中小企業にも広がった公表義務

女性活躍推進法の改正法は2025年6月11日に公布され、2026年4月1日に施行されました。厚生労働省の女性活躍推進法特集ページによると、これまで301人以上の企業だけだった男女間賃金差異の公表義務が、101人以上の企業に広がりました。女性管理職比率も新たに必須項目になっています。

表1|企業規模ごとの情報公表の義務(2026年4月1日施行)
従業員数必須の2項目ほかに選ぶ項目
301人以上賃金差異と女性管理職比率2項目以上(4項目以上)
101〜300人賃金差異と女性管理職比率1項目以上(3項目以上)
100人以下努力義務努力義務

同省のリーフレット「女性活躍推進法が改正されました!」は、情報公表の範囲が「女性活躍に対する姿勢を表すものとして求職者の企業選択の要素となる」と明記しています。義務の項目だけでなく、採用で見られる情報だと考えて準備すると、取り組む意味がはっきりします。

初回の公表は決算月で決まる

初回の公表は、改正法の施行後に最初に終わる事業年度の実績を、次の事業年度が始まってからおおむね3か月以内に出します。同じリーフレットは、12月末に事業年度が終わる企業なら2027年3月末まで、3月末に終わる企業なら2027年6月末までを例に挙げています。

その後も、おおむね1年に1回以上、最新の数値に更新します。9月末決算の会社は、9月に終わった事業年度の数字を年内に公表する計算です。自社の決算月を確かめ、締め切りから逆算して集計の時期を決めましょう。

公表とは別に、同じ規模の企業には一般事業主行動計画を作り、都道府県労働局に届け出る義務もあります。行動計画は、自社の課題を分析して数値目標と取り組みを決める計画です。公表のために集めた数字を、次の計画の目標づくりにも使うと手間が一度で済みます。

女性の課長相当職は13.2%

管理職等に占める女性の割合。部長相当職9.2%、課長相当職13.2%、係長相当職20.9%。令和7年度雇用均等基本調査。
図1|管理職等に占める女性の割合(令和7年度雇用均等基本調査)

全国の数字を見ておきます。厚生労働省の「令和7年度雇用均等基本調査」によると、女性の割合は課長相当職で13.2%でした。前年度の12.3%から上がっています。部長相当職は9.2%、係長相当職は20.9%です。調査は2025年10月1日時点の状況を、常用労働者10人以上の企業6,000社に尋ね、3,077社が回答しました。

賃金の差も縮まりつつあります。「令和7年賃金構造基本統計調査」では、男性を100としたときの女性の賃金は76.6でした。比較できる1976年以降で、格差が最も小さくなっています。自社の数字は、こうした全国の値と並べると位置づけを説明しやすくなります。

男女間賃金差異は3つの区分で出す

男女間賃金差異は、男性の平均賃金に対する女性の平均賃金の割合を%で示したものです。「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の3つの区分で公表します。値は小数点第2位を四捨五入し、第1位まで表示します。

あわせて、計算の前提を付記します。対象期間、対象にした労働者の範囲、通勤手当を除くなどの「賃金」の範囲です。前提を書かないと、他社や前年と比べたときに誤解を招きます。

女性管理職比率の「管理職」は、課長級と、課長級より上の役職(役員を除く)の合計です。課長級は、2つ以上の係からなる組織か、構成員10人以上の組織の長などを指します。リーフレットは、課長代理や課長補佐は一般的に課長級に当たらないとしています。

集計はAIと表計算で分担する

集計の流れは、給与データを区分ごとに分け、男女別の平均を出し、割合を計算するだけです。式の組み方や手順の確認は、AIに相談すると早く進みます。実際の計算は表計算ソフトで行い、AIの答えをそのまま数字に使わないのが安全です。AIに式を作らせたら、男女数人の仮の数字で一度試し、手で計算した結果と合うかを確かめます。

そのまま使えるプロンプト例

あなたは中小企業の人事を手伝う担当者です。女性活躍推進法の男女間賃金差異を、表計算ソフトで出したいと考えています。列は「記号」「性別」「雇用区分(正規・非正規)」「年間賃金」です。(1)全労働者・正規・非正規の3区分で、男女別の平均賃金と、男性に対する女性の割合を出す式を作ってください。(2)小数点第2位を四捨五入して第1位まで表示する方法も示してください。(3)計算の前提として付記すべき項目を挙げてください。

この頼み方なら、給与データそのものをAIに渡さずに済みます。どうしてもデータを使う場合は、名前を記号に置き換え、社内のAI利用ルールに沿って扱ってください。少人数の区分では、平均から個人の給与が推測されやすい点にも注意が要ります。

説明欄をAIで下書きする

数字だけの公表:賃金差異だけ載せる、求職者が理由を推測、毎年同じ数字が並ぶ、比べられて終わる。説明欄も書く公表:差の理由も書く、会社の見方が伝わる、改善の取り組みが見える、次の目標を示せる。
図2|数字だけの公表と、説明欄を添えた公表

リーフレットは、指標の大小だけに注目せず、要因と課題を分析して改善につなげることが重要だとしています。そのうえで、数値に加えて分析の結果などを説明欄に書くことが望ましいとしています。

説明欄の下書きは、AIの得意な仕事です。「管理職に勤続の長い男性が多い」「女性はパートの割合が高い」など、社内で確かめた事実を箇条書きで渡します。AIには、差が生じている理由と、来年度に取り組むことを300字程度の文章にまとめさせます。たとえば「管理職の9割が男性で、勤続20年以上の層に偏っています。来年度は係長層の女性を対象に研修を行い、3年後に女性管理職を2人に増やします」のような形です。

注意したいのは、AIが事実にない理由を書き足すことです。下書きの一文ずつを、人事の担当者が社内の実態と照らし合わせて確認してください。差を小さく見せる言い訳の文章になっていないかも、経営者が読んで判断します。

もう1つの公表項目の選び方

101〜300人の企業は、必須の2項目に加えて、14項目から1つ以上を選びます。男女別の育児休業取得率、有給休暇取得率、月の平均残業時間、採用者に占める女性の割合などです。すでに集計している数字から選ぶと負担が軽くなります。有給休暇取得率のように、男女を分けない数字も選べます。社員に説明しやすく、毎年同じ方法で集計できる項目を選ぶと、比べ続けやすくなります。

育休を選ぶなら、全国の値と比べられます。先の雇用均等基本調査では、男性の育児休業取得率は50.9%で、前年度の40.5%から大きく伸びました。女性は88.3%です。育休の周知の進め方は育休の個別周知の記事も参考にしてください。

公表までの4歩

公表までの4歩。1.対象と期限を確かめる、従業員数と決算月で決まる。2.3区分で賃金を集計する、名前を伏せて表計算で。3.説明欄をAIで下書きする、要因と次の取り組みを書く。4.データベースで公表する、年1回以上、数字を更新。
図3|公表までの4歩

公表の場として、厚生労働省は同省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」を最も適切としています。自社のホームページへの掲載でも構いません。データベースにはあらかじめ注釈・説明欄が設けられているので、下書きした説明文をそのまま使えます。

AIの説明を法令の判断に使わない

AIは制度の細かい条件を間違えることがあります。対象になるかどうかや公表の期限は、厚生労働省の資料と都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)で確かめてください。

よくある質問(Q&A)

うちは社員120人くらいなんですが、男女の賃金差って公表しないとダメですか?

はい、120人なら公表の義務があります。2026年4月1日から対象が広がりました。男女間賃金差異と女性管理職比率に加え、ほかの14項目から1つ以上を選んで公表します。100人以下の企業は努力義務です。

いつまでに出せばいいの?

施行後に最初に終わる事業年度の実績を、次の事業年度が始まってからおおむね3か月以内に公表します。3月末決算なら2027年6月末までが目安です。その後も年1回以上更新します。

賃金の差の計算や説明文って、AIに任せても大丈夫ですか?

式の作り方の相談や説明欄の下書きには使えます。ただし計算は表計算ソフトで行い、説明文は社内の事実と照らして人が確認してください。給与データは名前を伏せて扱います。

まとめ

  • 2026年4月から、100人を超える企業は男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務になった。
  • 初回は決算後おおむね3か月以内。女性の課長相当職は全国で1割強、賃金は男性100に対し76.6。
  • 式づくりと説明欄の下書きはAIで早め、計算の検算と内容の判断は人が担う。

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筆者コメント

公表の義務と聞くと、数字の大きさばかりが気になります。けれど厚生労働省の資料が繰り返し求めているのは、差の理由を自社の言葉で説明することでした。

説明欄は、会社の考え方を求職者に伝える場所です。まずは自社の決算月から、初回の締め切りを確かめるところから始めてみてください。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

── AutoAIPlatform編集部

著者情報

AutoAIPlatform編集部 / 中小企業向けAI業務教育メディア

中小企業の経営者、管理職、総務、人事、営業、研修担当者が、AIを安全に仕事へ取り入れるための教育記事を作成しています。AIの操作だけでなく、業務設計・社内ルール・人による確認を重視します。