「みなし提出」とは何が変わる制度か

給与を払う会社は、毎年1月に2つの書類を出してきました。社員が住む市区町村へ出す給与支払報告書と、会社の所轄税務署へ出す源泉徴収票です。中身はほぼ同じなのに、同じ人の情報を2か所に出していたわけです。

国税庁の源泉徴収票のみなし提出の特例 特設ページによると、2027年1月1日以後は、市区町村に給与支払報告書を出せば、税務署にも源泉徴収票を出したものとみなされます。税務署向けの源泉徴収票は、作る必要も出す必要もなくなります。

対象は、2027年1月以後に出す2026年(令和8年)分以後の源泉徴収票です。2025年分以前のものを今から出す場合や訂正する場合は、これまでどおり税務署へ出します。

数字で見るみなし提出

数字で見るみなし提出。2027年1月から始まり、令和8年分の源泉徴収票が対象。電子提出の義務は30枚以上に広がり、改正前は100枚以上だった。法定調書合計表は6種類の調書を兼ねるため、ほかの調書を1つでも出すなら合計表は必要。
図1|数字で見るみなし提出(国税庁 みなし提出の特例に関するQ&A 令和8年4月)

国税庁の源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A(令和8年4月)は、この改正を令和5年度の税制改正で決まったものと説明しています。3年前に決まり、2027年1月に初めて使われる制度です。

同じQ&Aによると、市区町村に出された報告書の内容は、市区町村で入力された後に税務署へデータで連携されます。税務署が情報を受け取らなくなるわけではありません。

これまでと2027年1月からの違い

変わる点と変わらない点を、国税庁のQ&AとタックスアンサーNo.7411「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等をもとに並べます。

表1|給与の書類の出し方:これまでと2027年1月から
項目これまで(2026年12月まで)2027年1月から
税務署への源泉徴収票年末調整をした社員は年500万円超などの人だけ提出給与支払報告書を出せば提出不要
市区町村への給与支払報告書原則全員分変わらない(原則全員分)
社員への源泉徴収票全員に交付変わらない(全員に交付)
法定調書合計表源泉徴収票と一緒に提出ほかの調書を出す場合だけ提出
電子で出す義務前々年に100枚以上前々年に30枚以上

「原則全員分」の例外は、年の途中で辞めた人で、その年の給与が30万円以下の場合です。2027年1月からは、税務署向けの範囲もこの線にそろいます。

変わらない3つの仕事

1つ目は、社員への交付です。Q&Aは問3で「改正前と同様、受給者本人への源泉徴収票の交付は必要です」と明記しています。期限は翌年1月31日までで、本人の承諾などを条件に電子で渡すこともできます。

2つ目は、合計表です。法定調書合計表は、給与の源泉徴収票を含む6種類の調書を兼ねた様式です。税理士や外注先への報酬の支払調書など、ほかの調書を1つでも税務署へ出すなら、合計表も出します。

3つ目は、確認の連絡です。Q&Aによると、税務署への提出義務そのものは残っています。報告書の中身について、税務署から問い合わせが来ることもあります。みなし提出が済んだという通知は届きません。

電子提出の義務は「30枚以上」に

国税庁のタックスアンサーNo.7455 法定調書の提出枚数が30枚以上の場合のe-Tax等による提出義務によると、2027年1月以後は、前々年に出すべきだった枚数が30枚以上なら電子での提出が必要です。2026年12月までは100枚以上でした。

給与支払報告書の義務は、前々年に税務署へ出すべきだった源泉徴収票の枚数で判定します。静岡市の2027(令和9)年1月から給与支払報告書・源泉徴収票の提出方法が変わりますも、2025年の枚数が30枚以上なら、2027年1月以後は電子提出が必要だと案内しています。

注意点は数え方です。Q&Aの問9は、改正前の提出範囲で数えるとしています。例えば年600万円の社員20人と、40万円の乙欄の人15人なら、数えるのは前者の20枚だけで、義務はありません。

紙で出すかeLTAXで出すか

これまでと2027年1月からの違い。税務署と市区町村の両方に出していたものが、市区町村へ出すだけになる。電子提出の義務は100枚以上から30枚以上へ。税務署向けの提出範囲は給与支払報告書と同じになる。社員への全員分の交付は変わらない。
図2|2027年1月から変わる給与の書類の出し方

給与支払報告書は、地方税の電子申告eLTAX、CDなどの光ディスク、紙のどれで出しても、みなし提出の対象です。それでも国税庁はeLTAXでの提出を勧めています。

理由の1つは、社員の確定申告です。Q&Aによると、eLTAXで出した2026年分以後の報告書は、2027年2月以降にマイナポータル連携の対象になります。医療費控除などで申告する社員は、給与の情報が自動で入ります。紙や光ディスクで出した分は対象外です。

もう1つは事務の手間です。eLTAXなら、提出先の市区町村ごとに自動で振り分けて送られます。なお、源泉徴収票と報告書をまとめて作るeLTAXの一元化機能は2026年9月で終了しています。去年と同じ操作で出せるとは限りません。

AIで提出前の点検表を作る

提出前の点検をAIで作る4つの手順。1.支払った人を一覧にする、名前は番号に置き換える。2.AIに区分を仕分けさせる、給与・退職・報酬を分ける。3.枚数で電子提出を判定する、2025年分を旧範囲で数える。4.人が照らして提出する、eLTAXなら自動で振り分け。
図3|提出前の点検表をAIで作る4つの手順

AIに向いているのは、「誰の分を、どの書類で、どこへ出すか」の仕分けと件数の集計です。2026年中に支払いをした相手を、給与、退職金、報酬の別と年間の支払額だけの表にします。氏名は社員番号などに置き換えてから渡します。

そのまま使えるプロンプト例

あなたは中小企業の総務を手伝う担当者です。下の一覧は2026年中に支払いをした相手です(氏名は番号に置き換えています)。各行を「給与支払報告書を市区町村へ」「報酬などの支払調書を税務署へ」「提出不要」「人が確認」に分けて表にしてください。判断の基準は下に貼る国税庁の資料だけを使い、基準に書かれていないことは推測せず「人が確認」にしてください。最後に、区分ごとの件数と、法定調書合計表が必要かどうかをまとめてください。基準:[国税庁の資料の該当部分を貼る] 一覧:[ここに貼る]

同じ表に、2025年分の源泉徴収票を何枚出すべきだったかも書き添えると、電子提出の義務の判定に使えます。社員向けに「確定申告で給与の情報が自動で入るようになります」という案内文を、AIに下書きさせておくのも手です。

AIに任せてはいけない3つの判断

1つ目は、制度の数字です。AIは学習した時期によって、電子提出の線を100枚のまま答えることがあります。数字は国税庁や市区町村の資料で確かめます。確かめ方はAIの数字を公的統計で確かめる記事で紹介しています。

2つ目は、電子提出の義務の有無です。旧範囲での数え直しは、役員や乙欄の人の扱いで結果が変わります。境目に近い会社は、顧問税理士か税務署に確かめます。

3つ目は、提出する中身そのものです。マイナンバーや住所は、AIに入れずに給与ソフトの中で扱います。Q&Aによると、出した後に誤りに気づいたら、eLTAXでは区分を「訂正」にして出し直します。提出の責任は会社が持ちます。

期限の日付は案内で確かめる

給与支払報告書と源泉徴収票の期限は、法令上「翌年1月31日まで」です。2027年1月31日は日曜日に当たるため、実際の日付は国税庁や提出先の市区町村の案内で確認してください。

よくある質問(Q&A)

来年から源泉徴収票って作らなくていいんですか?

いいえ、社員に渡す源泉徴収票は今までどおり全員分作ります。不要になるのは、税務署に出す分だけです。それも、市区町村に給与支払報告書を出していることが条件です。

うちは社員15人くらいだけど、電子で出さないといけないの?

2025年に税務署へ出すべきだった源泉徴収票が30枚未満なら、義務はありません。数えるのは改正前の範囲で、社員の人数そのものではありません。義務がなくても、eLTAXで出すと社員の確定申告が楽になります。

税理士さんへの報酬の支払調書も出さなくてよくなるんですか?

なりません。みなし提出の対象は、給与と公的年金の源泉徴収票だけです。報酬の支払調書は今までどおり税務署へ出し、その場合は法定調書合計表も一緒に出します。

まとめ

  • 2027年1月から、給与支払報告書を市区町村に出せば、源泉徴収票の税務署への提出は不要。対象は2026年分以後。
  • 社員への交付は全員分が必要。ほかの調書を出すなら合計表も出す。電子提出の義務は前々年30枚以上に広がる。
  • AIは仕分けと件数集計の下書き役。制度の数字、義務の判定、提出の中身は人が確かめる。

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年末年始の事務作業のうち、AIに下書きを任せる作業と人が確かめる作業を一覧にしておくと、1月の締め切りに追われにくくなります。

筆者コメント

「税務署に出さなくてよくなる」とだけ聞くと、仕事が1つ減ったように感じます。実際には、社員への交付も合計表も残り、電子提出の線は下がります。

年末調整の書類がそろう12月に、誰の分をどこへ出すかの表を一度作っておくと、1月は確認と提出だけで済みます。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

── AutoAIPlatform編集部

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。