。最も小さい層では人手不足が49.1%と全体より低い一方、不足していると答えた会社に限れば深刻度は54.9%と全体を上回ります。同調査の集計結果(PDF)では、この層の8.2%が廃業の恐れ・事業継続への懸念を選んでいます。少人数の会社は、欠けたときの一人分が重いのです。
採用の次に多いのは省力化
人手不足と答えた1,592社に対策を聞いた結果です。最多は採用活動の強化で75.7%。採用以外の手としては、デジタル・機械・AI等による省力化が40.2%で最も多く選ばれています。多様な人材の活躍推進が32.3%、従業員の能力開発が30.5%と続きました。
注目したいのは5番目です。事業の縮小、見直し、外注化が21.9%。5社に1社が、人が採れないなら仕事のほうを減らすと答えている計算になります。この選択肢が全体では目立たないのに、ある層だけで一気に跳ね上がります。
小さい会社だけ順番が逆になる
省力化を選んだ割合は、従業員20人以下で25.3%、21〜100人で43.7%、101〜300人で57.8%、301人以上で63.0%。規模が大きいほど、きれいに上がります。
逆に事業の縮小・見直し・外注化は、最も小さい層が31.6%で突出し、301人以上では17.8%です。この規模だけ、省力化より縮小のほうが多いという逆転が起きています。人手不足を感じている比率はいちばん低いのに、起きたときの対処は最も後ろ向きになる。ここがこの調査でいちばん重い発見です。
| 従業員規模 | 省力化で対応 | 縮小・外注で対応 | どちらが多いか |
|---|---|---|---|
| 20人以下 | 25.3% | 31.6% | 縮小が上回る |
| 21〜100人 | 43.7% | 16.9% | 省力化が約2.6倍 |
| 101〜300人 | 57.8% | 14.4% | 省力化が約4倍 |
| 301人以上 | 63.0% | 17.8% | 省力化が約3.5倍 |
縮める判断が悪いわけではない
先に断っておきます。事業を絞るのは、経営判断として正しい場面があります。もうからない仕事をやめて残った人を主力に回すのは、立派な戦略です。問題は、比べたうえで縮めたのか、比べられないまま縮めたのかの違いにあります。
同じ調査は、リスキリングについて「必要性を感じるが、取り組みが十分に進んでいない」企業が66.1%だったとしています。さらに最も小さい層では、必要性を感じていない企業が19.5%と他より高く出ました。学ぶ時間が取れない会社ほど、新しい道具を比較検討の土俵に乗せられません。
縮小は一度きりしか効かない
外注に出せば月々の支払いが増え、事業をやめれば売上そのものが消えます。同じ手を翌年もう一度使うことはできません。一方、作業の型を変えた省力化は、翌年も再来年も効き続けます。どちらが先かという順番の話です。
白書が測った「AIを使った会社」の動き
比較の材料は国も出しています。中小企業庁の2026年版中小企業白書 第2部第2章第2節「労働投入量の最適化」は、省力化投資を「従前と同等又はそれ以上の付加価値を創出するために投入する労働量を減少させること」と定義しています。設備の機械化だけでなく、ITツールとAIの活用がこの定義に含まれます。
同節は、2015年から2024年の財務データを使って企業を分類しました。前半に「付加価値は伸びたが労働生産性は落ちた」区分にいた企業のうち、AI活用に取り組んだ会社のほうが、取り組んでいない会社より生産性が改善した区分へ移った傾向があると整理しています。AIを使った会社と使わなかった会社で、その後の動きが分かれたという観察です。
取り組み率も出ています。AI活用は全体で約3割、ITツール活用は約7割です。3社に2社は、まだAIを試していない段階にあります。
どの部門で、何に使われているか
白書によると、AIの活用率が高いのは営業・販売・顧客対応部門とバックオフィス部門で、製造・生産管理・物流部門より高く出ています。具体的な使い方を自由回答から分析した結果では、業種を問わず文書作成・要約・校正と、業務自動化・効率化に関する回答が多く並びました。
目的の1位は業務時間の節減で8割を超え、人手不足の解消、業務の属人化解消が続きます。日商・東商調査でリスキリングの目的を聞いた設問でも、人手不足への対応が61.7%、技術・ノウハウの伝承が44.4%と、同じ悩みが顔を出しています。
使っていない理由も明快でした。白書は、AIを業務で活用していない理由として活用する業務がイメージできていないという回答が最も多かったと述べています。道具が高いからでも、難しいからでもありません。置き場所が見えていないだけです。
「思い浮かばない」を崩す4歩
第1歩、1週間のあいだに時間を食った作業を紙に書き出します。分析は要りません。第2歩、そのうち文章で終わる作業だけ選びます。見積の説明文、議事録、求人の文面、クレームの一次返信。白書で最も多かった使い道と同じ場所です(業務棚卸しシートの使い方)。
第3歩、一人が2週間だけ試し、かかった分数を毎回記録します。効果が数字で残らないと、次の投資の判断ができません。第4歩、勉強会の形で全員に渡します。白書は、研修会や勉強会に取り組んでいる事業者のほうが、AI活用で想定どおり以上の効果を得たと答えた割合が高いと整理しています。
補助金を先に探さない
順番を逆にすると失敗します。使う場所が決まっていないのに制度を調べ始めると、書類づくりだけで力尽きます。効果が分数で見えてから制度を探すほうが、申請書も書きやすくなります(省力化投資補助金の基本)。
そのまま使えるプロンプト
第1歩と第2歩を一度に進める指示です。角かっこを自社の言葉に置き換えてください。
条件2を入れている理由があります。先に製品名が出ると、業務を選ぶ話が道具を選ぶ話にすり替わります。出てきた仕分けは必ず自分の目で見直してください(AIの回答を確認する手順)。
よくある質問(Q&A)
うちは5人の会社です。AIを入れるより人を採るほうが早いのでは。
採用と省力化は、どちらかを選ぶものではありません。調査でも採用活動の強化が75.7%で最多です。ただし採用には時間もお金もかかり、決まる保証がありません。採用の結果を待っているあいだに、文章の作業だけ先に軽くしておく。この二段構えが現実的です。
AIにいくらかければいいのか、見当がつきません。
最初は0円で構いません。白書でAI活用の目的の1位だった業務時間の節減は、無料で使える範囲でも十分に試せます。お金をかける判断は、2週間の記録が出てからで遅くありません。費用を先に決めると、効果ではなく金額で続けるかどうかを決めることになります(費用をかけずに始めるAI業務改善)。
社員が高齢で、新しいものを覚えてもらえる気がしません。
同じ調査では、従業員の30%以上が60歳以上という企業が全体で24.4%、最も小さい層では31.2%でした。珍しい状況ではありません。全員に覚えさせるのではなく、一人が試した結果を勉強会で配る形なら進みます。白書も、研修や勉強会を併せて行う事業者のほうが効果を得られていると整理しています。
まとめ
- 人手不足と答えた中小企業は60.0%、うち48.2%が事業運営に支障が出る水準。建設業77.4%、運輸業72.2%と業種差も大きい。
- 対策は採用強化に次いで省力化が40.2%。ただし従業員20人以下だけは省力化25.3%より縮小・外注31.6%が上回る。
- 白書でのAI活用は3社に1社、使わない最大の理由は「活用する業務がイメージできていない」。文章で終わる作業から2週間だけ試し、分数を記録するのが最初の一歩。
縮めるか、軽くするか。この2つは対立していません。軽くしてから縮めれば、残す仕事を自分で選べます。逆の順番だと、残った仕事のほうに選ばれてしまいます。
取材でよく聞くのは「うちには合わない」という言葉です。けれど中身を聞くと、合わないのはAIではなく、想像していた大げさな導入のほうでした。設備投資の顔をして近づいてくるから、小さい会社ほど身構えるのだと思います。
今回の調査で、いちばん小さい層だけ縮小が省力化を上回った数字を見たとき、その身構えが実際の選択に出ていると感じました。最初の一歩が紙とペンでいいことは、もっと言われていいはずです。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
── AutoAIPlatform編集部