小さい職場ほど、3年で辞められている

厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」は、雇用保険の加入届をもとに新卒で入った人の離職率を集計したものです。2025年10月に公表された最新の集計は令和4年3月卒業者が対象で、同省は「就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者37.9%、新規大卒就職者33.8%」と明記しています。短大等は44.5%でした。

事業所規模別の大学卒3年以内離職率。5人未満57.5%、5〜29人52.0%、30〜99人41.9%、100〜499人33.9%、1,000人以上27.0%。厚生労働省の令和4年3月卒業者の集計より。
図1|事業所規模別 大卒の3年以内離職率(令和4年3月卒業者)

問題は、この数字が会社の大きさで大きく割れることです。同じ集計を事業所規模別に見ると、大学卒の3年以内離職率は5人未満で57.5%、5〜29人で52.0%、30〜99人で41.9%です。1,000人以上では27.0%にとどまります。高校卒では、最も小さい区分が63.2%に達します。

小さい職場と大きい職場の差は30ポイント前後あります。とはいえ、これは「小さい会社が悪い」という話ではありません。人数が少ない職場は、配属も仕事の範囲も入ってみないと分からない部分が大きく、入る前に伝わる情報の量が構造的に少ないのです。

辞めた理由の上位は、お金だけではない

辞めた理由も国の調査に出ています。厚生労働省の「令和5年若年者雇用実態調査の概況」(2024年9月25日公表)は、初めて勤務した会社をやめた主な理由を3つまでの複数回答で尋ねています。

最も多いのは「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」で28.5%です。次が「人間関係がよくなかった」の26.4%、「賃金の条件がよくなかった」が21.8%、「仕事が自分に合わない」が21.7%と続きます。賃金は4つのうち3番目でした。

同じ調査は、勤続期間ごとの違いにも触れています。1年未満でやめた人では「人間関係がよくなかった」の割合が最も高いという結果でした。入って間もない時期ほど、条件より人との距離が効くということです。

事業所が実際に選んでいる対策の1位は「話が通じること」

同調査によると、若年正社員の定着のための対策を行っている事業所は73.7%です。実施している対策(複数回答)の1位は「職場での意思疎通の向上」で59.7%、2位が「採用前の詳細な説明・情報提供」で58.4%でした。3位は「本人の能力・適性にあった配置」の55.6%でした。いずれも設備投資ではなく説明と対話で動かせる項目です。

危ないのは、連絡が途切れる時期

同調査では、最終学校を卒業して初めて勤務した会社で今も働いている人は55.5%でした。裏を返せば、4割以上がすでにその会社を離れています。辞める理由の上位が「聞いていた話と違った」に通じる以上、手を打つ場所は入社後だけではありません。

実際に連絡が止まりやすいのは3つの時期です。1つ目は内定を出してから入社日までです。新卒なら半年近く空くこともあり、その間に届くのは他社からの連絡だけになります。2つ目は入社初日から配属が決まるまで、3つ目は試用期間が終わる前後です。

この3つの時期は、会社の側から見ると「まだ決まっていないから連絡しづらい」区間と重なります。決まっていないこと自体を伝える連絡を用意しておけば、空白は埋められます。AIが得意なのは、まさにこの定型の文面づくりです。

2024年4月から、伝える義務が増えた

気持ちの問題だけではありません。厚生労働省の「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」のとおり、労働基準法施行規則の改正で明示事項が追加されました。パート・アルバイトを含むすべての労働者が対象です。

追加されたのは、まず就業場所・業務の「変更の範囲」です。雇い入れ直後の場所と仕事に加えて、将来の配置転換でどこまで変わりうるかを、労働契約の締結時に書面で示します。有期契約の人には、更新上限の有無と内容、無期転換を申し込める機会と転換後の労働条件も明示します。

同省のパンフレット「2024年4月からの備えは大丈夫ですか?」は、モデル労働条件通知書の注記で「労働条件通知書については、労使間の紛争の未然防止のため、保存しておくことをお勧めします」としています。配って終わりではなく、残しておくところまでが実務です。

入社前後に送る連絡を、先に表にする

やることは、場面ごとに「誰に・何を・いつ送るか」を1枚の表にすることです。表さえできていれば、文面はAIが数十秒で下書きします。次の5場面を最小の型として使ってください。

表1|入社前後に送る連絡と、AIに任せること・人が決めること
場面送る時期AIに下書きさせる人が決める
内定の通知決定の当日お礼と次の予定の案内入社日と待遇の提示内容
労働条件の明示契約を結ぶとき通知書に添える説明文就業場所と業務の変更の範囲
入社1か月前の案内入社の4週間前持ち物・初日の流れ配属先と受け入れ担当者
初日と1週間後入社日・7日後自己紹介文・想定問答最初に任せる仕事の範囲
1か月・3か月面談30日後・90日後聞く質問と面談メモの要約本人の申し出への回答

表の右の列が埋まらない場面が、その会社でいちばん人が離れやすい場面です。未定なら「いつ決めて、いつ知らせるか」を書いて送ると、受け取る側の不安はかなり減ります。

AIで連絡を整える4手順

入社前後の連絡の分担。AIに任せるのは通知書の文面の下書き、初日の案内文づくり、想定問答を並べる、面談メモの要約。人が決めるのは就業場所と変更の範囲、配属と担当の決定、答えられない質問、本人への返事。
図2|入社前後の連絡は、文章と約束ごとで分ける

分担の原則は単純です。文章はAI、約束ごとは人。待遇・配属・就業場所のように、後から「そう聞いていない」と言われる項目は、必ず人が決めて人が確かめます。

入社前後の連絡を整える4手順。1.送る場面を書き出す。2.法定の明示事項を先に。3.AIに下書きさせる。4.送った記録を残す。
図3|入社前後の連絡を整える4歩

手順1は、表1をまねて自社の場面を書き出すことです。手順2で、法律上の明示事項を先に埋めます。ここを後回しにすると、感じのよい案内文だけが整って肝心の条件が抜けます。

手順3で、場面ごとに1通ずつAIに下書きさせます。手順4は記録です。送った文面をフォルダにまとめておくと、次の入社者にはほぼ流用できます。1人目に30分かけた文面が、2人目からは5分で済みます。

そのまま使えるプロンプト

角かっこを自社の内容に置き換えて使ってください。場面ごとに1回ずつ実行します。

あなたは中小企業の人事担当を手伝う文章の専門家です。入社予定者に送る連絡文の下書きを作ってください。 会社:[業種・従業員数]/相手:[新卒/中途・職種]/場面:[内定直後/入社1か月前/初日/1か月面談] 条件1:本文は400字以内。一文は50字以内にする。 条件2:最初に「いつ・何をしてほしいか」を書く。 条件3:まだ決まっていないことは、決める時期と知らせる時期を書く。 条件4:私が伝えていない給与・勤務地・配属先・日付は補わない。不足は「要確認」と書き出す。 条件5:本文のあとに、相手から来そうな質問を3つと、その答えの案を付ける。 条件6:堅すぎない敬語にする。社内用語とカタカナ語は使わない。 伝えたい内容:

条件4が要です。AIは書かれていない勤務地や金額をもっともらしく補うことがあります。下書きを人が直すときの見方はAIで作った文章を人間が直すべき3つのポイントにまとめています。

AIに任せてはいけない3つのこと

1つ目は労働条件そのものです。賃金、就業場所、業務、変更の範囲は、法律で明示が求められる項目です。文面の整え方はAIに相談してよいのですが、書く中身は会社が決め、通知書は人が確認して保存します。

2つ目は本人の事情の入力です。健康状態、家族の状況、前職での経緯などをAIの入力欄に貼り付けるのは避けてください。入れてよい情報と危ない情報の線引きはAIに入力してはいけない情報一覧で整理しています。

3つ目は面談で出た不満への返事です。要約はAIに任せられますが、どう答えるかは人の判断です。「持ち帰って、いつまでに返事します」と伝えるだけでも、放置されたという印象は避けられます。

よくある質問(Q&A)

中途採用ばかりの会社でも、同じやり方でいいですか?

同じで構いません。内定から入社までが1〜2か月と短い分、送る通数を減らして3通に絞るのが現実的です。内定直後、入社1週間前、入社1か月後の3回で、表1の右の列を埋めていきます。

AIで作った案内文だと、冷たい印象になりませんか?

文面に相手固有の事実を1行入れると印象は変わります。面接で話した内容や、その人の経験に触れる一文を人が足してください。AIは型を作る係、温度を足すのは人という分け方が続けやすいです。

就業場所の「変更の範囲」は、どこまで書けばいいですか?

将来の配置転換で実際にありうる範囲を書きます。支店が1か所なら、その事業所名だけでも足ります。広く書きすぎても、狭く書きすぎても後で困るため、記載例は厚生労働省のモデル労働条件通知書を参照し、迷う場合は労働基準監督署に相談してください。

まとめ

  • 大学卒の3年以内離職率は全体で33.8%だが、事業所規模5人未満では57.5%。小さい職場ほど伝わる情報が少ない。
  • 辞めた理由の1位は労働時間・休日・休暇の条件で28.5%、2位は人間関係で26.4%。事業所が選ぶ対策の1位も職場での意思疎通の向上だった。
  • 内定直後・入社前・初日・1か月面談の連絡を表にし、文面はAI、条件と配属の決定は人が受け持つ。

採用にかけた費用は、入った人が残って初めて回収できます。まずは直近で入社した1人を思い出し、その人に送った連絡を数えてみてください。3通未満なら、増やす余地があります。入社後の育て方は「AIで調べました」と言う新人をどう育てるかが参考になります。

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著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。