「うちは50人もいないから関係ない」が終わる日

ストレスチェックは2015年から、労働安全衛生法によって事業者に義務づけられている制度です。ただし対象は労働者数50人以上の事業場に限られ、50人未満の事業場は「当分の間、努力義務」とされてきました。この「当分の間」が終わります。

2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されました。厚生労働省のストレスチェック制度・メンタルヘルス対策のページは、2026年6月10日付のお知らせで施行日が令和10年(2028年)4月1日であることを明示しました。さらに同年6月30日には、集団分析の実施方法について労働安全衛生規則の改正も行われています。

2028年4月と聞くと、まだ先の話に思えます。しかし、この記事を書いている2026年8月からでも残りは1年8か月ほどです。そして最も時間がかかるのは、検査そのものではなく社内の合意づくりです。社員に「なぜ受けるのか」「結果は誰が見るのか」を納得してもらえていない状態で始めると、形だけ実施して何も改善しない制度になってしまいます。

最新調査が示す、職場のストレスの現在地

まず現在地を数字で押さえます。厚生労働省が2026年8月7日に公表した令和7年(2025年)の労働安全衛生調査は、常用労働者10人以上の民営事業所を対象にした調査で、事業所調査の有効回答は8,054件(有効回答率57.3%)、個人調査は8,393人(同45.2%)という規模です。調査の対象期間は2025年10月31日現在でした。

数字で見る職場のストレス。強いストレスがある労働者は67.5%。原因の1位は仕事の量で39.5%。対人関係が原因は32.9%で前年の26.1%から上昇。メンタルヘルス不調による1か月以上の休業・退職は13.5%の事業所で発生。10〜29人の事業所で対策の実施は54.6%。厚生労働省の令和7年労働安全衛生調査より。
図1|厚生労働省 令和7年労働安全衛生調査に見る職場のストレス

現在の仕事や職業生活に関することで強い不安・悩み・ストレスを感じる事柄がある労働者の割合は67.5%(前年の令和6年調査は68.3%)でした。その内容を主なもの3つ以内で聞くと、「仕事の量」39.5%と「仕事の失敗、責任の発生等」39.5%が並んで最も多く、次いで「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」が32.9%と続きます。この対人関係は前年調査の26.1%から6.8ポイント上昇しており、今回の調査でいちばん動いた項目です。「仕事の質」は30.7%でした。

過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した労働者、または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%(前年12.8%)。事業所規模別に見ると、50〜99人で26.8%、30〜49人で18.3%、10〜29人では6.8%となっています。

小さい会社に不調が少ないのではなく、見えていない

この「10〜29人で6.8%」という数字は、一見すると小さな会社ほど安全に見えます。しかし同じ調査の別の数字を並べると、違う景色になります。メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は全体で63.0%ですが、労働者50人以上では93.7%、30〜49人では72.0%、10〜29人では54.6%です。取り組んでいる事業所のうち「ストレスチェックの実施」を挙げたのは64.0%で、規模別では50人以上89.8%、30〜49人58.4%、10〜29人55.9%となっています。

つまり、小さい会社は不調が起きていないのではなく、起きたかどうかを把握する仕組みを持っていない可能性が高い、ということです。10人の会社で1人が体調を崩せば、それは戦力の1割が抜けることを意味します。大企業の1割とは、痛みの重さがまったく違います。

厚生労働省が「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」スタートガイドで示している数字は、この痛みを具体的にしています。メンタルヘルス不調になった場合、その病休期間は平均で約3か月、復職後に再び病休になる割合は約半数。同ガイドは、これが小規模事業場にとって大きな人材の損失であり、経営上のリスクにつながると明記しています。

「相談できる人はいる」のに相談されていない

同じ調査では、ストレスについて相談できる人がいる労働者は94.8%にのぼります。ところが、そのうち実際に相談したことがある人は71.2%で、前年の74.7%から下がりました。相談相手の1位は「家族・友人」74.8%、2位が「上司」63.8%です。相談先がないのではなく、会社の中では相談されていない——ここに手を打てる余地があります。

ストレスチェックとは、結局なにをすることか

制度の名前だけが先に広まって、中身が伝わっていないことがよくあります。ストレスチェックとは、労働者が選択式の質問票に回答し、自分のストレスがどのような状態にあるかを知るための検査です。国が推奨する調査票は57項目版で、仕事の量や裁量、最近1か月の心身の状態、上司や同僚との話しやすさなどを尋ねます。

事業者は1年ごとに1回これを実施し、3つのことにつなげます。第一に、本人にストレスへの気づきとセルフケアを促すこと。第二に、高ストレスと判定された人が申し出た場合に医師の面接指導の機会を提供し、医師の意見を踏まえて必要な就業上の措置をとること。第三に、集団ごとの集計・分析を通じて職場のストレス要因を把握し、職場環境の改善につなげることです。

ここで押さえておきたいのは制度の目的です。スタートガイドは、ストレスチェック制度の目的はメンタルヘルス不調の未然防止であり、不調者の発見ではないとはっきり書いています。誰が不調かを探す制度ではない、という一文を社内の説明に必ず入れてください。ここを取り違えたまま案内すると、社員は正直に答えなくなります。

会社がやること・外部に任せられること

「50人未満の会社に、そんな体制は組めない」と感じる方が多いはずです。実際には、検査の実務はほぼ外部に委託できます。むしろ厚生労働省のマニュアルは、労働者のプライバシー保護の観点から原則として外部委託による実施を推奨しています。会社に残るのは、外に出せない仕事だけです。

表1|ストレスチェックで「会社がやること」と「外部に任せられること」
やること担い手法的な位置づけAIの出番
導入方針の表明事業者(社長)準備段階の実務下書きを作る
社内ルール(規程)の作成・周知事業者+実務担当者準備段階の実務下書きと読みやすい説明文
検査の実施・個人結果の通知外部機関の実施者(医師・保健師等)義務使わない
医師の面接指導外部機関・地域産業保健センター等義務(本人の申出が前提)使わない
集団分析・職場環境改善外部機関が分析、改善は社内努力義務会議の進め方の案出し

表の右端を見てください。AIが手伝えるのは、文章をつくる列だけです。検査も、判定も、面接指導も、AIの仕事ではありません。逆にいえば、会社に残る「文章をつくる仕事」は全部AIで軽くできます。事業場内には委託先との契約・連絡調整を行う実務担当者を1人指名すれば足り、この担当者には衛生推進者または安全衛生推進者を選任することが望ましいとされています。

AIに任せてよい仕事と、入れてはいけない情報

線引きをはっきりさせておきます。ストレスチェックは、扱う情報の性質上、AIの使い方を間違えると制度そのものを壊しかねません。

AIに任せてよい仕事と入れてはいけない情報。AIに任せてよいのは受検の案内文、制度の説明資料、社内ルールの原案、改善会議の進行案。AIに入れてはいけないのは個人の検査結果、高ストレス者の氏名、面接指導の記録、通院や病名の話。健康情報は社内に置かないのが原則。
図2|AIに任せてよい仕事と、入れてはいけない情報

AIに任せてよいのは、受検の案内文、制度の説明資料、社内ルールの原案、職場環境改善の会議の進行案です。いずれも個人を特定しない、制度についての文章にすぎません。ここは遠慮なく使ってください。

入れてはいけないのは、個人の検査結果、高ストレスと判定された人の氏名、面接指導の記録、通院や病名に関する話です。そもそも制度の設計上、個人結果は事業者に提供されません。個人の健康情報の取り扱いは外部機関で完結し、事業場内では取り扱わない仕組みになっています。手元にないものをAIに入れる余地はない、というのが正しい理解です。入力してよい情報の線引きはAIに入力してはいけない情報一覧と安全な言い換え方にまとめました。

紙の調査票や個人結果の通知を、内容が分からないよう密封した封筒に入れて実務担当者を介して渡すことは差し支えないとされています。ただし実務担当者は健康情報を取り扱う立場になるため守秘義務を負います。この点も社内ルールに書いておく項目です。

義務化までにやる4歩

2028年4月までにやることを4つに分けます。すべて「伝える」仕事です。

義務化までにやる4歩。1.方針を決めて示す、やる理由を社長の言葉で。2.社内ルールを作る、結果を誰が見るか決める。3.委託先を比べる、料金と範囲を表で確認する。4.受検を案内する、不利益はないと明記する。令和10年4月1日から50人未満も義務。
図3|義務化までにやる4歩

第1歩:方針を決めて示す

事業者が実施責任者として、制度導入の方針表明を行います。A4で半ページあれば十分です。書くのは「何のためにやるのか」「結果を人事評価に使わないこと」「困ったときの相談先」の3点。社長の名前で出すこと自体に意味があります。マニュアルには方針表明や社内規程のモデル例が載っているので、それを読んで自社の言葉に直すのが早道です。

第2歩:社内ルールを作る

実施体制・実施方法について労働者の意見を聴いたうえで、社内ルール(規程)を作成し、周知します。厚生労働省は編集可能なWord形式のモデル規程も配布しています。ここでのAIの役割は、規程の条文を社員が読んで分かる説明文に翻訳することです。規程は規程として残し、別に1枚の説明資料を作ってください。

第3歩:委託先を比べる

外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・説明してもらい、提案内容を比較します。特に料金体系——どこまでが標準サービスでどこからがオプションか——の確認が要点です。複数社の提案を一枚の比較表に整える作業はAIが得意とするところです。ツールの比べ方の考え方はAIツールの選び方(ChatGPT・Gemini・Copilot比較)も参考になります。

第4歩:受検を案内する

実施の直前に、社員へ受検の案内を出します。この1通が制度の成否を分けます。次章で詳しく扱います。

そのまま使えるプロンプト

角かっこを自社の内容に置き換えて、そのまま貼り付けてください。第1歩の方針表明文と第4歩の受検案内が、1回のやりとりで出てきます。

あなたは、中小企業の労務文書に詳しい編集者です。ストレスチェック制度の社内文書を、次の2通まとめて作ってください。 ―――当社の状況――― 業種:[業種]/従業員数:[人数]人/実施時期:[年月]/検査の委託先:[外部機関名]/社内の実務担当者:[役職] ―――作る2通――― 1通目:社長名で出す「導入方針の表明」。A4半ページ。 2通目:全社員あての「受検のご案内」。A4一枚。 次の条件で作成してください。 条件1:制度の目的は「メンタルヘルス不調の未然防止」であり、不調な人を見つけるための検査ではないと明記する。 条件2:個人の検査結果は会社(事業者)には提供されず、外部機関から本人に直接通知されると明記する。 条件3:受検の有無や結果を理由に不利益な取扱いをしないと明記する。 条件4:専門用語を使わない。「集団分析」など避けられない言葉は、その場でひとこと説明を添える。 条件5:一文は60字以内。中学生が読んで分かる日本語にする。 条件6:私が渡していない事実・数字・機関名は作らない。会社が決めるべき箇所は[ ]で残し、文末に「決める必要がある点」として箇条書きで示す。

条件2と条件3が肝です。この2つが書かれていない案内文は、社員から見れば「会社が心の状態を調べる」通知にしか読めません。条件6は、AIが実在しない相談窓口や根拠のない数字を書き足すのを防ぐための指示です。指示文の基本の組み立て方はAIへの指示(プロンプト)の基本の書き方から確認してください。

「結果は社長に見られる」と思われたら終わり

ストレスチェックがうまくいかない会社には、共通した失敗があります。社員が「正直に答えたら不利になる」と思ってしまうことです。そうなると、全員が当たり障りのない回答をし、集団分析には何も出ず、職場は何も変わりません。実施したという記録だけが残ります。

これを防ぐのは、技術ではなく文章です。厚生労働省のマニュアルは、この制度が個人情報の保護と不正利用の防止によって、労働者が安心して受けられ、適切な対応や改善につなげられる仕組みであると説明しています。安心できると社員が信じたときだけ機能する制度だということです。

案内文に必ず入れる一文は3つあります。「個人の結果は会社に渡りません」「受けなかったこと、結果の内容を理由に不利益な取扱いはしません」「面接指導を申し出ても、それだけで配置転換されることはありません」。この3つを、社員が読む言葉で書きます。法律の条文を貼り付けても、誰も読みません。社内向けの文章を分かりやすく整える方法は社内通達・お知らせ文をAIでわかりやすく整える方法にまとめてあります。

AIに「うちの社員が安心する文章を」と丸投げしない

AIは、頼めばいくらでも安心感のある文章を書きます。しかし書かれた内容を守るのは会社です。「結果は誰も見ません」と書いたなら、実務担当者が封筒を開けない運用まで作らなければ嘘になります。文章が先に進みすぎて運用が追いつかない状態は、何も書かないより信用を損ないます。

集団分析は10人を下回ると受け取れない

小さな会社が必ずつまずくのが、この点です。集団分析とは、部や課などの単位で結果を集計し、職場ごとのストレス要因を把握する取り組みで、努力義務とされています。ところが厚生労働省のマニュアルは、集団の単位が10人を下回る場合には個人が特定されるおそれがあるため、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけないとしています。

従業員が8人の会社なら、全社を1つの集団としても10人に届きません。この場合、集団分析の結果は受け取れません。では何もできないのかというと、そうではありません。数字が出ないなら、対話で職場環境を見るしかないのです。むしろ人数が少ない会社ほど、一人ひとりの話を聞く時間は取りやすいはずです。

ここでAIが役に立ちます。全員参加の職場環境改善ミーティングの進行案——何を聞き、何を決め、どこまでを議事録に残すか——を組み立てさせる使い方です。話しにくいテーマを扱う会議の設計は「言いにくいこと」をAIに書かせる前にで詳しく扱っています。なお、2026年6月30日には集団分析の実施方法について労働安全衛生規則の改正が行われており、通達とリーフレットが厚生労働省から出ています。運用の詳細はそちらを確認してください。

管理職の「声のかけ方」をAIで練習する

調査の数字に戻ります。ストレスについて相談できる人がいる労働者は94.8%、そのうち相談相手として「上司」を挙げた人は63.8%でした。ところが実際に相談したことがある人は71.2%にとどまり、前年より3.5ポイント下がっています。上司は相談先として認識されているのに、相談される機会は減っているという構図です。

原因のひとつは、上司の側が「どう声をかければいいか分からない」ことです。踏み込みすぎればプライバシーの侵害になり、遠慮しすぎれば何も伝わりません。この距離感は、知識ではなく練習で身につきます。

AIを相手役にした練習が有効です。「最近元気がなさそうな部下に、面談の冒頭で何と切り出すか」を5案出させ、それぞれについて「言われた側がどう感じるか」を書かせます。AIは何度でも付き合ってくれる、疲れない練習相手です。ただし練習に使う設定は架空のものにしてください。実在の部下の状況を入力するのは、健康情報の取り扱いとして不適切です。AIを壁打ち相手にする方法はAIを「相談相手」にして考えを整理するにまとめています。

無料で使える公的な支援がある

費用の心配をされる方に、先に伝えておきたいことがあります。公的な支援はかなり手厚く、しかも無料です

厚生労働省の労働者数50人未満の小規模事業者の方のページには、周知用リーフレット、実施マニュアル本体、概要版のスタートガイド、編集可能なモデル規程がまとめて置かれています。すべて無料でダウンロードできます。

医師の面接指導については、地域産業保健センターが全国350か所に設置されており、50人未満の小規模事業場を対象に、医師による産業保健サービスを無料で提供しています。各都道府県の産業保健総合支援センターでは、社会保険労務士・心理職・保健師といった専門スタッフによる研修、相談、事業場への訪問による制度導入支援が受けられます。

制度の導入・実施についての相談は、ストレスチェック制度サポートダイヤル(0570-031050、平日10時から17時、土日祝日と年末年始を除く)で受け付けています。社員のセルフケアには、厚生労働省が運営するポータルサイトこころの耳 ストレスチェック制度についてがあり、電話・メール・SNSの相談窓口を誰でも無料で利用できます。案内文には、この窓口の情報を必ず添えてください。会社の中に相談先がなくても、外にはあると伝えられます。

AIにやらせてはいけないこと

この分野でのAI利用には、はっきりした禁止事項があります。3つ挙げます。

第一に、高ストレスかどうかをAIに判定させることです。ストレスチェックの実施者は医師・保健師などの有資格者と法律で定められています。AIに質問票の回答を読ませて「この人は危なそうだ」と言わせるのは、制度の外側で勝手な判定を行うことにほかなりません。

第二に、社員の様子をAIに相談して、対応を決めることです。「最近遅刻が多い社員がいる」といった相談は、一見すると差し支えないように見えます。しかし氏名や部署、具体的な状況を書き込めば、それは特定の個人の健康に関する情報です。相談すべき相手は産業医、地域産業保健センター、産業保健総合支援センターです。

第三に、AIが書いた案内文を読まずにそのまま配ることです。この記事のプロンプトを使っても、出てくるのは7割の出来です。とくに相談窓口の名称や電話番号、実施時期といった事実は、必ず一次情報で確認してください。AIの回答を確かめる手順はAIの回答をそのまま使ってはいけない理由と確認手順にまとめてあります。

今日確認する5項目

準備の進み具合は、次の5点で点検できます。

  • 2028年4月1日から自社も義務の対象になることを、経営層が把握しているか
  • 導入方針の表明文を、社長名で出す準備があるか
  • 「個人の結果は会社に渡らない」ことを説明する文章を用意したか
  • 受検や結果を理由に不利益な取扱いをしないと、文書で明示できるか
  • 地域産業保健センターやサポートダイヤルの連絡先を、社内で共有したか

5つ全部そろっている必要はありません。まずは1つ目、経営層が日付を知っている状態を作ってください。義務化の日付を知らない会社は、直前になって外部機関の枠が取れず慌てることになります。

よくある質問(Q&A)

従業員が5人の会社でも、ストレスチェックをやらないといけないんですか。

はい、2028年(令和10年)4月1日以降は、労働者数50人未満の事業場も対象になります。人数の下限は設けられていません。ただし実施の実務はほぼ外部機関に委託でき、医師の面接指導は全国350か所の地域産業保健センターで無料で受けられます。5人の会社が自前で医師や保健師を抱える必要はありません。会社に残るのは、方針を示す文書と社内ルール、そして受検の案内という3つの文章だけです。

ストレスチェックの結果を見て、社員の配置転換を考えてもいいですか。

個人の検査結果は会社に提供されないため、そもそも会社が結果を見て判断することはできません。就業上の措置をとれるのは、本人の申出による医師の面接指導が行われ、医師の意見を聴いたうえで必要と判断された場合だけです。受検したこと、結果の内容、面接指導を申し出たことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。この点は案内文にも明記してください。書かなければ、社員は最悪の想像をします。

案内文をAIに書かせても大丈夫ですか。個人情報が心配です。

案内文の下書きは問題ありません。制度についての一般的な文章であり、個人情報を含まないからです。危ないのは、個人の検査結果、高ストレス者の氏名、面接指導の記録、通院や病名の情報を入力することです。これらは制度上そもそも会社の手元に来ない設計になっているため、入力する場面は生じないはずです。もし手元にあるなら、その時点で運用のどこかが間違っています。厚生労働省の令和7年調査では、10〜29人の事業所でメンタルヘルス対策に取り組んでいるのは54.6%でした。まだ半分近くが未着手ですから、今から準備しても遅くはありません。

まとめ

  • 労働者数50人未満の事業場も、2028年(令和10年)4月1日からストレスチェックが義務になる。2025年5月公布の改正労働安全衛生法による。
  • 厚生労働省の令和7年調査では強いストレスを感じる労働者が67.5%、10〜29人の事業所でメンタルヘルス対策に取り組んでいるのは54.6%。小さい会社ほど、見えていない
  • 会社に残る仕事は方針表明・社内ルール・受検案内という3つの文章。AIに任せるのはこの文章づくりだけで、個人の結果や氏名は入力しない。

ストレスチェックは、書類を1回出して終わる制度ではありません。社員が安心して正直に答え、その結果が職場の改善に返っていくところまでが1セットです。そして、その入口にあるのは検査ではなく「なぜやるのか」を伝える文章です。2028年4月まではまだ時間があります。文章の下ごしらえだけなら、今日の午後にでも始められます。

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筆者コメント

ある20人ほどの会社で、ストレスチェックを努力義務の段階から実施していた話を聞きました。最初の年、回答はほぼ全員が「問題なし」だったそうです。社長は「うちは風通しがいいから」と受け止めました。2年目、案内文を書き直しました。結果が会社に来ないこと、受けなくても不利益がないこと、外部の相談窓口があることを、1枚に書いて全員に配ったそうです。その年から、回答の中身が変わったと聞きました。

変わったのは社員ではなく、案内文のほうです。制度は同じ、質問票も同じ。違ったのは、会社が何を約束しているかが読み取れる紙があったかどうかでした。文章にはそういう力があります。そして文章を書く時間がない会社にとって、AIはその一枚を用意するのにちょうどよい道具です。書くのはAI、約束するのは会社。この順番だけ間違えなければ大丈夫です。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

── AutoAIPlatform編集部

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。