65歳以上の就業率は、どの年代も過去最高
総務省統計局は2026年9月20日、統計トピックスNo.149「統計からみた我が国の高齢者」を公表しました。敬老の日に合わせた毎年の資料です。
同資料は、就業者に占める65歳以上の割合が13.8%で過去最高になったとしたうえで、「就業者のおよそ7人に1人が65歳以上」と明記しています。職場の7人に1人は、65歳を過ぎた人という計算です。
年齢別に見ると、65〜69歳の就業率は54.5%で、2人に1人以上が働いています。70〜74歳も36.2%、75歳以上も12.6%で、いずれも比べられる年以降で最高でした。
小さな会社ほど、ベテランが現場の中心にいる
65歳以上で雇われて働く人のうち、非正規の職員・従業員は76.1%を占めます。パート・アルバイトだけで52.7%です。週に数日、短い時間で来てくれる人が多いということです。
産業別の人数は「卸売業,小売業」が131万人で最も多く、「医療,福祉」が122万人で続きます。農業,林業では、働く人の50.6%が65歳以上です。店、介護、現場の仕事ほど、ベテランの比率は高くなります。
現場を知る人ほど、年齢が高いということです。AIの使い方を若手だけに教えると、仕事の中身を最も知る人が取り残されます。お客様の顔、段取りのコツ、過去のトラブルの経緯は、ベテランの頭の中にあります。その人がAIに頼めるようになると、知っていることがそのまま文章や手順になります。ノウハウを残す取り組みはベテランのノウハウをAIの聞き取りで残す方法で扱っています。
会社側の制度も広がっています。厚生労働省の令和7年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果では、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は34.8%でした。中小企業が35.2%で、大企業の29.5%を上回ります。
「ネットは苦手」は、もう多数派ではない
「年配の人はネットを使わない」は、今の数字とは合いません。総務省の令和7年通信利用動向調査の結果では、60〜69歳のインターネット利用率は91.2%でした。70〜79歳も71.9%です。
同じ調査の結果資料は、スマートフォンは「60~69 歳の年齢階層で8割以上が利用している」としています。入り口はパソコンでなく、手元のスマホにするのが自然です。
つまり足りないのは機械への慣れより、仕事で使ってよいという許可と、最初の1回です。LINEで孫と写真を送り合う人は、AIにも話しかけられます。教える側が「難しいもの」と構えないことが先です。
教える前に確かめたいのは、本人が普段スマホで何をしているかです。電話、LINE、写真、地図の検索などです。毎日使っている機能の延長にAIを置くと、新しく覚えることは最小限で済みます。
若手向けの教え方と、何を変えるか
若手には、機能をひと通り見せて「あとは触ってみて」で伝わることがあります。シニア社員には、順番と道具を入れ替えます。能力の差ではなく、仕事の覚え方の違いです。
| 場面 | よくある教え方 | シニア社員に届く教え方 |
|---|---|---|
| 道具 | 会社のパソコン | 本人のスマホか、貸与スマホ |
| 入力 | キーボードで打つ | 音声入力で話す |
| 題材 | 架空の練習問題 | 本人が今困っている仕事 |
| 量 | 1時間で機能を一覧 | 15分で1つだけ |
| 言葉 | プロンプト、生成 | 頼みごと、下書きを作る |
| 復習 | 動画のURLを送る | 3行の紙のメモを渡す |
表の右列は、どれも費用がかからず、明日から変えられるものです。社内研修の組み立て全体はITが苦手な社員にAIを教える方法も参考になります。
最初の1回は、本人の困りごとを1つ解く
最初に聞くのは「AIを使ってみませんか」ではなく、「最近、面倒だと思う作業はありますか」です。答えが出たら、その場でスマホを出し、一緒に解いてみます。
よく挙がるのは、細かい字の説明書を読む、手書きの日報をまとめる、取引先への丁寧なお礼状を書く、といった作業です。「説明書のこの写真を、大きな字で3行にまとめて」と話すだけで、AIは答えます。
一度でも「自分の用事が片づいた」と感じると、次は本人から聞いてきます。便利さは説明より、体験で伝わります。うまくいかなかった場合も、「今日は機械の調子が悪かった」で終えて構いません。
言葉と時間の使い方で、伝わり方が変わる
カタカナ語は、身近な言葉に置き換えます。「プロンプト」は「頼みごとの書き方」、「生成」は「下書きを作る」で十分通じます。専門用語を正しく覚えることは、目的ではありません。
時間は1回15分ほどに区切ります。先に述べたとおり、シニア社員の多くは短時間で働いています。勤務時間の中で、仕事として教えることも大切です。休憩時間や勤務後に頼むのは避けます。
教える役は、年の近い同僚や社長本人が向いている場合もあります。若手が教えるなら「教えてあげる」でなく「一緒に試す」という言い方にします。ベテランの仕事の知恵を、AIへの頼み方に生かしてもらう場面も作れます。
シニア社員とAIを始める4手順
手順1で困りごとを聞き、手順2で本人の手でスマホに話してもらいます。教える側が代わりに操作しないことが要点です。手順3では、手順を3行以内に書いた紙を渡します。
手順4は1週間後の声かけです。「使えた場面」を一緒に数えると、次に試したい用事が自然に出てきます。使えなかったなら、手順1からやり直せば十分です。
教える側の準備に使うプロンプト
教える前の準備にもAIが使えます。次の文の角かっこを置き換えて、紙のメモの下書きを作らせてください。本人の氏名や健康のことは入力しません。
条件4は必ず残してください。入れてはいけない情報の線引きはAIに入力してはいけない情報で確認できます。
教えるときに避けたい3つのこと
1つ目は無理強いです。使わない自由も残し、AIを使うかどうかを評価や給与に結びつけないようにします。2つ目は代わりに操作することです。早く済ませたい気持ちを抑え、本人の指で操作してもらいます。
3つ目は危ない場面の説明を省くことです。AIの答えは間違うことがある、声や文面はなりすましに使われることがある、の2点は最初に伝えます。詐欺の手口はAIを使ったなりすまし詐欺への備えにまとめています。お客様向けの案内文は高齢のお客様に届く案内文が参考になります。
よくある質問(Q&A)
70歳の社員にAIを教えても、今さら使えるようになりますか?
使えるようになる人は多いです。総務省の調査では、70代の7割がインターネットを利用しています。操作を覚えるより、声で頼んで答えを読むだけの使い方から始めると続きやすくなります。
シニア社員にAIを教えるのは、若手と社長のどちらがいいですか?
どちらでも構いません。大事なのは「教えてあげる」でなく「一緒に試す」姿勢です。若手が教える場合は、ベテランの仕事の知恵をAIへの頼み方に生かしてもらう場面を作ると、互いに学べます。
パートの高齢スタッフにも、AIの研修を受けてもらうべきですか?
希望する人には機会を用意するのがおすすめです。ただし勤務時間の中で短く区切り、無理強いはしないことが前提です。使わない人がいても、業務が回る形にしておきます。
まとめ
- 65歳以上の就業者は943万人。働く人の7人に1人が65歳以上で、小さな会社ほどベテランが現場の中心にいる。
- 60代のネット利用率は91.2%。入り口はパソコンでなくスマホの音声入力にする。
- 操作説明より先に、本人の困りごとを1つ、一緒に解く。15分と3行のメモで続ける。
まずは今週、ベテランの社員に「最近、面倒な作業はありますか」と聞いてみてください。その答えが、AIを教える最初の教材になります。