介護の申出を受けたら、個別に伝える義務がある

改正育児・介護休業法の介護に関する部分は、2025年4月1日に施行されました。厚生労働省の「介護関係の改正事項」に要点がまとまっています。家族の介護に直面したと申し出た社員には、会社が個別に説明しなければなりません。会社の規模は問いません。

伝える事項は3つです。介護休業などの制度の内容、申出先、介護休業給付金です。そのうえで、制度を使うつもりがあるかを本人に確かめます。方法は面談・書面・FAX・電子メール等のいずれかで、FAXとメールは本人が希望した場合に限られます。

大切なのは説明の中身です。同じページは、「取得を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。」と明記しています。説明したという事実だけでなく、使いやすい形で伝えたかどうかが問われます。

働きながら介護する人は365万人

総務省統計局の「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」によると、介護をしている人は629万人です。そのうち仕事を持っている人の割合は58.0%で、5年前より2.8ポイント上がりました。

介護をしている人のうち仕事を持っている人の割合。全体58.0%、男性67.0%、女性52.7%、男性の50〜54歳は88.5%。総務省 令和4年就業構造基本調査。
図1|介護をしている人のうち、仕事を持っている人の割合(総務省 就業構造基本調査)

年齢で見ると、男性の50〜54歳では介護をしている人の88.5%が働いています。管理職や現場の中心にいる年代です。同じ調査で、過去5年間に「介護・看護のため」前の仕事を辞めた人は47.4万人でした。

小さな会社では、一人が抜けると仕事が回りません。介護の相談は、人手の問題として最初の一言から始まっています。

2030年、働く介護者は318万人に

経済産業省は2024年3月、「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表しました。2030年には家族を介護する人が833万人になり、そのうち約4割が働きながら介護する「ビジネスケアラー」になると予測しています。

働く人の21人に1人の割合です。同ガイドラインは、両立が難しくなることによる経済損失を2030年に約9兆円と試算しています。従業員100人の製造業でも、1社あたり年間773万円の損失になるという推計です。

損失の大半は、介護離職ではありません。働き続けながら仕事に集中できなくなる、生産性の低下が大部分を占めます。辞めないことと同じくらい、相談しやすいことが大切です。

面談で説明する主な制度

説明する制度の中身は、厚生労働省の「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」に、社員向けの記載例とあわせて載っています。介護休業は長く休むためだけの制度ではなく、介護の体制を整える期間として使うものです。

表1|面談で説明する主な制度(法律の最低基準)
制度中身伝え方のひとこと
介護休業家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取れる体制づくりの期間として使える
介護休暇1年に5日(対象家族が2人以上なら10日)、時間単位も可通院の付き添いに向く
残業の制限所定外労働の制限など、働く時間を抑える制度定時で帰れる形を選べる
短時間勤務等短時間勤務・フレックス・時差出勤などのいずれかを会社が用意自社の制度名で伝える
介護休業給付金要件を満たせば、原則として休業開始時の賃金の67%収入の不安を先に解く

短時間勤務等は、会社がどの措置を選んでいるかで中身が変わります。就業規則に書いてある自社の制度名で説明すると、本人は手続きに進みやすくなります。

介護の前に、早めに知らせる義務もある

同じ改正で、介護に直面する前の情報提供も義務になりました。社員が40歳になる年度か、その誕生日から1年間のうちに、制度・申出先・給付金を知らせます。介護保険の仕組みもあわせて伝えることが望ましいとされています。

さらに、研修・相談窓口の設置・利用事例の紹介・方針の周知のうち、いずれかの措置も必要です。小さな会社なら、相談窓口を一人決めて周知するのが始めやすい方法です。

この案内を出しておくと、社員は「この会社には相談してよい」と分かります。打ち明けられる前の準備が、離職を防ぐ一番の手当てです。

面談で避けたい言い方と、伝え方

介護の相談は、本人にとって言い出しにくい話です。上司の何気ない一言が、「この会社では続けられない」と受け取られることがあります。悪気のない言い方ほど、気をつけます。

面談で避けたい言い方と伝え方。休むと現場が困るよ、は、使える制度を確認しよう、へ。長く休むのは無理だね、は、93日まで分けて取れる、へ。辞めるのも選択肢だ、は、続ける方法を一緒に探す、へ。家のことは家で解決して、は、相談先はここです、へ。
図2|面談で避けたい言い方と、伝え方

面談では、話す時間より聞く時間を長くします。介護が始まった時期、通院の頻度、ほかに頼れる家族などを尋ねます。決めるのは今日でなくてよい、と伝えることも大切です。

本人が「迷惑をかけたくない」と言うときほど、制度を使うのは当然の権利だと、言葉にして伝えます。病気の治療との両立は治療と仕事の両立支援でも扱っています。

AIに頼むこと、頼まないこと

AIに向くのは、説明資料の下書きと言い換えです。就業規則の条文を、制度ごとに短く分かりやすい説明へ書き直す作業は得意です。面談で聞く質問の一覧や、40歳の案内文のたたき台も作れます。

一方、制度の中身を決めるのは会社です。AIは自社の就業規則を知らないので、法律の一般論や古い情報を書くことがあります。日数や給付の割合は、必ず人が原文と照らします。

入力する情報にも線を引きます。社員の名前、家族の病名や要介護度は、AIに貼り付けません。下書きは、どの社員にも使える一般的な形で作ります。入れてはいけない情報はAIに入力してはいけない情報一覧にまとめています。

申出から面談までの4歩

介護の申出から面談までの4歩。1.申出を受け止める(話してくれた礼をまず言う)。2.AIで説明資料を下書き(家族の病名は入れない)。3.面談で制度と意向を確認(音声だけの電話は面談外)。4.記録して次の相談へ(申出先と期限を手渡す)。
図3|申出から面談までの4歩

手順1では、その場で結論を出さず、話してくれたことに礼を言います。手順2で、平時にAIで作っておいた説明資料を自社の制度に合わせて確かめます。

手順3の面談はオンラインでもかまいません。ただし厚生労働省の改正ポイントの案内は、音声のみの通話は面談の方法に含まれないとしています。手順4では、伝えた日と内容を記録し、申出先と期限を書いた紙を手渡します。

そのまま使える説明資料のプロンプト

平時に一度作っておけば、相談のたびに日付と制度の数字を確かめるだけで使えます。角かっこの中は書き換えます。

あなたは、中小企業の総務担当を手伝う文章の専門家です。家族の介護に直面した社員へ渡す、制度の説明資料の下書きを作ります。 1. 最初に、相談してくれたことへの感謝と、制度を使ってよいことを一文で伝えてください。 2. 次の制度メモの内容だけを使い、制度ごとに3行以内で説明してください。 3. 申出先と、申し出の期限を必ず書いてください。 4. 最後に、面談で一緒に確認したいことを3つ、質問の形で書いてください。 条件:制度メモにない日数や金額は書かず[要確認]とする。休むことを控えさせる表現は使わない。専門用語を使わず、一文を短くする。 自社の制度メモ(就業規則から抜き出す):[ここに書く] 申出先:[部署名・担当者の役職]

条件の「休むことを控えさせる表現は使わない」が要点です。取得を思いとどまらせる言い回しを、下書きの段階で防げます。仕上がった資料は、必ず責任者が就業規則と照らしてから使います。育児の場合の説明は育休の個別周知をAIで準備するにまとめています。

よくある質問(Q&A)

社員10人の会社でも、介護の個別周知はしないといけないの?

必要です。2025年4月から、規模を問わず事業主の義務になりました。介護に直面したと申し出た社員に、制度・申出先・給付金を個別に伝え、利用の意向を確かめます。

介護休業の説明資料をChatGPTで作っても大丈夫?

下書きや言い換えに使うのは問題ありません。社員の名前や家族の病名は入れず、日数や給付の数字は人が原文で確かめます。AIは自社の就業規則を知らない点に注意します。

親の介護が始まった社員に、会社は何を聞けばいい?

介護が始まった時期、通院の頻度、ほかに頼れる家族、働き方の希望などです。家族の病状を細かく聞き出す必要はありません。決めるのは後日でよいと伝えます。

まとめ

  • 介護の申出を受けたら、制度・申出先・給付金を個別に伝え、意向を確かめるのが2025年4月からの義務。取得を控えさせる説明は認められない。
  • 介護をしている人の58.0%は働いており、2030年には働く人の21人に1人が介護者になる見込み。相談しやすさが人手を守る。
  • 説明資料は平時にAIで下書きし、名前や病名は入れず、数字は人が確かめる。

介護の相談は、ある日突然、休憩室や帰り際に届きます。その場で慌てないために、今週のうちに相談窓口を一人決め、AIで説明資料のたたき台を作っておいてください。最初の一言が、社員の次の5年を左右します。

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著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。